Inorganic(性質など関係ない)  







俺の無機質を食う
お前の無機質を食う
俺の無機質はスイートで
お前の無機質はデリートだ
俺は気に入らないものには手も付けないが
お前はまずいものでも残せない性分だ
ずっとそうだった
そして
これからもそうだろう

俺の不均一を食う
お前の不均一を食う
俺の不均一は粒状で
お前の不均一はどろりとした半固形だ
俺は矛盾の姿を知っているが
お前は矛盾をあるべきではないと思っている
ずっとそうだった
そして
これからもそうだろう

食らったものたちが胃袋のなかで蠢き、形を変えていくさまを
幾種類もの筋肉の動きで感じながら生きたことがあるか
それはお前の思っている知とは違うものだ
お前の言う知とは抽斗を綺麗に整頓出来るとかいうことと同じことだ
俺は血の動きで知る
お前が知らぬまま流している血の動きで

食い尽くされた皿の上には
書かれることがなかった詩のような空白が乗っている
見えるものには片付け辛いシロモノだ
こともなげにそれをシンクに持っていくのは決まって
いままで目にしてきたどんなことをも
深く考えたことがない世界の奴隷たちだ

空っぽのテーブルが語ることはなにもない
そこにはなにかが用意された形跡はないからだ
しいて言えば片付けられた過去が少しの間
雨のあとの景色に漂う
薄い霧のように流れていくだけだ

見ろ、お前の目の前に広がる景色を
それを空白と取るも何かの準備と取るもお前の自由だ
選択と結果はイコールではない
どんな道をどんなふうに進もうと、結局
お前そのものが深層で求めているなにかに近付いていくだろう
見つめようとすることさえやめなければ
断ち切ろうという決意さえしなければ…

すべての食事が終わったあと、食卓は二度と準備されなくなるだろう
シンクはがらんどうを約束され、二度と片付けられることはなくなるだろう
定義すら意味を失くす世界がそこにはあり
もしかしたらそこは永遠に
閉じられた扉になるかもしれない

さあ、目を閉じろ
なにを食らおうと生きていくことが出来る
飲み込んで
それがどんな作用を及ぼすのか
あらゆる感覚のなかで確かめるといい
そこには制約はない
生きようとする本能があるだけだ
本能が選んだものが細胞に染み込んでいくさまを
感覚のなかで確かめるといい

蠢いているか?
奥底で
片隅で
忘れられた記憶のなかで
飲み込んできたいくつもの
いくつもの愛おしい破片
緩み、形を変え、溶け込み、混ざり合って
お前の未来の一部と化けていくものたち
あたたかな色も
つめたい色も
等しくお前を生かしていく
いつかまた出会うだろう
初めて出会うみたいに
抑えた調子の挨拶を交わして…

そうしてお前は
俺の無機質のことも少しは知ることが出来るだろう








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