戦争へ途を開いた安保理決議:
韓日の危険な米国追従に反対決起しよう
―王手をかけられているのは金正日よりブッシュの方だ
―米ブッシュ政権のオーナー、フリーメーソンは中東での敗北宣言をした
前田 進 jcfkp201@ybb.ne.jp
更新: 06.10.22;23;24;29;31; 11.1
国連安保理は06.10.14に国連憲章7章と同41項による朝鮮制裁決議案を全会一致で採択した。
本年7月のイスラエルによるガザ侵攻非難の決議案に米国が拒否権を不当に行使したが、今回は、中国とロシアが拒否権を行使しなかった米国屈従の行動は遺憾千万である。中露は船舶検査に参加しないと言ったが、米豪の実施による軍事紛争から戦争への展開に途を開いた。米国との経済交流での金儲けを優先した取引の結果だ。日本は米豪などの船舶検査支援で軍事紛争から日朝戦争に直結する現実的な可能性がある。
韓国は太陽政策の中止方針で、新たな南北対決と新戦争へ一歩進んだ。
米韓の陸海空軍の合同大演習、太平洋での米韓日豪のミサイル発射などの共同大演習、1ヵ月間に100回近い偵察機の北領空侵犯による軍事偵察の強行、米海軍の巡航ミサイル原潜の回遊、イージス艦の配備、沖縄からの米軍の脅威その他で、朝鮮は国家存亡の危機到来と見て、突破口を核兵器開発による防衛力強化に求めている。核兵器実験はその一環だ。
世界最初の核被爆国日本の国民は、この核実験を含めて米国の本年7月の未臨界核実験などあらゆる核実験に反対だ。そして核兵器不拡散条約[NPT]に従った5大国の抜本的核軍縮の実行と、世界的な核兵器・核弾頭の全廃を要求している。
実験の有害な放射能漏れが確認されておらず、失敗説もあるのに、イスラエルの100〜200発の核弾頭とミサイル、インド、パキキスタンの核実験と核兵器開発、米国の本年夏の未臨界核実験による核兵器改良を棚上げして罪悪を犯しながら、米日は狂気の騒ぎだ。政府・自民は周辺事態法と特措法で米国追従の戦争挑発行動に走る目論見だ。
中川昭一自民党政調会長は日本核武装の議論を提唱、ブッシュの機嫌取りで国民を核破局の売国・亡国へ押し出そうとした。彼は中川秀直幹事長や野党の民主党、共産党、社民党から反撃を受けて孤立はしたものの、議論が起れば世論を核武装へ扇動する目算で、自民党内のネオファシスト一派の結集の旗印を掲げている。戦争になったら、自分らも核被爆で死ぬことを知らない愚鈍さから・・・
一方、朝鮮半島の南北は同じ民族だのに、南から敵対へ転換された上に中露から見放されたら、北は最大の存亡危機だろう。決死の防衛行動に出るのは必定だ。
しかし他方ではイラクのランセット誌は、今度のイラク戦争で60万人以上が殺されたと調査結果を発表した。06.10.10の朝イラクのバグダードでは、反占領武装勢力が米軍の主要武器庫を急襲した。数百人の米軍将兵を殺傷したうえに、約10億ドル相当の武器・弾薬類を爆破して、占領米軍に大損害を与えた。英国陸軍参謀長は「英軍のイラク駐留は治安悪化を招いており、早期に撤退すべきだ」と言明した。イラクの2大侵略・占領軍に分裂のクサビが入って、米ブッシュ政権は大打撃を受けた。
ブッシュらのイラン侵攻計画は、05年12月に低空総合防空設備29基のロシアからの輸入と配備で、戦術核巡航ミサイルによるイラン攻撃が障壁に突き当った。中朝友好協力相互援助条約は破棄されていない。こうした状況下でブッシュ政権は、イラクと朝鮮の東西で2正面作戦の戦争を同時に遂行して勝利できる見込みはない。過去最大の双子の赤字で米国経済はデフォルト真近だからなおさらである。
米国外交政策を決定している世界的な金権奴隷支配勢力フリーメーソンのCFR(外交問題評議会)のリチャード・ハース会長は、06.10.16に英フィナンシャル・タイムズ紙に発表した「中東波乱時代の夜は明ける」と題する論文で「中東地域でのアメリカの時代は終った」と書いた。これは、米ブッシュ政権の支配者による中東での敗北宣言である。
