なっと〜♪ え〜〜なっとう〜〜〜〜♪
いつ頃から納豆売りはいなくなったんでしょうか?
移動販売と言うとメロンパン屋だとか弁当屋を思い浮かべるようになりましたが、昔は食材を売りに来ていた。
納豆、豆腐、魚、アサリ、野菜などなど。
大きな籠を背負ったおばあさんが、隣の浦安から電車に乗って都心の家々に直接魚を売りに来ていた。
まだ八百屋、魚屋、豆腐屋、米屋、酒屋などが健在だった時代。
酒屋、米屋は今でもしっかりとしている店を見かけるが、良い八百屋は少なくなった。
安い八百屋はいくらでもある。
でもキュウリを何種類か置いてある店なんか、とんと見かけなくなった。
スーパーのキュウリは共選と言って、品種が混じって売られているところが多いそうだ。夏に旨い物も冬に旨い物も一緒にして年中売っている。品種によって美味しい時期や食べ方が変わるのは当り前なのだが。
これは言ってみれば、赤身と称して本マグロ、バチ、キハダ、ビンチョウなどが混じってワンパックで売られているのと同じ。
考えてみれば変だよね。
たまに時間があるときは東陽町の八百屋まで出かける。
この店の親父さんは八百屋のプロだ。
もちろん野菜に関してもプロなのですが、それを売る商売人としてもプロフェッショナルなのだ。
消費者を上手く騙くらかして儲けているという意味じゃないですよ。
同じキュウリでも、漬物用のキュウリとサラダ用のキュウリがきちんと分けて置いてある。
安いキュウリを探している人が買い易いように、安いキュウリは高いキュウリの場所から離して置いてあったりする。『あら、あの家は安い方を買うのね』なんてアホなこと言われやしないかなど気にせずに手にすることが出来る。
『今日、生で食べて美味しいのはどれ』と聞けば、即座に3〜4種類の野菜を指してくれる。
お客さんに最高の状態で届くように、農家が包装する段階から関わっている。
しかし某有名高級スーパーのように物は良いけど値段も高いという品ばかり扱う訳じゃない。
先日見つけたカリフラワーは1株100円だった。
すっかりブロッコリーに押されて消費が伸びずに作る農家が少なくなったのか、どこの店でも250円以下のカリフラワーなんか見たことがない。今ごろから旬を迎えて安くなるはずなのに。
あまりに安いので3株ほど買ってしまった。
これでスープを作ると美味しいんだよね。
あと、この日はカブが旨かった。生でかじっても旨かった。
こういう店がほとんど無くなってしまったのは残念だ。
豆腐は
豆元を見つけたから良いけど、納豆売りはもういない。
普段の納豆はスーパーで買うしかない。
たまにデパートに行くと藁苞納豆を売っているが、これが高い。
もともと納豆菌は藁に付着していて、煮豆を藁に包んで持ち運んでいたら納豆になったとも言われている。詳しいことは忘れてしまったが、納豆は藁に包まれている方が特有の匂いが抑えられるのだそうだ。ところが発泡スチロールのパックになると匂いが抑えられずにどんどん出てくる。
それによって消費者が離れるのを怖れ、納豆に細工をして匂いが出ないようにする。その細工によって本来の旨味が変わってしまうので、今度は旨味を増すような別の細工をする。
こうして本来の納豆から離れたものになっていってしまう。
確かに技術革新によって安くて旨い納豆がいつでも手に入るようになったんだから、それはそれで善しとしましょう。
善しとはするけれど、やっぱり食べてみると違うのよね。
藁を解くと出てくる納豆。
これを2束も解いてから一気に粘りが出るまで混ぜる。椀の中が糸だらけになるほどひたすら混ぜる。それからカラシを加えて、また混ぜる。カラシが納豆特有の匂いを抑えてくれる。
充分に糸を引いたら醤油を垂らす。そしてまた混ぜる。空気を含ませるように混ぜる。
充分に糸を引いて空気を含み、変な表現だが、モリアオガエルの卵みたいになったら出来上がり。
藁苞納豆は発砲スチロール納豆とは全然風味が違う。
大豆の味がする。豆のコクがある。出汁なんかで解かなくても充分な旨味がある。
この納豆とご飯だけで充分美味しい食卓になる。
もちろん、ご多分にもれず、インチキ藁苞納豆もあります。藁苞の中にビニールを敷いて納豆を入れた物など。形だけ、パッケージだけ気分が出てれば良いじゃないかという代物ですね。
これじゃ何のための藁苞だか分かりゃしない。
昔と違って、毎朝ご飯に納豆と味噌汁なんて言う羨ましい食生活を送っている家庭はほとんどないでしょう。しかも、たまに食べる納豆の大半はスーパーの納豆でしょう。だから藁苞納豆が高いと言っても、毎日毎回贅沢する訳ではない。
たまに藁苞の納豆を食べるくらいのささやかな贅沢はしたい。
その時に、本物の藁苞納豆を食べることは今となっては贅沢なことなんだと再確認させられる。
飲み友達が水戸方面に仕事で出かけると聞くと、いつも藁苞納豆を頼んでしまう。いつも何種類もの納豆を買ってきてくれる。それがどれもこれも旨かったら幸せなんだろうが、なかなかそうはならない。
でも中にいくつか大豆の味が濃い納豆がある。こういうのに当たると嬉しくなる。ちょっと贅沢な気分だ。
些細なことで贅沢気分になれると言うのも悪くはないが、なんか寂しい気もする。
納豆ぐらい、いつでも本物を味わいたいものだ。

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