ロックンロールはだれのため  














叫びは暗闇に飲み込まれ、おれたちは
財布を落としてきたみたいな心もとない気持ちでいる
神さまは金持ちにだけ整理券を配り
おれたちには聖書みたいに硬いパンを施すだけさ
適性検査を受けて戦いに赴くやつらもいるけれど
おれたちは生まれたときからそこに放り込まれている
銃火器や戦車はないけれど
死傷者の数じゃどこにも負けてない
差別も侮蔑もあたりまえにあり
おれたちみんな、人間はみんな牙をなくした肉食獣みたいなもんだと知っている
正規の放出がなされない野性の本能たちは
くだらない動機でひび割れたパイプから漏れ出す水のようにぽとぽとと落ちるのみさ
ともだちはわずかな金を下ろしに銀行に立ち寄ったさいに
警官に疑われてブタ箱に連れて行かれた
帰ってきたとき右目の周りに大きな痣を作ってたけど
おれたち誰もどうしたんだなんて聞かなかった、だって
みんなそういうもんなんだってとっくに知ってたからさ
初めに受けた傷のせいで
銀行に銃口を向けたやつもいる
いまじゃ生きてるのか死んでるのかもわからない
どこかの刑務所で右手を失くしたって
最後に耳にしたのはそんな噂だった
誰もが工場に出かける、朝早くに目覚ましに叩き起こされて
朝食を食う暇もなく、作業着に着替えて
バスは一秒の遅刻だって待っちゃくれない
運転手は早く家に帰ることばかり考えている
部品を飲み込む音、部品を吐き出す音、部品を研磨する音
部品をどうかする音でどうにかなりそうになりながら
はめ込んで、固定して、ボタンを押して
外して、はめ込んで、固定して…
いつか腹立ちまぎれに考えていたことなんかとっくに忘れちまった
休憩と昼休みと、終業を告げるベルだけを待ちながら
すっかり覚えた工程を傀儡のように繰り返し
太陽の光が天窓を通り過ぎるのを祈る
バスを下りたら友達が誘ってきて
同じパブに出かけて眠くなるまで飲む
アブリルだのブリトニーだのの聞き飽きた歌をバックに
ケチャップを落とした塩っからいフライドポテトと
ただただ流し込むビールに胃袋は悲鳴を上げる
あいつ健康診断で病気が見つかったってさ、へえそうかい
いつか相部屋になるかもな、おれたちの誰もが
たいして変わり映えのしないことをやってるんだから
部屋に帰って
ラジオをつけっぱなしにして過ごす
スプリングスティーンが流れるとイライラする
あいつにはおれたちよりもずっと明日があったじゃないか
たとえそれと引き換えにたくさんのものを失ったとしてもだ
それに触れたこともないおれたちよりゃよっぽどマシってもんさ
なにかを選ぶとか選ばないなんてことじゃない
そんなチャンスさえもらえない人間もこの世にはいるんだ
ポジティビティは、そうさ
小数点以下の人間を切り捨てるものだろ
だったら恨み言でもなんでも吐いて
生にしがみついているほうがマシさ
また明日は来る、日は昇る、そう
お決まりのフレーズだけど
なにもなくたってそうなる
なにもなくたって
なにもなくたって
ときどき、本当にときどきだけど
自分がすでに死体なんじゃないかって思うときがある
なにかの間違いで心臓が動いているだけじゃないかってね
ロックンロールは鳴り響く
あいつらは
健康診断だって優秀な成績でクリア出来るに違いない
それはだれのため
それはだれのため、そうさ
おまえの名前に金を出してくれるやつのためだろう
ギターを破壊しろ、そうさ
定時にここを離れることが出来たらね
バスは一秒の遅刻だって待っちゃくれないんだ







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