目黒のアンティークモールにある小さなお店と御所に
いらっしゃる当時の皇后美智子様とをつなげてくだ
さった Aさん。
そのAさんのアメリカにいるお友達が同じアンティーク
モールの私のお店の前に併設された委託ケースに出店
されていて、時々 Aさんがお友達の代わりにケースの中
の商品の入れ替えに訪れる度にお話をしていました。
比較的親しくなってからは数週間ごとに職場の近く
にある美味しいケーキ屋さんでケーキを買って来てく
ださり”ごめんなさいね、何も買わなくて” と言われ
ながら私はコーヒーを入れて Aさんとのおしゃべりを
楽しんでいたのです。
2年ほどそんな関係が続いたでしょうか、ある日
Aさんが
”あのね、実は私は皇后様のお洋服を作っている
”植田いつこ先生”のアトリエで働いているの
先生の片腕っていう感じかしら。。。こういうお仕事
は誰にでも頼めるって訳ではないけれど皇后様の
お探しされているものがあるの。田中さんお願い
できるかしら。。。”
最初のオーダーはアンティークのメタルビーズ
のバック。
いくつかの候補を Aさんに渡してドレスの仮縫
いや採寸などの際に御所にお持ちして選んで頂く。
という形でお仕事が始まりました。
私の出身校がひとつ上の紀宮様と一緒で図書委員
などをさせて頂いた事、ジュエリーの勉強をイギリス
で学んだ事もお仕事をさせて頂いた理由のひとつ
かもしれません。
恐らく Aさんとコーヒーとケーキを楽しんで
いた間、なんとなく調査されていたのかなぁ?
と今になっては思います。
その後はかなり頻繁に皇后様のお直しや
リフォームをお受けしました。
お直しはミキモトさんなどですれば良いのでは?
と Aさんに伺ったこともありましたが、多分女官
の方を通して仰々しくお直しをするよりも気軽に
細かいオーダーを私や植田先生にはお話できる
からきっとその方が良いのよ。。。
と言う事で、私もちょっと誇らしい気持ちで
Aさんを通してお仕事をさせて頂きました。
一番多く手がけさせて頂いたのはチョーカー
や少し短めのかぶれないタイプのクラスプ
交換です。
被災地や訪問先でご自分で簡単に、御髪の
邪魔にならず早く身支度が出来るワンタッチ
の日本製の特許のあるクラスプを特に気に
入って頂きおそらくお手持ちの短いネック
レスは殆どその特許のクラスプに交換したと
思います。
注文で作ったシルバーに白い七宝を施した
イギリス風なクラスプやマット加工したもの
など、高価なものではありませんが、小さな
エレガントなこだわりに私も勉強させて
頂いたお仕事でした。
またクラスプの交換の際に同じ様なパール
のネックレスでもミリ単位の調整が必要で
Aさんに何度も目黒と御所を往復して頂き
これはあと3ミリ短く、5ミリと
皇后様のご指定された長さに調整した事も
印象深い思い出です。
(続く)

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