天国はここ、って歌ってたやつもここからはいなくなったし  










一番愚かなことは
放課後の中で学んだ
一番美しいもののことは
禁忌の中で学んだ
一番罪深いものは
日常に転がっていた
一番悲しいものは
自室の本棚で震えていた

引戸の滑りが駄目になったのは
小さな傷のせい
出て行こうとするたび
咎めるような音を立てる
かかとを鳴らしぼくは出て行く
休日の
兵士のような
中途半端な気難しさで

チャイコフスキーの悲愴が
頭の中に張り付いてる午後
時代の中にはいないものを
おざなりな
現実を鼻で笑うためのものを

土に還れない
蝉の死骸を蹴飛ばしてしまう瞬間
ぼくは
侵略者の後悔を知る
そんな話をしたって
多分きみは理解しやしないだろう

古い神社へ向かう
長い階段の途中にある
草ぼうぼうの
錆びたブランコだけの公園のベンチは
けれどこの小さな街をを眺めるには最高で
ラジオで
久しぶりに聴いた
キャロル・キングの歌を思い出していると
ここはそんな
メランコリックな場所じゃない、と
汚い声の鳥が甲高く鳴いた
そうだね
きみみたいなやつが
ここにはたくさんいるもんな

出したくなかった手紙を
ふと思い出して
切手を張って投函してみたら
きみのもとに届くのは
迷わなかった時に比べて
どれだけ
違いがあるのだろう?
違いなどない、と
きみは言うだろう
そして、ぼくは
そんなこと決して信じないのさ

野良犬がしばらく着いてきた
とくべつぼくに
なにかを期待しているという感じでもなかったから
ぼくもべつに追い払ったりはしなかった
自動販売機で
飲み物を買うために立ち止まると
ちぇっ、やっぱりそうかという顔をして
うなだれてどこかへ行ってしまった
あいつは
ぼくらの世界にすっかりなれてしまったんだな
犬なんて、とくに野良犬なんて
もっと無邪気でいたってだれも咎めたりはしないのに

いかがわしい映像ソフトの店で
無数のタイトルを眺めて歩いた
ときどき
すごく茶目っ気のあるフレーズがあって
それがぼくを
少し愉快な気持ちにさせるのだ
そんなものを探して
棚を練り歩いてるやつなんて
たぶん
ぼくだけだろうけど
いや
ぼくだって
たまにはそうじゃない時もあるよ
そうさ
ギラついてね
まぁ、そんなことはいいか

一番退屈なものは人生だし
一番魅惑的なのもそうだ
ぼくは終始
否定をしながら肯定し
憎みつつ愛しながら
その過程と
根底にあるものを
見失わないように努め
(そのほとんどは)
くだらない用事を片付けながら
のんびりと構えて
天国のヒントを待っている

幸福も不幸も
健康も病も
肯定も否定も
愛も憎しみも
ある程度は知ったさ
ぼくはそう
へんな言い方をすれば
かみさまとでもいうようなものに
こっそりと話しかける
あとなにが必要かね
それともそれらを
全部捨てちまえばいいのかね?

横断歩道を渡る
待てない奴らを待たせながら
空はまだ晴れてるけれど
ちょっと
雨のにおいがする
時代の中にはいないもの
うん
そんなものを参考にするのは
たしかに、ちょっと


ずるいのかもしれないけれど










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