お久しぶりでございます。
更新出来ないでいるのに、日々アクセスいただいて何と申し上げて良いやら。
パソコンが壊れていた訳でもなく体調を崩した訳でもなく、ただただ忙殺されておりました。
コメントを頂いても返事すら出来ない。
でも、ほんの5分もパソコンに向かえないかと言うとそんなことはないわけで・・・
お叱りを受けても、ろくな申し開きは出来ないわけで・・・
なかなか返事が付かないと憤慨されていた方々、ただただ陳謝いたします。
そんな日々でも食事はします。
デリー・ダルバールにも行ったし、築地でも食べた。
いつになることやら分かりませんが、そちらのレポートは後日に致しましょう。

ラーメン好きの方々の情報網は凄いので既にご存知の方は多いと思いますが、西葛西に『達人』という名の店が出来ました。
場所は駅の南側にある福太郎の裏あたり。
この辺です。
普段あまりラーメンを食べない私ですが、店名につられてフラリと入ってみました。
だって『達人』ですよ。
『達人って大胆な命名だよね。』
『フランチャイズかな?』
『もしかしたら店主がタツヒトって名前なんじゃないの?』
周りでいろんな憶測が交錯してました。
とにかく食べてみないことには始まらない。
引き戸の正面にある『営業中』の立て看板が邪魔だなと思いつつも店内へ。
食券機を見ると、らぁめんと飯と玉子しかない。
ビールも餃子もない。
こりゃ珍しい。
しかも玉子は瓢亭玉子と書いてある。
瓢亭玉子は400年続く京都の料理屋『
瓢亭』の名物茹で卵。
400年続くといっても初めは茶屋だった。
京都に行く旅人が町中に入る前に草鞋を脱いで着物を正す。
京都から出かける人が東山を越える前に一服する。
お茶とお菓子を出していた茶屋だったのだが、旅人から何か食べ物はないかと問われて出したのが茶屋の裏で飼っていた鶏の卵の煮抜き。
その頃は茹で卵というものが珍しかったらしく、当時の文献にも登場するそうだ。
この茹で卵はいつしか有名になり『瓢亭玉子』と呼ばれるようになる。
江戸初期の天保年間に茶屋から料亭に変わり、既に明治時代には日本料理の最高峰として名を馳せている。
現在の当主は14代目。
15代目は既に厨房に入って修行している。
そんな名店の当主が今でも大切な料理として位置づけているのが、一子相伝の瓢亭玉子。
日本料理の世界では大変有名なものなのだ。
店名は『達人』だし、品書きに『瓢亭玉子』はあるし、やや斜に構えつつもどんなラーメンが出てくるのか興味が涌いてきた。
店内右手には製麺機が鎮座している。
左側にL字のカウンターがあり、奥の厨房ではがっしりした店主が麺を茹でている。
カウンターの角には黄色い塩が山のように皿に盛ってある。
見れば自分の前にもピンクの塩が小さな皿に盛ってある。
聞いてみると黄色い方はパパイヤの果汁を混ぜた塩で、ピンクの方はドラゴンフルーツだという。
舐めてみると黄色い方が尖っている感じがする。
何に使うのかと尋ねたが、カウンターの中の女性から明確な答えが返ってこなかった。
頼んだのは醤油らぁめん。
スープを見て豚骨醤油かと思ったのだが、鶏がらのスッキリしたスープでした。
豚骨も煮出しているのかもしれないがそれを感じさせないくらいで、飲んだ瞬間に和食で言う鶏出汁をベースに組み立てているのではないかと感じた。
岩海苔が散らしてある。
焼き海苔と違って岩海苔は独特の風味があるので好みは別れるが、私は好きだ。
岩海苔の香りと醤油の香りの調和が良い。
揚げ葱も乗っているのだが、一緒に行った友人は揚げた香りが岩海苔や醤油の香りとぶつかると感じたらしい。揚げ葱の香りがいつまでも口に残ったと言っていたのだが、彼は大盛りを頼んだので揚げ葱の量が影響しているのではなかろうか。
私は左程気にならず、むしろ香ばしさが心地よかった。
短冊状のメンマの味付けも好ましい。
門前仲町の
こうかいぼうのメンマもそうだが、私は大振りなのに柔らかいメンマが好きだ。
味付けも嫌味がない。
チャーシューはやや塩分が強い。
色合いからすると白醤油か薄口醤油で仕上げたのかな。
それでも豚臭さはなく、しっとりと仕上がってなかなか美味しい。
そのチャーシューが厚切りで入っている。
それぞれの具は随分と丁寧に作られていると感じた。
達人のいわれとなったらしい自家製麺はシコシコとコシを感じる麺ではない。
中太のストレート麺なのですが、柔らかめに茹で上げている。
麺の色合いもそれほど黄色く発色しているわけではないので、カンスイは少なめなのでしょうか。
カンスイ臭さがないから私は好きなタイプだが、ラーメン好きの方からするとコシがなくて物足りないと思われるのかも知れない。
加水率とかいろいろあるのでしょうが、この辺はラーメンに疎い私には詳しくは分かりません。

