右の内股をかける場合、右手は相手の左襟なり奥襟を掴みます。そして左手では相手の右手を引き手として掴み、技をかけます。
左手で相手の右手を掴むのは、投げを行う為に相手を前に崩す為と、相手が背中から落ちるようコントロールする為です。
ロシア式の組み手だと、左手で相手の左手を掴みますので、普通に考えれば、相手が背中から落ちるようにコントロールできませんので、釣手の効果によって持ち上がっても、相手は腹ばいに落ちてしまいます。
フランスで行われた世界選手権の時、私は予選でグルジアの選手と対戦したのですが、その選手の得意技を防ぐ事が出来ず、ポイント差をかなりつけられ敗北しました。
その技こそ、ロシア式組み手からの内股だったのです。引き手を持っていないもにも拘らず、私はきれいに投げられてしまったのです。
とても不思議でした。
この試合中に歯を折ってしまったのと、試合後、首を痛めているのに気づいたのですが、このへんがヒントになるのではと思い研究してみました。
ポイントは右手です。技に入った瞬間、襟・奥襟・帯などを掴んでいる右手を離し、相手の首をプロレスのヘッドロックの様に抱え込むのです。
深く入った場合は首投げの様に投げればいいですし、浅く入った場合(こちらの方が使用頻度は高い)は、フェースロックの様に前腕で相手の顔をひねりながら(右内股だと相手の顔は左肩につくような形)ケンケンで追い込みます。投げの方向は前ではなく、真横と言った感じです。
その発見から何年か経った後、モスクワスポーツ単科大でお世話になった、恩師ニコライ・クーリック先生とコーチのセルゲイ・タバコフさんがセミナーの為、来日された事がありました。ずっと同伴して回ってたのですが、タバコフさんに、この内股について質問したところ、当たり前の様に「これはこうするんだ」と答えは返ってきました。
私の考えは正解だったのですが、その嬉しさよりも、簡単に説明できるくらいロシアでは研究されている事を考えると、少し怖くなってしまった私でした。