ちょっとだけストーリーを。
主人公はマスコミ業界で働く20代半ばの青年。初めて風呂付きの部屋に引っ越すことができて悦に入っていたが、壁が薄くて隣室の物音が筒抜けであることに気付く。しかし、隣に住むのは、うら若き女性のようだ。青年は必死になって壁にへばり付き、話し声や物音を聴こうとする。
一方、女性はストーカーに悩まされていた。電話での脅迫に怯え、交際相手に相談する。その交際相手からの励ましとアドバイスに支えられ、彼女は恐怖感を紛らわしていた。
やがて隣室の青年は、女性の顔を確認する。思った通りの可愛い子だ。彼女が出したゴミを漁って素性を調べ、勤め先も突き止める。さらに「宅配便の荷物を預かってもらう」という手口で女性と顔見知りになり、次第に親交を深めていく。二人はすっかり打ち解け、一緒に食事をするような仲になるのだが、もちろん彼女は男が自分の部屋を「盗聴」していることなど知らない。そして――。
という感じで話は進んでいくのよ。面白そうでしょ? 実際、これが見応えたっぷり。ぜひともご覧くださいませ。シネマスコーレで5/4までレイトショー公開(20:25〜)しています。
『聴かれた女』公式サイト→
http://kikaretaonna.com/
***** 以下、ネタバレ *****
これほどまでに「どんな結末を迎えるんだろうか」とドキドキしながらスクリーンを見続けたのは久しぶりだ。終盤に頭の中をよぎったのは、チラシの裏に書いてあった言葉。観ると決めた映画に関しては予備知識を持ちたくないのでそういう類のものは読まないのだが、これはたまたま目に入ってしまったのだ。
そこに書かれていたのは、「最悪の方向へと一気に動き出すのであった…」という文面だった。その言葉が頭の中を駆け巡る。この主人公、悪行が彼女にバレて愛想を尽かされるの? それは仕方ないことかもしれないけど、絶対イヤ! すっかり主人公に感情移入しまくっていた僕は、祈るような気持ちで結末を待った。待った。待った。そしたら……ああっ、こんな至福の幕切れ!
いや、これが「男の夢物語」であることは百も二百も承知だ。実際、こんなことはあり得ない。というか、こんなに上手くコトが運ぶわけがない。でもさ、なんちゅうか、いい夢を見させてもらった、という気分にさせてくれたのよ。やっぱりハッピーエンドが好きだからさ。
あのストーカー野郎にとっては最悪の結末だろうけど、あれはまさしく自業自得だもんね。考えてみれば、この物語は「良い変態VS悪い変態」、もしくは「許される盗撮魔VS許されない盗撮魔」の闘いを描いている、と言えるかも。まあ、良識派からは「どっちもどっち」と言われそうな気もするけど。
有名なAV女優であるらしい蒼井そらは、見事な存在感。ほら、AV女優とかグラビアアイドル(この2つを一緒にしていいものかどうか知らないけど)って、ほとんどの場合、台詞回しは拙いでしょ? でも、この子は稀に見る例外。口調も立ち振る舞いも自然だし、無理している感じが全然しない。しかも脱ぎっぷりも潔い(当たり前か)。もしかしたら、かなりの大女優になるかも。

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