小泉内閣は憲法違反の対朝鮮先制/武力攻撃の主張を撤回せよ!
世界的な抜本的核軍縮を目指そう
前田 進 jcfkp201@ybb.ne.jp
更新:06.7.19
朝鮮のミサイル試射で日本政府とマスコミは大騒ぎして、世論を煽っている。
日本以外の他国は、米国の有力部分も含めて比較的冷静に対処している。米英は日本提出の国連安保理での朝鮮制裁決議案に同調してきたが、それが武力制裁まで含む国連憲章第7章に言及しているせいで、中ロの拒否権発動と反対で見込みはない。そこで小泉内閣は、制裁を含まない中国の決議案への接近に転じた。日米の好戦的挑発は壁に直面した。小泉の転換は日本より中国との協調を重視した米国の方針転換に右倣えした、愚劣な対米追従の結果であろう。
http://tanakanews.com/g0707korea.htm
国連安保理事会は06.7.13日に、イスラエルに対してパレスチナ自治区ガザ侵攻の停止と撤退、拘束したパレスチナ自治政府閣僚らの解放などを求めるカタール提出決議案を採決したが、米国の拒否権行使で否決された。しかしこれは、中露が朝鮮制裁決議案での拒否権行使をやり易くして、日本政府への追い討ちになった。日本政府は米国の拒否権行使を非難せず、対米屈辱外交を実証した。
彼らは米国の硬直化に倣ってまた制裁決議案の強行方針に戻ったが、中露の拒否権行使を避けるため英仏の妥協案を容認した。中露は対米譲歩した。
安保理は朝鮮のミサイル発射を非難して、凍結と6ヵ国協議への復帰を要求、ミサイル物資の移転阻止を各国に求める決議1695を06.7.15に全会一致採択した。米日は朝鮮が決議に従わない場合の新たな追加決議で脅した。イラクの前例が懸念を起こしている。日露戦争、日本による朝鮮植民地化が示した大国の狭間の小国の運命の惨めさが想起される。今度は核大国間での小国の運命を巡る取引か?朝鮮は決議を全面的に拒否、自衛のためとミサイル発射の続行を言明した。
G8の06.7.16ペテルブルグ会議でブッシュは、中国の譲歩と安保理決議への賛同を高く評価した。ライスは朝鮮が決議に従わなかった場合、制裁への途が残されていると主張した。それは朝鮮のイラク化への途だ。それは成功しないだろう。
日朝国交正常化を目指した小泉はこれまで何度も、核問題で米朝直接交渉をブッシュに提案したが、北の術中にはまるとの逃げ口上で拒否されたという(朝日06.7.19)。それはブッシュが朝鮮不侵略の発言の陰で朝鮮のイラク化を目指しているからだ。その開始措置が06.6の金正日爆殺の国家テロの発動だったようだ(週刊現代06.6.29; 8.7)。その後小泉がブッシュに追従していることは、G8サミットでの彼の言動で実証された。
ところで、米国は今年インドの核兵器開発を容認した。今回の朝鮮のミサイル試射から間もなく後に、インドは射程3,000-5,000kmの中距離弾道ミサイルの試射を行った。結果は失敗だったが、しかしどの国からも非難が出ていない。イスラエルは100-200発の核弾頭とミサイルを保有しており、イラン攻撃を3月末に準備完了した。これらは米国の利己的で身勝手な帝国主義的二重基準の結果である。
核兵器改良を続けている米国は、31ヵ所のイラン地下核開発施設を地中貫通核ミサイルで攻撃し、400ヵ所の攻撃目標を空爆する計画だ。
ロシアは最近、戦略核兵器制限条約の新提案を米国に出したが、米国は無視している。核大国の核軍縮を義務付けたNPT(核兵器不拡散条約)は主として米国の横車で空文化している。
佐世保、横須賀などを母港とする米国の軍艦に積んだ巡航ミサイル・トマホークは、24時間ピョンヤンなどに照準を付けている。米ブッシュ政権は02年公式文書「国家安全保障戦略報告」以来、「北朝鮮」を「核兵器による先制攻撃の対象国」に指定している。ブッシュ政権は「北朝鮮」を短期間で占領し、金正日総書記を「除去」するための「作戦計画5027」を公然と決定、持続している。
米国、日本は06.6/26〜7/28と1ヵ月以上ハワイ沖で「環太平洋合同演習(リムパック2006)」を実施して、朝鮮にも軍事圧力をかけている。小国にとっては大きな圧力だ。朝鮮のミサイル試射はこのハワイ沖水域を狙ったという専門家の意見がある。
今回の朝鮮によるテポドン2を含む7〜10発のミサイル試射は、米ブッシュ政権による最近数回に及ぶ金正日総書記の爆殺陰謀事件に対する報復措置であると、「週刊現代」06.6.29号&7.8号が書いた―「宣戦布告寸前!「テポドン2号」狂気の動機はアメリカへの“報復”だった: CIA「金正日【北朝鮮総書記】暗殺未遂事件」;「「元山招待所」の惨事」 。
どこかの外国が、ブッシュの暗殺未遂事件を何度も起こしたら、米ブッシュ政権はどうするだろうか?即刻「テロに対する戦争」(War on terrorism)だろう。胡錦濤やプーチンならどうする?小泉ならどうする?
