神田外語学院の近くにある洋食屋さん。
JR神田駅から歩いてすぐ。住所は
千代田区内神田2−14−3。

前まで行って看板を目にしないとレストランとは分からないような入口。入口まで行けばテイクアウトのメニューや、ランチメニューが目に入る。
その入口もアルミサッシそのままで、決してレストランのドアと言う感じではない。いかにもシェフのプライベートキッチンと言う感じ。
ここのシェフである鈴木さんは京橋、汐留、八重洲にあるドン・ピエールの総料理長。
ドン・ピエールは銀座1丁目の小さなレストラン『
ペリニィヨン』から始まった。今もあるその店は本当に狭い。狭いが美味しいものに溢れている。そして料理もさることながら、サービスも一流だった。店の窮屈さを気付かせないようにカバーしてしまうサービスなんて、そうそうお目に掛かれるものじゃない。
ここ数年伺っていないが、以前はワインリストにロマネ・コンティを載せていた。洒落たジョークのようなその値段は、1本100万円。店側だって頼む客がいるとは思っていないだろうね。
ペリニィヨンを立ち上げた人達はみんな銀座レカンで一緒だった。そして『ラ・ソース古賀』で触れたソースの神様、井上氏がレカンから独立し自分の店を立ち上げたときに支配人として切り盛りしていた人が、ペリニィヨン開店の中心人物だった。
サービスのプロが中核となって出来たレストランだから、当然サービスはシッカリしている。その時々の客の気持ちを察してくれるレストランとなった。
店は小さいけれど、シッカリとしたフレンチを出していた。サービスだけじゃ、銀座でレストランは続けられない。料理も素晴らしいんです。
銀座が軌道に乗ると、フレンチの技を存分に活かした洋食店を京橋に出す。京橋ドン・ピエールは銀座ペリニィヨンよりもカジュアルに利用できるメニューが揃っている。そして洋食屋なのにサービスはレストラン張り。
ちなみに門前仲町駅の近くにあるケーキ屋『ペリニィヨン』もこのグループ。
鈴木さんも銀座レカンを経て京橋ドン・ピエールの総料理長となっている。
『
ラ・ソース古賀』も銀座レカンと井上氏と言う交錯する接点を持っているが、出てくるカレーは全く違ったもの。
鈴木さんのカレーは欧風カレーの王道のようなカレー。
品数限定のハンバーグカレーを頼みました。
ハンバーグカレーはランチで1500円しますが、北海道産黒毛和牛カレーなら880円です。
真中にはフライドオニオンが乗せられ、左にベーコンの乗ったハンバーグ、右に半熟の目玉焼き。典型的な定食屋スタイルのワンプレート。どこにでもありそうな一皿。
しかし食べてみると、どこにでもありそうな一皿じゃない。
フォークを跳ね返すような弾力を持ったハンバーグ。切ると肉汁が流れ出ると言うタイプではありません。脂の旨味じゃなくて、肉の旨さを味わうハンバーグ。
カレーを絡めて口に入れると、スパイスと香ばしい肉の香りが広がります。カレーはハンバーグのソースになっている。
カレーとご飯を混ぜて食べる。層の厚い旨味と物凄く深いコク。
バターで炒めた小麦粉、ニンジンなどの野菜、じっくり炒めた玉葱、丁寧に取ったフォン。それらが作り出す旨味とコクをとことん追及したようなカレー。
手間と時間が抽出した旨味は凄いの一言。
このカレーもソースだと言えるかもしれないが、そのソースが支えているのはカレーの具。肉を美味しく食べられるカレーソース。ソースに入っているソテーされたキノコなんかも素晴らしく美味しい。
欧風カレーは好きじゃないなんて言っていましたが、これは文句なく旨いです。
鈴木さんは厨房の奥で日本手拭を頭に巻きながら鍋を振っている。
壁こそ塗りかえられていますが、文房具問屋の事務所を金をかけずに改装したような店内。
ビデオやテレビが置いてある。
厨房スタッフが注文も採る。
神田の街が好きで『神田に昔からある蕎麦屋のような洋食店を作りたい』と始めた店らしい。鈴木さんのマイキッチン。
でも、店としてはまだ馴染んでいない感じもする。
厨房スタッフは『京橋ドン・ピエールの鈴木シェフ』の技を勉強する為にこの店に入ったのだろう。注文の採り方もなんかフレンチ然としている。
テイクアウトは別にして、店内で食べられるものは京橋で見たことのあるものが多い。値段もほとんど同じ。
飾り気のない内装、シェフの想い、スタッフの接客、メニューと値段、それぞれがまだシックリと噛合っていない感じ。
チープな内装に文句をつける気なんか更々ない。普段着で鈴木シェフのカレーを食べに来て楽しめる雰囲気であれば、それが一番良いのだから。
ただ、シェフの想いが一つの形となって一体感を持つようになるには、もう少し時間がかかるのだろうなと思った。
でも、しょうがないか。
スタッフにしたって、そこで手拭巻いているおじさんはあのドン・ピエールの総料理長なんだから、ピシッとしちゃうよね。
テイクアウトの黒毛和牛カレーとドライカレーは600円。
店内での食事は11時半からだが、テイクアウトは10時から可能。
このへんにも『お客さんが喜んでくれる普段着の洋食屋』を作ろうとしているシェフの気持ちを感じます。
そして出されるカレーは間違いなく美味しい。
同じくフレンチの技法を用いても、ラ・ソース古賀とは対極にあると言ってもいい味作り。片やシャープでクリアなカレーに対して、旨味とコクに包み込まれるカレー。
プロの人達は凄い、と改めて思った。
家の近くにこんな店があったら、どれほど嬉しいことだろう。

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