これまた3週間近く前に観た映画。『デート・ウィズ・ドリュー』と正反対の感想を持った作品だ。いや、この2本、特に共通点があるわけじゃないけどね。ただ、『デート・ウィズ・ドリュー』が意外性に乏しすぎたのと比べて、この『僕は妹に恋をする』は意外性だらけだったのよ。
主人公は双子の兄と妹。幼い頃、兄のヨリは妹のイクに「イクは僕のお嫁さんだよ」と言うのだが、高校生になった今では妹に興味を示さない。しかも、双子であるのに、ヨリは頭脳明晰な優等生で、イクは冴えない劣等生。少女マンガによく出てくる「ドジな女の子」だ。
ヨリと違って、イクは今でもヨリを慕い続けている。同級生から交際を申し込まれているが、愛しているのはヨリだけだ。では、イクはどうなのか。無論、ヨリのことを好きなのだろう。だって、『僕は妹に恋をする』というタイトルなんだもん。
そこで予想されるのは「なんだかんだ言って、相思相愛であることが明らかになる」という展開である。でも、兄と妹という立場では恋愛は許されない。それで二人は悩み、葛藤するのだろう。いちいち先の展開を予想しながら観ているわけではないが、そういう流れになるのではないかという気がしていた。ところが!
始まって10分も経っていない箇所でのことだ。二段ベッドの下の方で寝るイクの顔を見ながら、ヨリが思い詰めた顔をしている。そして、胸の奥に秘めた想いを告白する。イクのことを好きだ、と。
ははーん、これはイクの夢というか妄想というか、そういうものを描いたシーンだな。僕はそう思った。夢から覚めたイクは、きっと落胆の溜め息を洩らすのだろう。そして再び平凡な日常を過ごすのだろう。……んん? しかし、妄想を描いている割には、ちと長い。不親切なほど薄暗い画面の中で、目を覚ましたイクはヨリと切実な表情で見つめ合っている。互いに愛し合っていることを言葉で確かめる。そして……あわわ、あろうことか、この二人、そのまま禁断の果実を貪ってしまうのだ。そそそ、そんな急な展開!
いやはや、ホントに驚いた。ビックリした。いや、その辺の展開は原作のマンガ通りみたいだから、すでに読んでいる観客たち(ちなみに大半が女性で、その約半数が女子高生)にとっては意外じゃなかったろうけど、僕のような一見さんにゃあまりに予想外で、言葉も出なかったのよ。まあ、映画を観てる最中に言葉を発する必要もないんだけどさ。
その後の展開も、ことごとく予想を裏切る。たとえば、二人の母親が、ヨリのベッドが少しも乱れていない(つまり二人はイクのベッドで夜を明かした)のを見て奇異に思う場面がある。そこで「ははーん、この母親、二人の関係をいろいろと詮索するんだな?」と思ったが、そういう通俗的な方向には話は進まない。また、二人の関係に嫉妬した女子生徒がヨリに言い寄ると、あろうことかヨリったら、その女子生徒とも肉体関係を持ってしまう。あぎゃぎゃ。
えっと、今まで書き忘れたけど、ヨリを演じてるのは「嵐」の松本潤なのよ。ジャニーズの男性アイドルが、こういう役を演じるとはねぇ。三十数年前、当時のジャニーズ事務所を担っていた郷ひろみは名曲『花とみつばち』の中で「指と指と絡ませ背中に口づけ」と歌って、ウブなファンや良識派からヒンシュクを買った(よね?)。それを思うと、まさに隔世の感がありますな。しみじみ。
そんなこんなで意外な展開が続くので、イクに交際を申し込んでいた同級生が本当に好きだったのが実はヨリであったことが明かされても、もはやこっちは驚かない。その代わり、この作品のタイトルが妥当なものではないことに気付く。『僕は妹に恋をする』じゃなくて『みんなが僕に恋をする』の方が適してるじゃん。
ここまで来ると、どんな風に話が進んでも驚かない。と思っていたら、明確な結末を迎えないままに映画は終わる。最後に描かれるのは、枯れた野原の中を歩いていく二人の姿だ。たとえば「二人の関係が母親や周囲の人々にバレたりして大騒ぎ」とか「誰も知らないところで二人は仲良く暮らした」とか、そういう通俗的で明確な結末は用意されていないのである。観客は途方に暮れるのみ。
では、この作品が面白くなかったのかといえば、そんなことはない。好きになってはならない人を好きになってしまった時の戸惑いや悲しみはよく描かれていた。特に僕が惹かれたのは、ヨリの親友であり、イクに交際を申し込んでいる「矢野」である。演じている平岡祐太が上手いせいもあって、すごく清廉で清々しい印象を受けた。
そうそう、もうひとつ、ものすごく予想外のことがあったのよ。ずっと前にこの映画の予告編を見た時、その中で聞こえた声に僕の胸がキュンと鳴った。『純情きらり』で「薫子」を演じていた松本まりかが喋っていたからだ。おおっ、彼女が出るなら何が何でも観なきゃ。そう思った僕は、公開される少し前に公式サイトを覗いて、妙なことに気付いた。紹介されているキャストの中に松本まりかの名前がないのである。予告編でのクレジットの中にも、彼女の名前は記されていない。
もしかしたら出演シーンがカットされたのか? そんなに小さな役だったの? でも、どこかに出ているかも。いや、出ていることを信じよう。そう念じながらスクリーンを見つめる僕の目に映ったのは、確かに松本まりか……んん? ちょっと顔が違う。似ているけど違う。しかし、声は確かに松本まりか……むむ、ちょっと違う。似ているけど違う。じゃあ、ヨリにちょっかいを出すこの子は誰?
この映画を観た方なら、もうお分かりだろう。実写版の『美少女戦士セーラームーン』に出ていたらしい
小松彩夏という女の子だったのだ。
松本まりかとは顔が似ているだけじゃなく声もそっくりだったので、すっかり勘違いしていたわけである。ああ、オレのバカ。

0