すぐに乾いてしまううた  








枯れた樹木が
腐って落ちるように
あなたは居なくなった
あしもとには
かさかさの
かけらが残るばかりで

死んだから永遠
なんて
わたしは
疼く血が好きだから
そんなもの
信じないのです

窓の外では
ぼんやりとした
雨が降っている
誰かが
嘘を放置しているのかもしれない
ふと
そんな気がして

噛みちぎった左手の小指の爪は役立たずのノコギリのよう

深夜ラジオのDJの声は甲高い、きっと
そうしていなければ自分の名前すら忘れてしまいそうで
怖いのだろう
シャツの袖が少しほつれているのを
気にしているうちに結構な時間が過ぎていた

子守唄がわりのアルバムは回転を終えた
わたしは長いため息を吐き終えた
夜は誰のどんな声も聞こえなくなったことに安堵して
ただただ黒雲と雨を垂れ流していた

思いを残せばうたのようでしょう
背中を向ければ映画のようでしょう
わたしは愚かな観客を気にして
本当の思いをどこかへなくすでしょう

点字ブロックの上で誰かが
要領を得ない不満を長々と話している
どうしてこんな時間に
世界はいったんすっかりと寝静まったのに
すべての生と死から
はぐれてしまったのでしょう
だからこそそうして
未練がましく、みじめで

昼間に淹れた珈琲の豆が
雨の音に混じって聞こえて来る
雨が降る夜にじっとしていると


世界には
雨しかないのだという気がして来る






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I Won't Grow Up  








受話器を耳に当てたけれど水難事故の被害者の泡音が聞こえてくるだけだった、そこでそうそうに電話を切って、そのとき電話が鳴らなかったらしようと思っていたことを実行しようとしたけれど、それがなんだったのかを一瞬すっかり忘れてしまって、いっそのことほかのことをしようかと考えていたところ、ギリギリで思い出した、昨日の夕食からシンクに溜めていた皿を洗うつもりだったのだ、ソファーから立ち上がり、身体をゆっくりと左右に揺らしてみた、昼食はあらかた消化されたようだ、近頃体調がすぐに崩れるのでいちいち確認しながら動く癖がついた、なにかが明らかにされていない、なにかが完全には修復されていない、いまいましいことには違いないが、そうした現象には子供のころから慣れっこになっている、今回たまたまそれが身体の方にあらわれたというだけのことだろう、そんなこともあるさ、なんたって本当ならば威張っていてもいいくらいの歳になったのだから…でも俺は、歳を取ったからって別に偉そうにしたりなんかしないけどね、そういうのに踊らされるのは愚かしいよ、年齢とか、肩書とかさ、そういうの…そんなわけで俺は袖を少しまくり上げて洗い物を済ませた、ひとり暮らしだ、少しくらい溜め込んでもたかがしれている、鼻歌一曲分で出来上がりだ―さてこれからなにをしようか?そう考えていたところにもう一度電話が鳴る、携帯電話を持つのは半年前にやめてしまった、大した理由はない、ポケットがひとつ開くからとか、そんな程度の理由の集合だ、友達には若干不評を買ったけれど、家には電話があるわけだし、そんなに重要な事態じゃない、と言い聞かせた、向こうもそれで納得してくれた、だいたい、電話を持ち歩くことは必要か必要でないかといえば、俺にとっちゃべつにそんなに大事なことでもない、俺に連絡をとりたがる人間なんてそんなにいないし、本当にアクセスしたいやつは必ず有効な手段を使う、いきなり訪ねてくるやつだっている、そして俺は、そいつを必ず迎え入れる、そもそも、近くに住んでる友達がそんなにいないというのもあるけれど…この田舎町にゃ、俺を楽しませてくれる人間なんてそんなに居はしないのさ―皿を洗った後は少し身体を鍛えた、肉体がリズムを維持し続けるには、トレーニングはしないよりはしたほうがいい、自分にとってちょうどいいリズムというのは、生活の中に自然に溶け込んでいく、ライブの時にドラマーが耳に突っ込んでるクリックみたいにさ、そのリズムによって活動する自分というものが出来上がる、もしもそいつがなにかしら文章を書いたりしているなら尚更だ、それは自分自身の奥深くをまさぐるのに絶対に役に立つ、そして損をすることはない、だから俺はある程度のトレーニングを欠かしたことはない、どこかが弛んだり浮腫んだりすると、それだけ反応速度は遅くなってしまう…俺は、持論というのはある程度イメージとしても体現されるべきだと思っている、なんといえばいいかな、ある種の厳しい世界について語るときに、そいつが酷い肥満体系だったりすると、なんだか聞きたくなくなるだろ?簡単にいうとそういうことさ、もちろん、そんな型枠のことなんて気にしないやつだっている、だけど俺にとっちゃこれは、表現のひとつなんだ―というわけ、それはともかく、汗をかいたら一休みして、インターネットで面白いものを探す、たまにはテレビをつけることもある、でも、近頃はテレビなんて、観たこともない番組を観る物珍しさくらいの楽しみしかなくなってしまった、外野でいるしかない無能な大衆の声を気にし始めてから、テレビに出来ることはなにもなくなった、ある種の必要悪は必ずテレビから学んだ、俺たちの世代は…なんだか少し寂しい気がしないでもない、人気のバンドが新しいシングルをリリースするというニュースをやっていた、お坊ちゃんが趣味で始めた音楽がその筋の人の耳に止まってロックというジャンルのアルバムをリリースしてます、っていう、最近のロック・バンドの雰囲気はものすごく嫌いだね、新しいものを受け入れられない年寄りのたわ言だって?違うね、これはそういう話じゃない、もっと言えば、そういう次元じゃない…俺たちが子供のころ耳にしていたものは、そうしないと生きていけない人間たちが歌うばかりだったよ、まあ、そのころ歌ってた連中も大半はあの世へ逝っちまったけれどね、でも一番の年寄り連中は、もうすぐニューアルバムを出してワールドツアーをするって言ってるよ、まったく、ゴキゲンな話だと思わないか、俺も70ぐらいになっても偉そうな顔なんかしないで、自分がやるべきことだけをがむしゃらにやり続けたいもんだぜ、ねえ、もしかしたら、「とっとと死にたい」って思わなくなったその瞬間に、人は思春期を捨てるのかもしれないね、いや、子供のような気持ちっていくつになってもあるよ、でもそれは、思春期とは絶対に違うものなのさ…。












