バッド・アティチュード  




















さあ、とくと御覧あれ、なに、遠慮は無用だ、その辺の連中よりも、俺は見られることにはずいぶんと慣れている、もしもそういうことを気にしているのなら、君、本当に、少しも気など使う必要はないんだよ、特に関係のない相手に対してそうであるように、露骨に無遠慮に眺めていただいて一向に構わない、そもそも、俺はある種の覚悟でもってこの世界を生きている、そのことについて特別詳しく語る気はない、それは俺の個人的なスタンスというものであって、俺の中で完結していればいいだけのものだ、スタンスを殊更に語るのは、政治家か、あるいは、そいつらを叩きまくる連中がすることだ、そして、そんな連中とは一生涯、俺は関わる気はない、実際、そんな世界に興味を持つことはないだろう、この世がどんなに美しい世界であれ、どんなに醜悪な見世物であれ、俺は俺の人生を生きるだけなのだから…ほら御覧よ、この俺の内臓は君らの知ってるものとはずいぶん違ってしまっている、これはいつからかそういうものになってしまった、いや、勘違いしないで欲しい、病とか、そういう類の話ではない、回りくどい説明で非常に申し訳ない、けれど、世の中には、非常に湾曲させたりしなければダイレクトに伝わらない内容というものがあるのだよ、君がそれについてどれだけ知っているか、俺にはわからないけれどね、なに、これもスタンスの下りの中に押し込んで、聞いたような聞いてないような、朧げな記憶の中にでもとどめておいてもらえればいいよ、その程度で全然問題ない、もしもそれが君にとって必要なフレーズなら、あるとき君の記憶の壁を突き破って脳髄に突き刺さってくるだろう、ああ、初っ端から話が逸れてしまった、とかく詩人というものは、次から次へと思いつくままに喋り過ぎる、たったひとつの言葉だろうと、眩暈がしそうなほど書きつけられた言葉だろうと、それが書こうとしているものは同じなのにね?まあ、だけど、これは、あくまでも俺がそう思っているというだけのことなのだけど、参考までにひとつ話しておくよ、それはさ、言葉そのものを信じているのか、詩という形態を信じているのか、そういう違いなのさ、わかるかい?俺は言葉など信じてはいない、言葉それ自体は、部品のようなものだ、それをネジに例えるなら、誰が見たって同じネジだろう、でも、それをたとえばネジ本来の目的で使用せずに、テーブルいっぱいにばら撒いたら、それはもしかしたらネジでありながらネジでないものに見えてくるかもしれない、回転させれば小説にだってなり得るんだ、つまりはそういうことなんだね、俺が信じている形態というものはさ、もちろんそれはいくつもの意味を持つことが出来る、あえてネジというものにこだわることも出来るし、ネジであることなどどうでもいいといった見方をすることも出来る、ネジ以上、ネジ以外の意味を、同時にいくつも持つことが出来るんだ、そんなことのためにいつもいつも指先を動かしているせいか、俺は時々詩を書くという行為を、自分を解剖しているようだと感じることがあるんだ、内臓なんてたとえを使いたがるのはそのせいさ、自分の腹の皮膚を鋭利な刃物で慎重に裂いて、内臓を引き摺り出しているみたいだと感じる、そのとき聞こえる音や、指先に残る感触のことを、センテンスに変換しているんだって、つまりそれは、俺という思考のホルマリン漬けみたいなものなのさ、俺の部分的な死体だ、煙が出るくらいに稼働した、ある種の感覚の部分的な死体なのさ―俺はそれに理由を必要としない、これは何度も書いてきたことだ、なにかしら自分にとって意味のあることだからそれは作り出されるのだろうし、長いこと作り続けることが出来ているのだろう、それ以上どんな意味付けが必要だというんだ?余計なことを話したがる連中が多過ぎるんだ、プリンの作り方の話ばかりして、いつプリンを作っているのかわからないような連中、ウンザリするほど居るだろう?作り方は作り方であり、作ることは作ることだ、それは一見同じことのように思えるけれど、まるで違うふたつのことなんだ、同じだよ、君、そんなもの誰も納得したりしない、もっともらしい話が大好きながらんどうの頭蓋骨がカラカラ言いながら集まって来るだけだ、そんなやつらの仲間入りを果たしたいのか?俺は御免だ、吐気がする、高い服を羽織って、高い人間であるみたいな振る舞いをする道化には用がない、とにかく俺は、なにかを書き続けなけれならない、内臓を引き摺り出して、青褪めた顔でにやにやと笑いながらそれを両手に持ち、そこらの連中に差し出したり臭いを嗅がせたりして、喜ばれたり首を傾げられたり、鼻で笑われたりするのを楽しむだけだ、さあ君、少しは理解出来ただろう―それがどんな道だったかなんて、歩いてきた人間にしか語れないものなんだよ。














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