思わず息を呑んでしまうほど美しいアール・デコ期
に作られたダイヤモンドリングです。
良質の大粒のバケットやラウンドのダイヤモンドを
まるで当時建設が盛んに行われたニューヨークの
ハイライズビルの建築物とそれを照らす光り輝く
ライトの様にデザインされています。
全体的なバランスが美しいだけでなく特に素晴らし
のは端にセットされた極細のバケットカットの
ダイヤモンド。
リングの裏側も骨組みがしっかりとデザインされた
建築物の様に端正な作りになっています。
おそらくカットされたダイヤモンドの材料で
作ったリングではなくこのリングを作るために
カットが施されたと思われる変形のダイヤモンド
が使われており、ジュエリーを作ったことの
ある人なら驚愕してしまう作りとなっています。
http://victorianbox.shopselect.net/items/25867972
アール・デコ、その言葉を聞いて皆さんは何が浮かぶ
でしょうか?
アール・デコとは時代的に1910年の終わりごろから
1930年代の終わり頃までに流行したスタイルです。
このアール・デコという名前は1925年にパリで行われた
万博
Exposition Internationale des Arts Décoratifs et Industriels modernes
(パリ万国装飾美術博覧会「現代装飾美術・産業美術国際博覧会)
略称”アール・デコ博覧会”この略称からこのスタイルの装飾を
「アール・デコ」と呼ぶ様になりました。
植物や人間などオーガニックな自然からデザインされた緩やか
なラインのアールヌーボーに比べ、アール・デコはキュビズム
バウハウス、当時ピラミッドの発掘によりブームとなった
古代エジプトの装飾やイスラミックカーペットなどの幾何学
的な模様、また中国や日本などの東洋美術、エキゾチックな
デザインや美術品から影響をうけ、マシーンエイジ、近代的
な機械などに影響されたストレートなラインや幾何学的な
洗練された形のデザインが特徴とも言えます。
アール・デコの時代にはジャズが流行し、戦争が終わり今まで
抑圧されていた人々はお酒を飲んだりパーティーに興じる人も
増え、今まで家の中にいて外出の際には体を締め付けるコルセット
を着て女性らしいラインのドレスを纏っていた女性達も社会で働く
機会が増えコルセットから解放されました。
ストレートラインのチャールストンドレスが流行し、長いパールや
ダイヤモンドのソートワールネックレス、短髪から覗くスタッド
イアリングやロングイアリング、それに合わせた直線的な
まるでニューヨークやシカゴのハイライズビルの様な幾何学的
なジュエリーも流行したのです。
当時ドレスアップしたお店のマネキン
ヴァンクリーフ&アーペルのジュエリーの広告。
アール・デコ時代のヴァンクリーフ&アーペルのジュエリーの広告。
“Et puis voici mon coeur qui ne bat que pour vous.”
「あなたの為だけにに鼓動する私の心臓」
19世紀のデカダンスを代表する破天荒詩人ポール ヴェルレーヌの詩
Greenの一節。
おそらくこの広告が作られた少し前にフランス中で
このヴェルレーヌの詩にドビュッシーが曲をつけた
ものが流行したので広告に使われたのでしょう。
ドビュッシーも浮世絵を家に飾りその音も
東洋的と言われています。
アール・デコというのは装飾スタイルという認識
が高いのですがライフスタイルの様なものだった
ことがわかります。
1930年代に作られた有名なジュエリー作家
レイモンドテンプリエの作品の写真。
今見ても斬新でモダンなスタイルのデザインです。
リングの厚みがわずか1ミリから2ミリ驚くべき薄さ
で身につけやすくその作りの美しさに惚れ惚れします。


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