全体的に丁寧さを感じるラーメンで、過度にスープの旨味に傾くことはなく、私の好きなタイプ。
塩らぁめんも食べてみたいと思い、翌日にまた伺った。
同じラーメン屋に連日伺うというのは何年ぶりだろう。
更につけ麺にも惹かれ、その翌日も食べてしまった。
つけ麺は池袋大勝軒をデフォルトとする甘味と酸味を同居させたものではなく、あくまでもこの店の醤油らぁめんと塩らぁめんをつけ麺仕様に直したもの。
甘くて酸っぱくてちょっとピリッとくる、池袋大勝軒や
夢うさぎのつけ麺のタレ。
あれはあれで初めて食べたときは驚きがあった。
こんな味の構成があるものなのだと感心もしました。
でも何度か食べると飽きてくるんです。
私の場合はスッキリした醤油味が好きという少数派なので、この店のつけ麺の方が素直に食べられます。
大盛りは100円プラスするだけで量が倍になるのだが、私には多すぎて食べられない。
聞くと自家製麺なので、麺のサービスはいくらでもしてあげたいのだとか。
その気持ちはつけ麺にも現れていて、つけ麺の量に不満を持つ人はいないだろう。
なかなか綺麗な盛り付け。
らぁめんよりもつけ麺の麺の方がやや太く、モチモチとした食感。
麺は一口ぐらいに分けて盛られています。
それでも量が多いので最後の方は麺がくっついてしまう。
食べようとして箸で持ち上げると固まりになってしまっているのは興ざめだ。
初めて伺った時には最後の麺はくっついていた。
ところが最近はそんなことがない。
何か工夫をしたのでしょうか。
工夫といえば、つけ麺のつけダレ。
私は好んでつけ麺を頼む方ではない。
食べているうちにどうしてもつけダレが冷めてしまうし、店によっては麺についている水分でかなり薄まってくる。
冷めて薄くなったタレで食べる麺は美味しくない。
ところがこの店では、注ぎ足すためのつけダレを徳利のような器に入れて出してくれる。
そしてこの徳利がなかなか冷めないので、最後の麺まで温かいつけダレで食べることが出来る。
食べ終わった後のスープ割りのスープも同じ徳利に入れて出す。
他の店でスープ割りを頼むと、丼ごと持って行ってスープを入れて戻してくれる。
いつも思うのだが、スープの割り具合というのは人によって違うものなのではなかろうか。
薄い方が好きな人と、濃いままがいい人。
一様に薄められてしまうと自分の好みに調節が出来ない。
スープだけを別の器で出してくれればいいのにと思っていたのだが、達人ではその通りにしてくれる。
スープが和風の鶏出汁の様な感じであること、瓢亭玉子、メンマなどの丁寧な仕事、つけダレやスープに対する心遣い、それらから店主はもともと和食に携わっていたのではないかと想像した。
聞いてみると果たしてその通りで、長いこと和食に関わっていたとのこと。
寡黙にして実直な印象を受ける店主と、店名や目先の変わった塩、瓢亭玉子という言葉の使用などにギャップを感じた。
オーナーは他にも飲食店を経営する方らしく、店名などはどうやらオーナーの意向のようだ。
ちなみに玉子は実際の瓢亭玉子とは別物だと思う。
それでも丁寧な仕事振りが貶められるわけではない。
麺自体の好みは分かれるとは思うが、まとまりの良い美味しいラーメンだと思う。
そして店主には、なんと言えばいいのか分からないが、料理に対する真摯な姿勢のようなものを感じる。
行列なんか出来ていなくても、その姿勢だけで私には魅力充分なのです。
この店を知ってから、ラーメンを食べる回数が増えました。

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