毎日には特別することがない  












胃袋から絞り出したが、たいてい
気持ちのいい言葉にはならなかった、そもそも
てめえの中で渦を巻いてるものなんて
薄々は判っていたはずだった
俺が見ていたのは同じ景色
俺が信じていたものは同じ感覚、いつでも
いつかは犬のようにくたばる自分
俺が言葉にしようとしているのはいつでも
そんな自分をなだめるための鎮魂歌
雨に塗りたくられた暗い朝に
世界の果てを見つけた気がしたよ
いつまでも消えそうにない眠気と
血縁のようにまとわりつく潜在的な疲れの中で
繰り返していたのはどんな歌だった、ねえ、ノーウェアー・マン
くしゃくしゃになりながらヴェランダで雀が叫んでいた
"これだけはどうしても言っておかなくちゃならないんだ"
とでも、言わんばかりの懸命な調子で、ああ
俺がもしも雀だったのならあいつとはきっと美味い虫がついばめただろうにな
おはようございます、と、テレビが言った
俺は挨拶を返さずにテレビを消した
愛想よくしたところでどうせやつは聞いちゃいないから
喋りたいことを一方的に喋り続けるだけで
さめざめとした空気、心を持った埃みたいな匂い
ささやかな匂いなのに全てに勝ってしまうのは何故
シグナルの青が恨みつらみを隠しているみたいに見える
いつでもベストな感覚とは言い難い
いつでもベストな感覚なんて到底言い難いが
ベストな感覚なんてきっと持て余しちまうに決まってる
トゥー・バッドなぐらいが
生き延びていくには多分丁度良いのさ
「いつでも笑顔で」なんて
「いつでも憎しみで」ってなぐらい不自然なこだわりだぜ
ランチはハンバーガー、理由は簡単、安いから
100円、200円の理由の為に
10人目に並ぶことを苦痛と思わなくなった
ああ、プライス・ダウン・ジェネレィション
安価なレシートで絶頂する致し方ない世代
胃袋から全部絞り出したけど
全く気持ちのいい言葉にゃならなかったぜ
企業秘密のフライド・ポテトの
フレッシュな油の匂いがそこら中に漂っただけだ
並んだ言葉をMのカップに詰め込んで、素知らぬ顔でゴミ箱に捨てた
「お客様、ケチなポエジーはご遠慮願います」
カウンターの店員はそんなこと言わなかった、そりゃあそうだ
ジャンク・フードがゴミの選り好みなんてしちゃあいけない
「ありがとうございました」と
慣れた優しさでそう呟いただけだ
毎日には意味がない
さて、毎日には本当に意味がない、うんざりするくらいに
本当は詩人こそがそいつをやかましく書かなきゃいけないのだけど
綺麗な空と明るい未来を
売り物にしてる連中ばかりだ
雨はしつこく降り続けている
おためごかしを強要されるぐらいしかやることがない仕事の中で
ぼんやり椅子に座って雨の音を聞いてる
梅雨が明けたって話を誰からも聞かなかったけれど
日本全国が言うにはだいたい明けているらしい
どうせ濡れるなら同じことだけどな
どうせ濡れるんなら全く同じことだ
どうしても濡れることが出来ない甘ったれのせいで
狭い道路は軽自動車で渋滞している
運転席に居る連中の大半は
携帯電話を耳にあてた若い女ばかりさ
撥ねてから気づくんだろう
轢きつぶしてから気づくんだろうな
自分の無分別について
雨の音が聞こえなくなって
空がだんだんと明るくなってくる
毎日には意味がない
毎日には本当に意味がない
おかげで俺が吐き出すものは
毎日同じビートで塗りたくられる
まあ、それも、致し方ないことだ
持って生まれたビートに嘘をつくことなど出来ない
きっと気持ちよく晴れた空の下でも
俺は雨に濡れたみたいな気分でいくつかの詩を読むだろう
それはいいことだ、そいつは多分すごくいいことだぜ
きっと
「今日はいい天気だ、頭の中まで天国だ」
なんて
そんな詩を読んだりするのに比べたらさ



さて、そろそろ帰ろう
まったく





毎日には特別することがない












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