プールの水は何色でも構わない  













粘ついた舌ですべてを容赦なくなめつくすような雨がようやく上がったあと、機銃掃射のような太陽の子らが跳躍を繰り返した、俺は脳味噌を安い匙で掻き回しては言葉を拾い、左官工のように投げつけては撫でつけた、問題なのは素材じゃない、どれだけ特出したモチーフがあっても、上手く使えなければなんの意味もない、どこかひとつ、大事なフレーズだけが浮き出てしまうようでは、他の部分は要らないということになってしまう、すべてを語ろうとしないことだ、たった一行や、数千の文字で、語れるものなどそんなにないことを理解するべきだ、それは必ず書ききれない、必ず取りこぼしがある、必ずなにかを忘れている、そこにこだわるべきではない、それは意地になって仕上げてはいけない、呼吸をするように並べられなければならない、けれど、気を抜いたものであってはいけない、チャンネルは必ず確実に合わせられていなければいけない、力ではない、エキセントリックなセンスじゃない、企画力ではない、知識や経験によるものでもない、ではなんだ?それは無理なく開かれた瞼だ、その中の水晶体でとらえるもののすべてだ、見えるものをそのまま言葉に変えればいい、いいかい、大事なことだぜ、素直さは率直さと同じではない、奇妙に入り組んだ感情や景色を解きほぐして再構築することは素直さではない、それは表現者のエゴに過ぎない、俺は表現者としてのランクなど必要としていない、俺が必要としているのは、俺が知っているものがどれだけそこにあるのかということだけだ、解かれることのない存在のまま、どれだけ映しだされているかというそのことだけなんだ、なんのために書いている、と聞かれることがある、知らない、と決まって俺は答える、もう理由など必要ではないのだ、どれだけ、現象として意味を持っていられるのか、表現者の価値などもともとそこだけなのではないのか?と近頃はよく考えるんだ、いいかい、結果とは成功のことじゃない、ましてや、社会的な認知度とか、名声のことなんかでは有り得ない、自分が見つめたものがそのままそこに在るかどうかだ、俺にはもうそれ以上のことは必要じゃなくなった、どうせ、すべては連続する瞬間だ、それはいつまでも続くものじゃない、ある日突然細糸のように途切れてしまうものかもしれない、もしもそれこそが自我だというのなら、俺は出来る限りそのそばで生きるだけさ、もう憂いてもしかたがない、もう儚んでもしかたがない、希望や、情熱の為に身を震わせても意味がない、いいかい、このすべてはそれとは関係がない、一見それはすべての理由のように思えるかもしれない、ものすごく正しい理由のように思えるかもしれない、でもそんなものにはなんの意味もないんだぜ、いいかい、先行する結果がそこに在ってはいけない、先頭を走るのは必ず純粋無垢な衝動でなければならない、そこには方向性があってはいけない、そこにはどんな意味付けも存在してはならない、でなければそのあとに続くもののすべては嘘になってしまう、俺は嘘つきになりたくない、だからどうでもいいことはどうでもいいままに片づける、理由ではない、水は流れに好みを持ったりしない、自分の好みで地平を選んだりしない、投げ出された場所でいちばん効果的なルートを流れるのだ、だから海になることが出来る、そう思わないか?欲望は天井を知らない、いや、天井が見えない衝動こそが本当の欲望なのかもしれない、俺は本当の欲望の中で、更新される現在に震えていたいのだ、これに脳味噌は必要ない、いや、もちろん意識的な分野でということだが、ごく一般的なくくりの中での脳味噌など必要ないというべきだろうか、そもそも脳味噌の役割など理解している人間など居るのかね?実際の話俺たちにとってみれば、それは漠然とした脳味噌的なものという認識でしかないはずだ、だからつまりは、そのままで構わないということさ、とかく最近の連中は脳味噌に線を引きたがるよ、いや、科学者を馬鹿にしてるわけじゃないけどね、つまりさ、定義づけってとても危険なことだよって話なんだ、ほら、知ってるってやつほど融通が利かないってあるだろう、俺が言いたいのはつまりそういうことさ、知るというのは、クローゼットを洋服や小物でいっぱいにすることとは違う、ましてやその中にあるものの値段がいくらだとか、そんな話じゃないはずさ、本当に知るということは、その中にあるそれぞれが自分にとってどんな意味を持っているのかということでなければいけないはずだ、拳銃も弾も山ほどある、でもいざって時にどの弾倉にどの弾を込めればいいのか分かっていないのなら、そこにはなんの意味もないんだ、なあ、これは与太話みたいなもんだ、だけどまったくふざけてるだけってもんでもないぜ、言ったろ、俺は、ガチャガチャしたものはガチャガチャしたまま差し出すのが好きなんだ。











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