その世界の爆発はいつだって生臭いほどの赤みに満ちている  



















動物の在り方を身に宿し牙の位置を整える、吠えるなら大声で、囁くならいっそ口を閉じて、己の心を恥じればいい、自分で処理出来れば人目にさらすこともない…とはいえ、それが出来るくらいならハナから真っ当な手段を使っているだろう、真っ当じゃないから正当性を欠いている、考えるまでもないことだ、まあいい、死ぬまで背中で好きなことを言っていればいい、それは誰をどこへ連れていくこともない、進化も退化もない場所でただ同じ光景が繰り返されるだけのことだ、俺はちょっと勘弁な、そんなことにマジになってる時間なんかないもんで―足元はいつでも必要以上に沈んでいる気がする、蝙蝠の糞に足を突っ込んでいるみたいな居心地の悪い感触と湿気、ただでさえ梅雨時だっていうのに…ん、もしかしたら、腐乱死体みたいなものを踏みつけているのかもしれないね、嫌な予感がするから裏返すのはやめておくよ―俺の足元に置かれる死体の心当たりなんて一個しかない、理屈を通すための人生はクソだよ、そう思わないか?このところ俺はずっとそんなことばかり考えているよ、解答欄から式を辿っていくみたいな人生になんかなんの興味もない…そんなことをしても、人生かけて知ったかぶりをやり通すくらいのスキルしか得られない、だってそうだろ、そいつは混沌を知らない、混沌を潜り抜ける、覚悟どころか入口に立つ気さえない、だからあらかじめ予測出来る方向へと進んでいく―ぺっと唾を吐いて俺は、混沌が見える窓を開けて首を突っ込んでみる、そこには先に踏み込んで死んだ者たちが亡者となって待ち構えている、途端に群がって俺の首根っこを掴み、引き摺り出そうとする、俺は脚を突っ張って壁に引っ掛け、それを耐え切る、こんな映画観たことがあったな、もう、三十年くらい前の話さ…誰もが逃げ場所を探している、窓をぶち割って、外へ出て行きたがってるはずさ、そうするためにはまず、こいつらを排除しなければならない、俺は連中を振り切り、一端自分のテリトリーに戻る、そして武器になりそうなものを探す、手ごろなハンマーがある、俺は勢いづいて窓の外に躍り出る、気配を感じてのろのろと寄ってきた連中の頭を片っ端から叩き割る、血と、脳漿と、骨の欠片に塗れながら突破する、知ってるか、意外と滑るんだ、体液だのなんだのは…俺はいつでもスニーカー・タイプのセーフティーシューズを履いている、鉄が入っているからね―蹴っ飛ばすだけでもどっかの骨を割ることくらい出来る、腕が疲れたら蹴りを入れて突き進んだ、目的?目印?―そんなものはない、だからこそここは混沌と呼ばれているんだ、混沌の中を進むには、ただただ突っ切るという思いだけがあればいい、それさえあればなにかしら手に取ることは出来る、俺は走る、走る、殺しながら走る、意識が走るのは楽でいい、なにしろ息が切れることがないから…走ろうと思えばどこまででも走ることが出来る、混沌どもを叩き殺しながらとにかくそこを突っ切る、建物の敷地内を抜けると二車線程度の舗装道路がある、ああ、そうか、と俺は思う、いま分かったのさ、オープンワールドゲームを初めてプレイした時にどうして懐かしいと思えたのか…俺はそういうコンセプトをすでに知っていたんだ、俺は舗装道路を走る、国籍の分からない車が何台か通り過ぎる、ひとりで運転しているやつはこちらに一瞥をくれるだけだが、二人以上で乗って居る連中は必ず俺を指差して笑い声を上げている、俺はやつらの知っている種類の人間ではないからだ、最後尾のタクシーに俺はハンマーを投げつける、ハンマーはブーメランのように回転しながらリアガラスを叩き割り運転席を目指す、タクシーはコントロールを失い壁に激突して爆発する、暗闇を生臭い光が照らし、混沌どもがゆらゆらと集まってくる、俺はタクシーの破片の鋭利な部分を手に取り、やつらの首元を切りつける、炎と血しぶき、炎と血しぶきが世界を染め抜いている、混沌―俺は自分の額に十字架を彫る、無秩序にそれはつきものじゃないか…ふいに後ろから羽交い絞めにされ、前からもうひとりが襲い掛かって来る、俺はセーフティーシューズのつま先でそいつの顎を蹴りつける、顎を砕かれたそいつは意味のない言語を喋る、ハハッ、ポエティックだ、俺は笑いながら、そいつの頭が無くなるまで踏みつける、面白くなってきたな―俺にはいつだってすべてを殺す用意がある。









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