AP通信によると、朝鮮は、7月に韓国および海外の米空軍基地から出動したRC-135戦略偵察機、EP-3電子偵察機、U−2戦略偵察機偵察機が同国の空中偵察を160回行ったと発表した。朝鮮中央通信は、「米帝国主義者らは、軍事攻撃の機会をうかがっている」と報じた。
韓国ハンギョレ紙の報道によれば、盧武鉉(ノ・ムヒョン)韓国大統領は06.7.11の与党幹部会議で「米国は北朝鮮がドルを偽造した証拠を示していない。金融制裁は一方的な措置だ」と指摘した。彼は「北朝鮮のミサイル発射は米国に譲歩を要求する政治的行為である」、「日米が提出した制裁決議案の根拠も不十分だ」と非難した。米日の横暴な好戦的姿勢を暗に非難したこの言明は、米国によるイラクの大量破壊兵器保有のでっち上げによる軍事侵攻を暗に想起させた。
米日などの上述した好戦的な行動を中止して、米国は朝鮮が核兵器開発中止の前提としている朝鮮不侵略の態度表明を6ヵ国協議で国際法上拘束力のある文書ですべきでる。
米国による他国の政権転覆の内政干渉はウクライナ以後ベラルーシでも、中央アジアでも南米でも失敗続きで、1極支配の試みは至る所で失敗している。イラク占領は失敗しており、イラン攻撃、朝鮮攻撃と2正面作戦や3正面作戦は出来ない。米国はすでに経済的にも破綻して超大国ではなくなっている。しかしブッシュらキリスト教右派のネオファシスト的なネオコン一派はそうした現実を認めることを拒否して、覇権主義的な軍事冒険主義を捨てていない。ブッシュ政権による在米キューバ反体制テロリスト団体への8,000万ドル(92億円)資金供与による手先を使った国家テロ措置の06.7.10の決定は、その現れ、証拠である。朝鮮に対する大規模軍事演習、軍事的圧力と挑発、軍事目的の領空侵犯、金正日総書記に対する数次の爆殺未遂の国家テロ事件(週刊現代誌)などもそうである。
こうした時、米国の勇気あるジャーナリスト、グレッグ・パラストは、「北朝鮮のミサイル:金正日が発射、ブッシュ・チームが建造」という暴露記事を英国BBC TVの番組「ニュース・ナイト」と英ガーディアン紙で発表した。パキスタンの核の父カーン博士が北朝鮮とリビアに核兵器と核弾頭の技術を闇市場で売って、サウジが金を出した事件を追及したCIAにブッシュがサウジをかばってストップをかけた、というスクープである。要するに、今日の朝鮮ミサイル危機はブッシュらに責任のある事件だということが明るみに出た。
朝鮮のミサイル試射問題で自公の小泉・安部政権は、マスコミを使ってここぞとばかり世論を煽っている。安部、麻生、額賀の政府首脳、武部自民幹事長は「敵基地の先制攻撃能力をもつべきだ」と世論を扇動した。それは新たな侵略戦争への途だ。安部は「先制攻撃じゃなくて発射後の攻撃だ」と言い換えたが、いずれも武力行使を禁じた憲法9条1項と、国務大臣に憲法擁護を義務づけた99条に違反した犯罪行為である。その意味で、山崎拓前自民副総裁の自民首脳部批判演説は広く世論に支持されている。
彼らがこの事件を煽っているのは、憲法改悪、買弁的な海外派兵、米ブッシュ政権による地球破壊、人類破滅の「先制核ハルマゲドン」への日本組み込みという亡国路線を強行するために好都合だからに外ならない。「制裁は逆効果だ」(中国)、「冷静に」(韓国)という隣国とは違いが際立っている。
こうした全般の情勢を見ないと、売国・亡国路線に乗せられてしまうことになる。世論調査で朝鮮制裁支持が多いのは、日本社会の下からのファシズム運動の温床になる。それは「いつか来た道」を思わせる危険な風潮である。
小泉はG8サミット後の7.17の記者会見で、「抑止力を維持するが、先制攻撃の意図はもっていない」と言った。しかし自民党の大勢をバックに後任首相が改憲を目指して対朝鮮先制攻撃の路線を打ち出す可能性がある。
だから、自公政権の憲法違反・対朝鮮先制攻撃指向の阻止、憲法改悪・海外派兵阻止、自衛隊の国防省昇格阻止、「先制核ハルマゲドン」への加担阻止と、その基礎である日米安保条約廃棄を目指し、平和外交に徹すると共に、同時に米英イのイラン攻撃阻止、核保有5大国の新型核兵器開発の禁止、抜本的核軍縮と核兵器廃絶を目指し、イスラエル、インド、パキスタンの核武装放棄を要求して、こうした世界的軍縮闘争の一環として、米国の朝鮮不侵略の国際法的表明による朝鮮の核兵器開発中止に途を開く必要がある。
野党、平和・民主団体はこうした核軍縮の総路線を明確にすべきである。

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