2010/1/31

夜が来る(名前を付けられない喪失なんてまるで人生に付けられた名前みたいだ)  










自滅の感覚は本当は至極静かにやってくる
個性ってもんは柔軟だが時には堅牢な檻のようで
首吊り縄がゆっくりと頸動脈を絞めてくるような息苦しさは
俺である限り永遠不変の出来事なのさ
25半の足の裏じゃあ大したものは踏めやしないが
そういったことを認めるのには相当な時間がかかる
情熱が勝手に燃えさかる間にはその種のことに躍起になって
情熱では済まない時間に驚き戸惑う羽目になる
そのことについては俺だって特に例外というわけではなかった
ただ俺はそこに留まり続けただけさ
新しいフィールドは彼方から勝手にやってきた
今にして思えば俺はまるでそのことを知ってるみたいにじっとしてた
「動かない」というアクションだってこの世にはあるわけさ
そのことについてはもう少し考えてみる必要があるかもな



失意の感触は終始前後に揺らめいていて
だけどそこからは生き物の匂いなどわずかも感じられず
まるでそれは打ち捨てられた古い言語によって関係性を記録された誰も知らない法則によって動き続けているかのよう
我知らず記憶するそれのリズムは
心中に確かな不快感を残す
キッチンで読みかけている差出人不明の
長い手紙の最後の一枚は多分落書きで終わっている
そのとき初めて真実が脳裏で翻るのだ
ハナからそんなもんに手をつけるべきじゃなかったってことに
確信なんてだいたいにおいて
手遅れか見当違いとしたものだ
革命が往々にして
指導者以外を絶頂までには導けないのと同じ調子で



おまえの革命はおまえをどこか遠い世界まで連れて行ってくれるかい
そこにはえもいわれぬ優越感と達成感があったかい?
おまえが自分だけの弾丸を政府軍に向かって撃ち込みまくっていたとき
流れ弾に当たって命を落としたやつが何人いたか知ってるかい ?
新しい世界よりもいま守るべき幸せのために命を焦がしていたやつが居たんだ
おまえの栄光はそいつらを押さえつけてなお価値あるものだったのか
本当にそうだったか?
ほうらイデオロギーで火だるま踊りのその後は空っぽの地平であまたの亡霊とかくれんぼ
おまえの目の前でぺろりと舌を出してる男の顔が見えるかい
俺には全く間抜けなことに思えるが
恍惚と疲労で呆然としているおまえにゃ全然見えないらしいな?



さて俺は街角の小さな憩いの場に置かれた噴水みたいに失意が部屋の真ん中で吹き上がり床に溜まり
ネズミが車を回すみたいにくるくると循環しているのを見ている時刻は薄暮あたりでその光景はなんだか名前を付けられない喪失を連想させる
名前を付けられない喪失なんてまるで人生に付けられた名前みたいだ
誰かの選んだ赤い首輪をニュー・モードの襟巻きみたいにファッショナブルに巻いた黒猫が壁の上で夜を呼んでいるように見えた
ずっと眺めているとそいつが不意に俺の方を見た
俺は気まぐれをおこしてそいつに話しかけた
おまえは夜のコンダクターで俺はおまえの背中にいる聴衆
出来れば心地よいセレナーデで明日の朝まで眠らせておくれよ





やつは確かに俺を眺めてひとときにやりと笑ったが
それが約束の証なのかは俺にはてんでつかめなかった










夜が来る








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