耳の傾け方を習うのは何よりも難しい  
















眼球のピントは崩れ
右目と左目があさっての方を見る
世界は歪んでいる
その目には確かにそう見える

交通課の事故処理ばかりを目にした一日
救急車で運ばれる誰かの呻き声
深刻そうな顔して見物する野次馬
誰から憎めばいいのか分からない加害者

安い昼飯は胃袋に落ち着き難い
プラスチックみたいに消化に時間がかかる
化合物に育てられた世代
オートマチックな思考回路

俺はずっと
要らなくなった枕を刺している
枕は綿色の血を吹きながら
どうすればいいのか分からず泣いている

命無きものたちの墓地みたいな街
煤けた道路でドランカーが眠っている
遠目でなら死体と区別がつかない
よう、ハッピーマン、お前の遺影それでいいよな?

駅前広場でスケボー転がしてるガキどもを
片っ端から転がしながら
交番に被害届を出した
ちょっと世の中ってもんを教えてやっただけさ

よく鳴る硬質のタイヤ
よく喋るやつぐらい神経に触る
噛み過ぎたガムを銀紙で包んで
ごみ箱に預ける一日の終わり

最終電車のアナウンスは安堵した車輪の響き
利便性の為だけに生まれてきたわけじゃない
彼らだって性能だけを求められるばかりの毎日は
部品以外に摩耗してしまうなにかがあるのかもしれないな

もう誰も居なくなったホームは
数時間だけの廃墟
美しい風が通り過ぎていく
俺はメロディを口ずさんでいる

アーケードの中で二時間ばかり
人を待つふりをして詩を書いた
口元を隠してイヤホンを突っ込んだ連中は
集中治療室から逃げ出してきたみたいに見えたよ

ニュースです
ニュースです
ニュースです
あちこちで囁かれる新しい脅威の噂
昔からの死が蔑ろにされる
今死んだやつにしか興味が無い
いつだってみんなそうさ
トレンドなんだよ
新元号元年に生まれる
赤ん坊と同じようなものさ
生まれてくる命に珍しいものなんかないのに
キャッチコピーが夢精してそこらに飛び散ってる

コソコソと俺の腹の中を探るやつら
出歯亀みたいな真似しては正当性を主張してる
知らねえよ
まともな態度を覚えてからおいで、お猿さん

洗濯の間流してるFMから聞こえる
チャート上位の曲たちにはまるで名前がない
たったひとりの誰かが書いたみたいな詞が
違う名前のアーティストの歌から乾いた泥みたいに落ちてくる
みんな感動して涙を流すんだってさ
きっとあいつらの涙腺にゃ蛇口がついてんだよ
テレビで流れるものしか信じないでいると
いつのまにかそんな症状が心を汚染してしまうのさ
特効薬はないぜ
ひとつでも確かに
生きるということを追いかけることが出来なけりゃ

気付かないか?
いつぞやの津波からこっち
たくさんの人間が死ぬことがデフォルトになってる
地球は俺たちに飽き始めたのかもしれないぜ
本能のなくなった生きものは
なにもかもを奇形化させちまう
おぞましい姿で辺りをうろついて
物見遊山ななんとかのミコトどもをがっかりさせてる
天変地異なんて手を使わないで
俺にひとこと言ってくれりゃ
トレンチコート・マフィアのモノマネでもして笑わせてやれるのにな

なに、同じことだよ
幸せになりたいってことは
どこのどいつだって同じなんだ
戦えないなら逃げた先でそいつを見つけるしかない
分かるだろ、それが世間ってシステムだ
貨幣価値みたいに
人生を決められるっていう呆れたプログラムさ
頭が空っぽになって
よくある言葉で埋め尽くされるんだ
不特定多数に寄り添って手を上げるやつらは
ただちに治療の必要があります
こちらまでお越しください
脳天からポエジーを注射してあげましょう

チョコレートを食って
インスタントコーヒーを飲む
けたたましい音楽が
リラックスさせてくれる時だってあるさ

三年前に見た夢のことを突然思い出す
時々そういうことがある
特別記録することはないけど
二年後くらいにもう一度思い出したりすることもある

寝床は冷たい
季節のせいじゃない
そうだろ?
毎日そこで眠っているんだからよく分かっていなくちゃおかしいさ

生きていることは不確定要素だ
現在になんか自信を持つもんじゃないよ
二本脚で歩き出したその瞬間から
俺たちには前例がないんだぜ

停滞している場合じゃない
どこだって行けるはずじゃないか







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