勉強はできない、スポーツもダメ、見た目も冴えない、これといった特技もない。そんな僕のような人間にとって最後の拠り所となるのは「実はIQが高い(かもしれない)」ってことである。ほら、世の親たちは出来の悪い子どもに向かって、決まり文句のように言うでしょ? 「あんた、やればできる子なんだから」と。そして小声で続ける。「先生も言っとったわ。IQは高いんだから、やればできるって」。今はどうか知らないけど、30年ぐらい前には、こうやって子どもを励ます親が多かった(と思う)。
だが、励ましのつもりで親が放ったセリフは、僕にとっては逆効果だった。やればできる? それなら、いつか頑張ろう。今はサボってても大丈夫。オレには潜在能力があるんだからさ。
そして何の努力もしないまま学校を出て、とりあえず社会人になり、いろいろあった末、現在に至る。努力をしていないから、社会的地位も名声も得ていない。人に自慢できるような経歴も実績もない。流行り言葉を使えば「負け組」だ。しかも相変わらず知性は乏しく、実社会で役立つ知識もロクに持ち合わせちゃいない(持ってるのはサブカルチャー方面の役立たない知識ばかり)。もちろんスポーツは苦手なままだし、見た目はますます冴えなくなっている。パッとしない人生だ。でもでも、実はIQが高いんだい! だから、きっかけさえ掴めば、あるいは何らかのチャンスを与えられれば、ものすごい能力を発揮できるはずだ。本気になれば時代の寵児にだってなれるだろう。そう信じて生きているわけである。いや、もはや過去形に直すべきだろう。昨日までの僕は「オレ、今は大したことないけど、実はIQが高いからさ、やる時はやるよ」と思って生きてきたのである。
昨日、『テスト・ザ・ネイション 世界初! 適職がわかる 新iQテスト』という番組が放送された。要はテレビを通じての知能テストである。出される問題に答えていき、その結果で自分のIQと適職が分かるのだ。ご覧になった方も多いだろう。
興味深い番組ではあったが、実は見ないで済まそうと思っていた。だって、やってみて自分のIQが実は低いって分かったら、すげー落ち込むじゃん。打ちのめされるじゃん。「実はIQが高い(かもしれない)」という根拠が曖昧な事実(というか、もはや事実ではない)だけを心の拠り所として今まで生きてきたのだ。その部分を否定されたら、これから僕は何を支えに生きていけばいいんだ。
しかし、ここで逃げるのは男じゃねえ。いや、性別はともかく、人間として間違っている。潔くテストを受けよう。結果がどうあれ、そこから目を背けてはならない。そういう悲愴な覚悟を番組開始直前に固め、僕はIQテストに臨んだ。
で、結果は以下の通り。
<左脳テスト>
(1) 分析力 「ことばの推理」(5問)……正解:3問
「ことばの穴埋め」(5問)……正解:4問
「共通するひらがな」(5問)……正解:4問
---------------------------------------------分析力/計11
(2) 論理力 「質問文の完成」(5問)……正解:5問
「音の記号化」(5問)……正解:2問
「文字の順序記憶」(5問)……正解:3問
---------------------------------------------論理力/計10
<右脳テスト>
(3) 空間認識力 「折り紙パンチ」(5問)……正解:4問
「瞬間間違い探し」(5問)……正解:3問
「方角テスト」(5問)……正解:5問
---------------------------------------------空間認識力/計12
(4) 想像力 「多い顔を探せ」(5問)……正解:2問
「ロープの結び目」(5問)……正解:3問
「顔の順序記憶」(5問)……正解:1問
---------------------------------------------想像力/計6
(5) 記憶力 「視覚記憶」(5問)……正解:4問
「聴覚記憶」(5問)……正解:4問
---------------------------------------------記憶力/計8
(6) 判断力 「フラッシュたし算」(5問)……正解:4問
「即断!右手・左手」(5問)……正解:4問
---------------------------------------------記憶力/計8
<つづく>

0