リフレクション(鏡像に風穴)  









化石を敷き詰めた絨毯のうえで胡坐をかいているような心境でおれは真夜中にこの部屋に打ち込まれた用途不明の一本の杭だった、外ではここ数週間の決まりごとのように雨が降り始めていて、濡れながら冷えていく時間はまるで二度と浮上出来ない潜水艦が深海へと消える映像を連想させた、そんな静寂はもしかしたらすべての欲望を叶えてくれるかもしれない、きれいさっぱりと手放せる、そんな意味合いで…密閉型のヘッドフォンの中ではインプロヴィゼイション・ノイズが流れている、思考を遮断するためのチョイス、表層のおれを千切りにしていく切迫したスピード、時々はそんなものがないといちばん陰鬱な刃物がキーボードに向かう袖口から覗いてしまう…安定を求めないために先へ進む、完成を求めないために先へ進む、いつのまにかそんな傾向が産まれていた、おそらくは、始めてまだ間もないころから―習性のようなものだと言えば話は早いだろうか?荒野にひとつずつ小さな石を投げ込んでいくような出来事の羅列、おれのビートを息づかせてくれる連続的な現象…きわめて衝動的な連なりには一見関係性は希薄に思えるけれど、どこかをひとつ取り替えてしまえばもう成り立たない、そんな流れを持った羅列、おれ自身を語るための、ある種のリズムに裏打ちされた流れ…叩きつけられるようなペインティングにも似た…ボーダーラインのハッキリしてる色など塗りつける必要は無い、小奇麗に仕上げようとすればするほどそいつは現実味を無くしていく…子供のように描ける大人の画家がそんな世界じゃ正しいもののひとつだ、衝動は瞬間的な思考の連続によって研磨され、糸のようにもつれながら最もいい形を求めていく、それはお定まりな文法によって成り立つようなものじゃない、瞬間的に変化し続けるものに食らいついていけないのなら、そいつは少なくともいまおれが必要としているものじゃない、ひとことで終わるものなんておれは信用しない、それはたとえば楽譜を持ってない奏者や、言葉を持ってない詩人がやるようなことさ…見なよ、やつらは指先が痺れるほどなにかを描こうとしたことなどないのさ、だからいつも簡単に片付けようとするんだ―そうして瞬間瞬間の流れを見出して、糸を流し込んでいく、それが変化するさまを見ている、それがどこへ行くのかなんておれ自身にも判らない、そしてそれはたぶん、どこへ行き着いたのかということも理解出来ていない、少なくともしばらくの間は―消えてからはっきりと思い出すことの出来る水溜りのようなものかもしれない、でもそんなことにこだわるような時間なんてそんなになくていい、ひとつが終われば新しいもうひとつが始まるからだ、すべては捨てていくように進めるのがいい、重要な意味はあらゆるタイミングを利用して残っていこうとするものだ、そのときにしか記録出来ないものの数々さ…意図して語るべきものを持たない瞬間のレコードだ、そんなものがおれを生かし続けてきた、笑っちまうほど懸命になってそれは記録され続けるのさ、時々、こうして思い出したようにね…インプロヴィゼイションとは偏屈な正直者がもっとも真っ当に語ろうとする行為さ、いや、迷宮をショートカットする配管のようなものかもしれない、だとしたらそんなものはただの人間には気づくことは出来ない、だから躍起になるのかもしれないな、スピードを求めるのはもしかしたら、そこをすり抜けようとする意志なのかもしれない―さあ、もっと撃ち込んでみなよ、溜め込んだ弾をあらいざらい、装填されたものがなにもかも無くなるまで撃ちこまなくちゃ…自分のままで居ようとすればそれだけのことしか語れないさ、表層をぶっ飛ばすことだ、表層を吹っ飛ばして、いちばん底にあるやつが出てこざるを得なくなるまで引鉄を引き続けるのさ、殴り続けた壁に拳のあとが少しずつ広がっていくように、叫び続けた喉から漏れた血が地面に溜まりを作るように…本当にやって見せなくちゃ納得出来やしない、吐き出されたことのない言葉はその奥にあるもののことを知らない―ここでいいという地点もまた存在しない、そしてそれが最も重要なことだ―さあ!風穴は開いた!そこから見えた景色を語ることからつぎのことは始めればいい…









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