http://tanakanews.com/g1021mideast.htm
フリーメーソンの新聞ワシントン・ポストは06.10.20に、ブッシュ政権が11月中間選挙後にイラク政策の大幅見直しを余儀なくされて、(1)イスラム教シーア派が多数の南部、スンニ派主体の中部、北部クルド人自治区への自治権拡大によるイラク分割、(2)米軍の段階的撤退、(3)劇的な米軍削減があると予見した。イラク分割は石油利権紛争から内戦をもたらす邪悪な戦略になる。
ところが一方では最近産経新聞朝刊が、米国のJ.バビン(父親ブッシュ政権国防副次官)、E.ティムパーレーク(レーガン政権国防総省動員計画部長)の共著軍事小説「Showdown(対決)」の部分訳を連載している。それは、09年に女性大統領(ヒラリー?)の下で尖閣列島を巡って日中関係が悪化して、中国がミサイル攻撃で新日中戦争を開始、大阪が核攻撃を受けて日本は降伏するが、その間に米国は日米安保条約の防衛義務に反して不介入を続ける、という筋書きである。
これは日本核武装の挑発的な後押しである。これは、前稿で紹介した米国指導下の安部らによる日中戦争計画の研究会での戦争構想と同じフリーメーソンの策謀の可能性が大である。現にブッシュの演説で「悪の枢軸」を宣言させたネオコンの有力者デイビッド・フラム(David Frum)は「米国がイスラエルに軍事援助してイランの核施設を先制攻撃させるのと同様、日本を核武装させて北朝鮮を叩かせ、中国に対抗させるのが良い」と主張している。日中戦争の挑発路線だ。
http://tanakanews.com/g1024japan.htm
これは、彼らが中東で失敗したから、軸足を極東へ移しつつあることの不吉な現れかもしれない。しかし小説が隠して言及していない部分がある。それはフリーメーソンの方針に従ったブッシュ政権登場以来の「先制核ハルマゲドン」の米国家戦略である。日本国民は、フリーメーソンの挑発に乗せられ罠にかけられて、核武装の亡国の途に踏み出してはならない。
朝鮮の核兵器実験とそれがもたらす米国との軍事衝突、戦争の可能性の増大によって、米国が東西2正面作戦を強行できないので、中露は中東でイランの石油資源の確保と開発の安全確保の可能性を増大させた。自国の天然ガス資源がすでに枯渇した上に石油資源もあと残り少ない米国は、中東の石油・天然ガス資源の確保戦略で大失敗を喫した。ブッシュ政権の対外政策、外交、軍事路線は破綻しており、政権の余命にも危機が近づいている。
朝鮮の中露との民間貿易は続く。朝鮮の貿易総額の5%以下の日朝貿易を日本が封鎖しても効果はわずかだ。政権に王手をかけられているのは、朝鮮の金正日政権よりむしろ米ブッシュ政権だと、米国では指摘されているが、それには根拠がある。
中国の胡錦濤国家主席の代理で06.10.18に訪朝した唐家旋国務委員は平壌で金正日総書記と交渉したが、朝鮮側の基本路線は変らなかった。金氏は米側が譲歩すれば朝鮮側も譲歩するとして、金融制裁の解除を求めた。そのあと、朝鮮との直接交渉を頑固に回避している米国のライス米国務長官は06.10.20に北京を訪問して、胡錦濤氏ら中国側首脳らと会談したが、成果はなかった。中国側は、難局打開のため金融制裁での米側の柔軟な対応を求めた。金正日が核実験を謝ったとか、再度の核実験計画はないと言ったとかは、聞かなかったとライスは記者会見で否定の言明をした。それは国際的な朝鮮制裁感情の過熱を冷ますための中国側の虚報リーク策だったようだ。
