好きだったひら野が閉店してしまい、いわな屋も暖簾をはずした。
西葛西では豊川があるから蕎麦を食べられないと言うことはない。
最近の豊川の蕎麦は手繰った途端に『おやおや、いい蕎麦じゃないか』と思える、腰の立った蕎麦が出てくるようになった。もう少し深みのあるツユになったらもっと嬉しい。
でもソトメシを楽しむ時間的余裕がなくなってしまったので、豊川にもそうそう伺えない。
蕎麦が食べたくてしょうがない、禁断症状のようなものを感じるようになってるなぁ。
週末に葛西のイトーヨーカ堂に行ったついでに、話しに聞いていた『鶴山』と言う和食屋で昼飯を食べようと思ったのだが、場所を探し当てたときには既に昼の営業が終わっていた。カミさんと2人で空腹を抱えて彷徨うのはつらい。
そのとき閃いたのが清かわ。
このところ蕎麦を食べてないし、清かわもご無沙汰だ。
陽気もいいんだから久しぶりにカミさんと昼酒でも楽しもうか。
店内は相変わらず清潔感が漂う。
ご近所の方と思われる年配の一団が世間話に花を咲かせている。
入れ違いに若い男女がお勘定をして出て行った。
小上がりのテーブルには窓からの木漏れ日がちらついている。
なんだか週末の昼酒にピッタリだ。
入る前から昼酒と決めていたので、まず頼む物は決まっている。
日本酒飲みくらべ。
冷酒3種類と板わさ、そばみそ、鴨くんせいのセットだ。
冷酒は90mlが3種類出てくるので、合わせて1合5勺。昼酒にはちょうどいい。
それに蕎麦屋の定番のようなツマミが付いて1500円である。
出された酒は東一 純米吟醸、黒龍 特撰吟醸、越乃白雪 本醸造。
それぞれ違うタイプの酒で、文字通り飲み比べが楽しめる。
吟醸香のきついタイプの酒は得意ではないし、あまりにもしっかりしたボディの酒も飲み疲れてしまう。特に十四代の本丸本醸造なんかはガシッとしていて食べ物を選ぶ酒なので、気軽に飲んで食べるときには避けてしまう。
そんな私にとっては、このラインナップはありがたい。
どれもツマミの邪魔をするほどではないのに、きちんと素性が楽しめる酒だからだ。
板わさ、そばみそ、鴨くんせい、それぞれが違った美味しさがあってよろしい。
かまぼこに本山葵と良い醤油があれば、それだけで酒が旨い。
鴨くんせいは薫香がきつくなく、酒の香りの邪魔にならない。
そばみその適度な甘みと塩気でも酒がすすむ。
これらのツマミで日本酒を1合5勺。
酒量も昼酒にはちょうどいい具合。
もうちょっと飲みたいなぁ、と思うくらいが昼酒には良い。
ほろ酔いの手前くらいでやめとかないと、止まらなくなってしまいますから。
適当な頃合で蕎麦を頼む。
私はかき揚げせいろ蕎麦。
カミさんは小海老おろし蕎麦。
この日の清かわの天ぷらはなかなか良かった。
油切れも良く、サクッと仕上がっている。
かき揚げの中身はアスパラガスなどの春を感じさせる野菜と小さめの海老。
正直なところ海老は要らなかったかもしれない。
春を感じる野菜だけでまとめた方が、食感に統一性があって美味しかったのではないか。アスパラガスは決して硬いことはなかったが、小海老とはギャップを感じてしまうなぁ。この日のように天ぷらの揚げ上がりが軽く仕上がっるのであれば、野菜が美味しければそれだけでかき揚げにしても充分だと思います。
野菜を上手に揚げてくれるとほんのり甘いですものね。
まぁ贅沢な物言いなんでしょうね、せっかく海老を入れてくれているのに。
カミさんが頼んだ小海老おろし蕎麦も美味しそうでした。
小ぶりな巻海老が4本、真っ白な大根おろしの上に乗っている。
見た感じ、大根おろしの搾り加減も良さそうだった。
蕎麦自体も以前感じていたような柔らかさはなく、良い感じに締められている。
もう少し腰が立ってても良いんだけど、蕎麦の香もよくなかなか美味しい。
価格だけ比べると他の店よりもやや高めに映ってしまうが、蕎麦の量も充分あり香りもいいので決して割高だとは思わない。
陽気のいい昼下がりであったことも幸いしたのだろう。
選んでくれた酒も旨かった。
ツマミ3種も美味しかった。
蕎麦も私の好みに近かった。
店主は亀有の
やざ和のような吟醸蕎麦屋を目指していると何かの本に書いてあったような気がするが、この日の清かわはその言葉がピッタリだった。
久しぶりにカミさんと2人の昼下がり。
取留めもない話をしながら昼酒を飲んだ。
心地よく酔い始めたところで、気持ちの良い微風の中を帰った。
こんな日も好いものだ。

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