いろいろと噂のラーメン屋、『八兵衛』。
ラーメンにそれほど思い入れのない私としては選択肢に入ってなかったんですが、行ってみました。
ネットの世界ではあまり良い話は聞きません。しかし、匿名のネットの世界は何が真実か分かりませんものね。自分で食べてみるのが一番かなと思ったわけです。
西葛西でそこそこ飲んだ後に思いつき、暖簾をくぐって見ました。
一渡り品書きを見渡して、頼んだのは特製らーめん。
『特製』とあるからには、店主の思い入れのあるラーメンなのだろうと言うのが頼んだ理由。
海苔5枚、チャーシュー5枚、メンマ、茎若布(?)と煮玉子と言う具が入っています。
出されるとすぐに気になるのが香り。ものすごい鰹の香り。魚介系と言うよりは鰹系ですね。モロに鰹です。飲んでみると出汁自体は、当然の事ながら、鰹節だけではないようす。ほんのりとした甘味も感じます。
秋刀魚にしろ飛び魚にしろ焼干しにすると上品で仄かな甘味が出るものなのですが、この甘味が焼干しの甘味なのか野菜の甘味なのかはわかりません。全てが鰹に飲み込まれている。それくらい鰹の風味が強い。
煮玉子、チャーシューは好きですね。波動軒ほど味が強くなく、麺を食べるときの邪魔にならない。
スープを覆っているラードも重くは感じません。
醤油味のスープに細麺、魚の旨味タップリなのは嫌いじゃない。
しかし鰹が異常に強調されたこのラーメンでは、好きになれないと言う人がいるのも分かります。
全体のバランスが取れていないように感じます。店主の個性かもしれませんが、やはり鰹が強すぎて食べ手を選ぶ。
大多数の人はクセが強すぎると感じるのではないでしょうか。
鰹節は知れば知るほど先人の英知を感じる食材です。カビ付けという手法でイノシン酸を最大限に増幅させて、日本人の旨味に対する欲求に応えてきました。味と言うものは舌にある味蕾と言う味覚センサーが捉えるもの。そして先人はこの味覚センサーを騙すことも知っていた。
鰹出汁と昆布出汁を合わせる事がそれです。鰹節のイノシン酸と昆布のグルタミン酸が合わさると、相乗効果で7〜10倍の旨味を感じると言われています。1+1=2ではなく10になると言う訳です。(これは例え話で、実際の混合比率は10対1だったかな?)味覚センサーが騙されるわけですね。
相乗効果を利用する分、使用量が少なくなって食材が持つクセを抑えられる。鰹や昆布、シイタケにも鶏がらだって匂いやクセがあります。クセや雑味は抑えた方がいい場合が多い。だってメインの食材は鰹節じゃないんですから。
スープ自体が一人歩きしがちですが、ラーメンだって麺類。麺類は麺を食べるものだと思っています。だから、麺を美味しく食べるためにスープの出汁が存在するはず。蕎麦だってそうです。蕎麦ツユはあくまでも蕎麦の味を引き立てるもの。いくらツユが美味しく出来ても、蕎麦を殺すようじゃ意味がない。
その観点からすると、この特製らーめんの突出した鰹の風味はバランスが良いとは思えないわけです。
ただ、こんなことは店主だって当然分かっていることでしょう。
やはりこの店の味と捉えるべきなんでしょうね。
何をもって特製と謳っているのか聞いてみればよかった。
これで950円はちょっと高いかな。
ところが、辛味噌はイケルと言う人もいる。
別の日に、やはり飲んだ後ですが、辛味噌らーめんも食べてみました。
出てきたラーメンには鰹のクセがそれほど感じられません。
スープを口に含むと胡麻の香りが食欲をそそります。
味噌の香りも強すぎず、辛さも口から火が出るほどではありません。味噌と出汁の旨味、辛さがじわじわと押し寄せてきます。味噌と胡麻と言う癖の強い食材で、ベースとなっている鰹の風味に蓋をしている。個性の強いラーメンですが、結果として旨味が調和している。
それとも辛味噌らーめんはスープが別なのでしょうか。
これ、結構いけますよ。
最初は坦々麺かと思った。その印象を話してみると、当然なのだけど、坦々麺とは作り方が違うと言う。そりゃそうだよね。味噌ラーメンなんだから。でも胡麻の風味が非常によくマッチしているんです。
麺も特性らーめんよりは太く、コクのあるスープに合っていると思います。
この辛味噌は、はじめはラーメンで出すつもりがなかったそうです。つけ麺のタレとして作ったとのこと。つけめんのタレだともっと辛味噌が濃厚になるのですよね。
でもスープで割ったから丁度良い味になっているような気がしてならない。
私にはこれぐらいの辛さと濃さが良い。
酒が入ると塩気が欲しくなる。辛味噌でほんのり汗ばむとアルコールが抜けていく気がする。そして味噌に含まれるコリンと言う物質にはアルコールを代謝する効用があると聞きます。酒を飲んだ後にこのラーメンを食べるのはいいかも。
と言うか、飲んだ後だからこれだけ美味しく感じたのかな?
醤油ラーメンは私には合わない。具の茎若布も私には邪魔。
でも、この辛味噌ラーメンはそんなに酷評されるような代物ではないですよ。
偏った評判には裏も表もあるものだと感じた次第。
この次は茎若布抜きで頼んでみよう。

そう言えば餃子も頼んだのでした。
水の入ったコップと比べると、小振りなのが分かりますよね。小振りなくせに餡が詰まってコロンとした餃子です。
野菜タップリの餡ですが、汁があふれるタイプの餃子ではありません。
末っ子の餃子と似ていますが、末っ子よりも野菜そのものを味わう感じですかね。
こう言う餃子は久しぶりに食べました。

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