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ラジオの気楽さのままでよろしく  










ラジオの音は好きな音楽よりも投げやりでよくて
だからラジオの中で眠ることにしてる
住んだことのない場所の局がいい
まるで想像出来ない道の交通情報を聞いて
馬鹿じゃねえかとひとりで笑ってる
ねぇ、そういえば昨夜の話だけど
言いかけたことは最後まできちんと話すべきだと思うんだ
子供みたいに口の中でもごもご言ったところで
なんの解決にもならない、もちろんそれはわかるよね?
ぼくはきみにそんな、口先だけの大人になって欲しくない
繊細さを欠いたら大味になるのは当然のことだよ

動画サイトで湖を見てた
フルスクリーンにして
湖には意味がないよね
意味をつけて遊ぶのはいつだってぼくたちさ
たくさんの分岐が生まれ、その中で
ただの湖は絶対的な存在になる
そんな生き方を知らない人たちが
この世の中には驚くほどたくさんいるんだよ

その夜はなんだかうまく寝付けなくて
ラジオを聴きながら暗闇の中で目を開けていた
光通信のゲートウェイの灯り
この世の果てみたいに静かに点滅している
それを幻想と呼ぶか、それとも別種の繋がりとするのか
それもまたぼくたちかいかに思考するか、それ次第なのさ
新しい価値観なんか要らない
ずっとあるものについてもっともっと
静かに確かに考えていくだけでいい
どんなに時代が移り変わっても
宝物はいつだって苦労して手に入れた宝箱の中にあるだろう

眠れないことを不具みたいに気にすることはない
あまり眠る必要がないってだけなのさ
なんだかんだで、そう
いけすかなかったスマートフォンもようやく馴染んできたしね
ようやくそう、フリック入力でも詩が書けるようになったんだ
遅過ぎるって?
ずっとキーボードが好きだったもんだからさ
なに、大したことじゃない
説明したってどう違うのかなんて誰にもわからないだろ
うんそう
睡眠時間なんかそんなに気にしなくなったんだ
万全の体制で臨まなきゃいけないことなんて数えるほどしかないからね

ところで台風が逸れてよかったね、いやほんと
まだ身体だってまともじゃないのにさ
少しは穏やかに過ごさせて欲しいよ
この夏は落ち着かないことばっかりだったからさ
しかし、なんだね
近頃のニューシングルってやつは
「作りたい」って欲望ばかりに満ち溢れていて
「歌いたい」って気持ちはそんなにないみたいな気がするよ
ジェネレーションギャップだって片付けちまえばそれまでかもしれないけれどね
そう、なんだか最近はどいつもこいつも、ことによっちゃ喋れる猿みたいなやつまで
一言で片付けてみせるのが流行ってるみたいだけど
それ、馬鹿みたいだからやめた方がいいよ
結局のところお粗末な常套句が
飛び交うだけになるのが常だからさ

そろそろ睡魔もやってきたかねえ
きみはどうする、どっちでもいい
ぼくはたいして気にしたりしないから
とりあえずもう一度顔を洗ってくるよ
もしかしたら


少しは夢見がいいかもしれないからね










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