2009/1/18

執行猶予  










細かい砂つぶてを一身に受け続けるような目覚め
ちぎれる呼吸を統制しようともがきながら
窓の外に君臨する朝日の純潔さに
どうしようもない恥ずかしさを覚えてしまう始まり
俺の朝は裁きだ
いつでも
頭上に下るのは分の悪い判決ばかり
罪状認否、認めないものを数え上げながら歳を食った
オールオアナッシン
ナッシンの側の絨毯で身にならぬ飯を食う
古い日付の暦はみんな
空白を恥じて屑籠に逃げた


俺の電話を鳴らすのはいつでも誰かの不都合さ
穴埋めのために俺のIDが使用される
仰せのとおりに
思い通りに
具合の悪い傀儡となって御覧にいれましょう
望まれるだけの働きは完璧にこなしますが
それ以上はどんな油を注いでくれるかにかかってますよ
この世はミゾウユウの干ばつですから
傀儡だろうがなんだろうが
サバイバるためなら多少いやらしくもなりますよ
今月の明細まだいただいてませんよ
こちとら雀の涙できちがいの相手までしているんですよ


昼の長い休み、少ない昼食のあとで見上げた青い空は六道輪廻にまで繋がっていて
アッハ、獄卒が俺のこと手招きしてやがらァ
またそこからかい、またそこからなのかい
ずっと昔にも俺はそこに居たような気がするぜ、裂かれる傷みは何度産まれなおしても忘れられるようなもんじゃない
なあ俺あんたに会ったことあったかな?
こっちじゃなくてあっちの火の海の側あたりでさ
てめえの肉の焦げる匂いっていつまでもつきまとうよな
つまりはそれが罪ってもんの性質なのかなぁ?
なあ俺あんたに会ったことあったよな、もしかしたら互いに殺し合って
互いの肉を食らったこともあったかもな
残念だ、食らいついてみれば思い出せるかもしれないのに


ざああ、強い風が木々を揺らす音は荒れる海に似ている
こんなに強い風がいつまでも吹きすさんだのはいつ以来のことだろうか
凍った鼻先を犬のように鳴らしながら
俺の襟足を待っている運命のギロチンのことをぼんやりと考えた
寒い、冷たい
どんな季節にもやり込められてきたような気がする
記憶はいつでも傷みの度合いで色合いを保つものさ
なあ俺確かにあんたに会ったことがあった
どこだかまでは思い出せないけど確かにあんたに会ったことがあった
だけどどんなふうに話したのかまるで覚えてないんだ
俺の心の中にゃずいぶん前から他人が存在しないからさ
悪いね、だけど本気で謝る気なんかやっぱり毛頭無いんだ


何もない午後は眠い
睡魔にうながされながら白昼夢を見る
さようならという言葉をたくさん投げつけられる夢
隠したものがたくさん暴かれる夢
すべてのよりどころが皮を剥ぐように奪われてゆく夢
助けて、助けてと大事なものたちが泣いた
だけど俺はその身に届くことさえ出来なかったのだ
オーオー、アイデンティティは根本的に無力だ
暗闇で誇りを積み上げてみたところでそれがなんの役に立つのか
俺は小理屈をくっちゃべるだけのただの野良犬だ
なんとなく喋ることは出来ても得意なものは小便による陣地の確保だ
根元の濡れた電信柱以外に存在を匂わせるものが何も無い


ねえって、俺のこと覚えているかい
あんたと何度も食らいあったはずだぜ
あんなに悲鳴をあげて拒んでいたじゃないか
あんなに目を剥き出しにして俺の腕を食いちぎったじゃないか?
あんたの歯は、そうだよ、獣のように猛り狂っていた、そして朝日のように若々しかった
俺の血の味を覚えていないのか
顎を裂いて
喉笛から洩れるそれを嬉々としてずっと啜ったくせに
なあおい、俺のこと思い出させてやろうか
あそこでやってたみたいに食らいついてやろうか
俺は狂ってなんかいないぜ
俺は狂ってなんかいない、ただ少し記憶し過ぎてしまうだけさ


夢を見ていたんだろうか
夜が来るたびに目が覚める気がする
俺は結局どこにも進んではいないのだろうか
過去に縛られて渇きつつあるのか
左手の薬指に出来たひび割れだけがいつまでたっても治らない
流れない薄い血がいつでもうっすらと滲んでいて
その控えめな痛みはますます俺をいらだたせる
魂の無い世界にまで怒りを覚えて
やり場が無くなって胃腸に不快なものが溜まる
肉体を雑巾のように絞ることが出来たら
朝日のように純潔になることが出来るだろうか
今度地獄に落ちたら閻魔に頼んでみようか


俺を絞り出して俺でなくしてくれ
俺を絞り出して俺でなくしてくれ
繰り返す似たような死と生が俺の理であると言うなら
この魂を一度綺麗に殺してくれ
自分じゃそんな真似はもう出来そうにない、きっと一度試みて絶望したことがあるんだろう
俺を絞り出して俺でなくしてくれ
肛門からどんなクソが溢れるのか呆れるほど眺めてみたいぜ
だけど
俺が再びそれを食らい出したら閻魔はきっと腹を抱えて笑うだろうな
俺は欲しくなるかもしれない
俺は欲しくなるかもしれない
今度飲み込んだら





次は二度と出そうなんて考えもしないに違いないな








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