ブラッドなんて感覚を決め台詞にするのはよしなよ  











何かが転げ落ちて紛失
俺の
向こう側の感覚、鮮やかに喪失
失われた概念的な胎内そのがらんどうに
途方もなく哀しい灰色の風が吹く
灰色の風がどこか
忌々しい地域から巻き上げてきた
来世のような匂いのする砂が
銃撃の後の血飛沫のように、張りつく、張りつく、張りつく…そこに傷みはないが
俺の身体は潜在的な感覚でそれを拒絶し
水銀のように排除しようとするも
根を生やしたかのように砂は、
砂は、ぽつぽつぽつと
がらんどうに色を添えてゆく、良くないことだと感じてはいるが
愛しいものでは別にないから
悪戦の前に結論を投げる
投げられた結論は、ガラステーブルの端っこの
処理の甘いところでこめかみの辺りを切り大げさに血を流す
でもやつは痛いとも痒いとも口にすることはないから
俺はやつがそのまま死んでしまうのではないかと余計な気を揉んでしまうのだ
砂が張りついてからの数時間、俺の気分はほんの少し
ざらざらしたままで過ぎる
落ちて失ってしまったもののことはもう思い出せない、きっとそうなって初めて失くしたと胸を張れるのだ
それを人は誇りというのだ、そうだ
誇るたびに愚行が増えてゆく
日記帳に糞色のペンで出来事を綴るみたいさ、聖者に憧れたわけじゃないが
もうすでに断罪されたみたいな
幻覚が目のはしでチラつくのは何故だろう
ベートーベンのピアノソナタの中に
金属工場のプレス機の響きを見つけることがある、きっと俺は武器になるほどに気の毒な
診察券をひとつ持つべきなのだ
誰もがそれ以上一言も口を挟むことが出来なくなる
最高に気の毒な詳細が記してある診察券を
俺は狂っちゃいないよ
俺は狂っちゃいないよ
俺は狂っちゃいないよ
俺は狂っちゃいない
幻覚の中から蝶がはみ出して、現実の中の電灯をよぎる、ほほ、ははは、と軌道に書いてある
ほほ
ははは
俺はそれを指でなぞった、余計な鱗粉をたくさん吸い込んだに過ぎなかった
口の中で蝶の命が舞う、それはやがて唾液で墜落してゆく、ああ
それは生きていられない場所なんだ
幻覚の蝶の鱗粉は
生きていられない場所を選択してしまった
幻覚なのに墜落した、幻覚なのに
なすすべもなく死んでしまった
センチメンタルに過ぎて俺は腹を立ててしまう
手当たり次第に破壊したくなる衝動に駆られるが
何かを破壊しながら詩を書くことなど到底出来やしない
破壊し、破壊し、破壊し、墓石
埋葬の手順を間違えないように黙読している
友達が言っていたんだ、埋葬を省かれるととても哀しい気持ちになるって
だから俺は埋葬の手順を間違えないように黙読している
そうしている間にも概念的な胎内で砂はザラつき
口腔で鱗粉は墜落してゆく
墜落には墓石は立てられないよね、ああそれはそうだよね
どうすることも出来なくなって手を合わせた
何に向かって、誰に向かって祈るつもりなのか俺には判らなかった、いや
祈りということがここに何をもたらすのかということも理解してはいなかった、だとしたらそれは
ショーウィンドウをきれいに磨きすぎることとまったく少しの違いもない
誤差を愛せないなら詩を綴る必要もない
俺は言葉を使って誰かを殺したのか
俺は言葉を使って誰かに殺されたのか?
疑問符が乱立する森に足を踏み入れて
わざと哀しい思いをしようとしてるんだろう
上手に痛がるやつを愛してくれるやつは思ってるよりも大勢居るもんだぜ、みんな、
深刻な傷みのそばに居たいのさ
痛い思いをするよりも実際ドラマティックだからね
時には
そこで血を流してるやつよりも痛そうな顔をしてるやつだって居る、いいかい、それはずっと余裕があるからさ
痛み止めはないかい、痛み止めはないのかい、安いやつでいいからあるんならおくれよ
駄目なやつでもいいから譲っておくれ、傷みが無くなるんなら他のどこが駄目になったってかまわないから
どうせそうやってひとつずつ壊れてゆくんだから
無くしたものの数を数えてくれ、壊れた物の数を数えておくれよ
誰かが涙を流せるように余裕を持ってドラマティックに
余裕を持ってドラマティックに見えるところに並べておいてくれ
俺はそれに頼ったりなんかしないから
俺はそれに頼ったりなんか絶対にしないから
いつか砂が胎内に生やした根が
心臓の弁にきつく巻きついて壊してしまうけど
そこまでいったらもう傷みたなんてきっと呼べやしないから
だから俺そこに居るんだ
だから俺そこに居て
こぼれた血を
血を――












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