米共和党のルーガー上院外交委員長は06.10.22に米FOXテレビで、「朝鮮の核実験問題を外交的に解決するため、米朝対話は避けられない」と語った。彼は、「米国は北朝鮮に体制転換を求める意思はなく、統治を維持できることを明確に分からせることが重要だ」と強調した。体制が圧制で変革すべきかは、朝鮮人民自身に決定権があるという民主主義の原則は、誰も否定できない。共和党のスペクター上院司法委員長も米CNNテレビで「北朝鮮の核問題は深刻で、直接対話を含むあらゆる選択肢を検討する必要がある」と語った。上院外交委のバイデン民主党首席委員も「米国を除く6か国協議参加国は、実際には米国が直接交渉に乗り出すことを望んでいる」と言って、ルーガー委員長に賛同した。
ブッシュは追い詰められつつある。米中間選挙で民主党が多数派奪回の勢い、上院は激戦状態で、無党派層が鍵を握っているが、米ABCテレビとワシントン・ポスト紙が06.10.23に発表した世論調査によれば、無党派層で民主党を支持するとの回答は59%で、与党共和党支持の31%の2倍近い大差がついている。ブッシュの支持率も37%に低落した。
韓日は米国追従に走ったが、朝鮮のミサイルは東京を射程内に入れている。核実験は核弾頭の実験だ。韓国の大統領、野党と短絡思考の国民世論は猛省すべきだ。日本の政府と、自民、マスコミの危険な扇動に乗せられた世論は、ブッシュの軍事冒険路線を直視して冷静に考え直す必要がある。日本の平和・民主勢力は、ブッシュの好戦的な新たな侵略戦争への途を開いた安保理決議による朝鮮船舶の検査、米軍支援に反対して行動に立ち上がろう。
http://gold.ap.teacup.com/tatsmaki/32.html
国連総会第1委員会(軍縮・安全保障問題)は06.10.26に、日本政府が出した朝鮮の核実験非難を含めた核軍縮決議案を賛成169、反対3、棄権8で採択した。横暴で危険な反対は米国、インド、朝鮮だった。棄権はイスラエル、中国、イラン、ミャンマー、パキスタン、エジプト、キューバ、ブータンだった。朝鮮代表は賛成すべきだったのに、「核実験は米国の核の脅威と制裁に対しやむを得ず取った措置で自衛の正当な行為だ。朝鮮半島の非核化を望んでいることに変わりない」と言明した。世界最大の核兵器保有国で核実験を続行して核兵器を改良しており、イラクに劣化ウラン弾を大量投下し、朝鮮に軍事的圧力をかけている上に核兵器でイラン侵攻を目指している米国の犯罪的な責任は最も大きい。
また日本主導の核兵器廃絶決議案が、朝鮮の10月9日の核実験を非難する文言を含めて同日に同じ国連総会第1委員会で169ヵ国の賛成で採択された。94年から毎年採択されているが、米国などの横車で強制力がないことが致命的欠陥だ。危険で犯罪的な反対は米国、インド、北朝鮮の3ヵ国だけだった。イスラエル、中国、パキスタン、イランなど8ヵ国が棄権した。 米国の犯罪的反対は、ブッシュ政権登場の01年以来6年連続である。地球とグローバルな平和の敵―USA帝国主義に核兵器廃絶を強制する世界的な闘いが緊要になっている。
06.11.7の米中間選挙を目前にして、ブッシュら共和党が上院でも下院でも過半数を失う見通しが米マスコミで派手に報道されており、このブッシュの弱みを見た朝鮮側は、6ヵ国交渉再開の提案をした。 06.10.31に中国の仲介で中米朝代表が北京で会合し、まず中米代表が交渉し、3者一緒に食事したあと米朝代表が2国間交渉をし、結果を受けて米中が交渉した結果、日韓と日程を調整して06年11月か12月に6者協議を再開すること、米代表は6ヵ国交渉の枠内で米の対朝金融制裁問題で交渉する作業部会を設けることで合意に達した。これは、危機に直面しているブッシュらが、余儀なく一定の妥協に応じた結果と見られる。しかし時すでに遅し。ブッシュが強硬路線に頑固に固執し続けた結果、これでは、米中間選挙への共和党に有利な展開は、もはやないだろう。

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