CGLセミナーレポートの続きです。
専門的な内容で少し難しいのですが顕微鏡で拡大した宝石も
研究をするとそれぞれに個性があり楽しいものです。
ヴィクトリアンボックスでは積極的に世界各地のジュエリー
またジェムストーン、ダイヤモンドの勉強会に参加し、
その内容をブログでシェアすることにより日本のジュエリー
愛好家の皆様、ジュエリー業界の方々とともに楽しめれば
と思っています。
■産地鑑別技術の現在
(※ここでは主な二つのみ取り上げる)
1. 内部特徴(インクルージョン)観察
前述のようにエドワード・グベリン博士によって拓かれた
伝統的な産地鑑別の手法で、現在でも主要な評価要素の1つ。
1) カシミールサファイアのヘイジー・ラスター
(ヘイジー効果)
ヘイジー効果とは微細なインクルージョンによって織りなされ
る靄がかったような光沢のこと。
カシミールサファイア特有のベルベットの布の様な
“ベルベティ”と評される柔らかな色合いに大きく
寄与しているとされる。

今年3月にクリスティーズで730万ドルで落札
された35.09ctのカシミールサファイア
2) ビルマのモンスー産ルビーに見られる
ブルー・コア(青色色帯)
モンスー産ルビーは加熱処理によって紫味を除去するのが
一般的なのでブルー・コアが残っている場合は非加熱の
可能性が高い。
(加熱によって取りきれていない場合もあるので注意)
3) ビルマのモゴック産ルビーに見られる丸みを帯びた
カルサイトインクルージョンと糖蜜状組織

(→で示しているのがカルサイトインクルージョン。周囲には蜜を流した
ような糖蜜状組織が見られる)
4) シルクインクルージョンの産地別特徴
※ シルクインクルージョンとは
ルビーやサファイア(コランダム)に見られる
60度で交わる細い針状のルチルインクルージョン
★ スリランカ産:細く長い
★ ミャンマー産:太く短い
★ マダガスカル産:スリランカに類似しているが
より太め
2. Chemical Finger Print (ケミカルフィンガープリント)
宝石には主成分以外に微量元素が含まれており、その組み合わ
せや量・比率は産出される地質によって異なる特徴をもつ。
この人間の指紋のように宝石が生成された鉱床のアイデン
ティティーを示す化学的特徴をケミカルフィンガープリント
と呼び、現在の原産地鑑別において非常に重要な役割を
果たしている。
これには従来元素分析に用いられて来た蛍光X線と比較し、
より分析精度の高いLA-ICP-MSが用いられている。
具体的には宝石のガードル部分に髪の毛程(30−80ミクロン)
の微細なレーザーホールをうがち、その気化ガスから
微量元素を検出する。
※肉眼では見えないミクロの穴とはいえ、穴を
開ける必要があるため準破壊検査に分類される
測定結果を3成分の比率及び量で3次元グラフに表した例

(注:上の画像は中央宝石研究所サイトよりお借りしています)
この3次元プロットにより、従来非常に困難と
されていた同様な地質環境から産出する宝石の
原産地鑑別(ex. 大理石起源のビルマ、ベトナム、
タンザニア産のルビーの産地鑑別など)に道が
開かれた。
■産地鑑別の限界
原産地の結論はあくまでそれぞれの鑑別ラボの独自
の手法、評価によって引き出される“プロとしての
opinion(意見)”。100%の正確性を保証するもの
ではない。
原産地からのサンプル石や最新のデータ収集や
鑑別機器の精度向上、鑑別機関同士の情報の
共有等のたゆまぬ努力によってこれからも
正確性の向上に努めてゆく。
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[産地鑑別を行っている主要な鑑別機関]
サザビーズやクリスティーズなどの国際オーク
ションでも採用されている世界的に評価の高い
鑑別機関としてGubelin、SSEF、GIA、GRS
等が挙げられます。
日本では中央宝石研究所などがあります。
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