明月庵田中屋、上野藪そばと牡蠣を使った蕎麦を書いておきながら、いわな屋が後回しになってしまいました。
実は写真がなかっただけです。どうせまた食べに行くのだし、そのときに写真を撮ってから書こうかなと。
冬の蕎麦も最後ですね。
今年は梅が咲くのがずいぶんと遅れましたが、それでも3月も下旬になれば桜前線の話題になりますから。あと一週間と言うところでしょうか。
食べ物には好みがあるので、私が美味しいと思ったものが他の人にはそうでなかったりします。もちろん逆の場合もあるし、美味しかったはずの料理が日によって違いが出ることもある。
常に同じような味にまとめられるのもプロの料理人だと思いますが、その時々の食材の状態にあわせて調理できるのもプロ。技術がないために味が定まらないのは困るでしょうが、いつも同じ味ではいけないときもある。
そんなこんなもひっくるめて食事を楽しもうとすると、選択肢も広がるし、案外わくわくするものです。今日はどんな感じかなって思いながら暖簾をくぐるのも良いものです。
私にとっていわな屋の蕎麦はまさにそんな感じ。
石臼が置いてあり、打ち場も見える。水の代わりに韃靼茶を使う。
郷里の岩魚を食べさせ、きりたんぽなどの秋田料理を出す。
頑張っている店です。
でもどういう訳か蕎麦との相性がピタッと決まることが少ない。もう少しこうだったら好みにピッタリと合うのに、と言う印象を持つことが多い。だから逆に、今日はどうかなと楽しみにもなる。
ひら野に牡蠣蕎麦があると言うコメントを頂いたことがあったのだけれど、私が伺ったときには残念ながらありませんでした。豊川にもない。
もしかしたらいわな屋にはあるかなと伺ってみると、季節蕎麦として品書きに出ていた。
いわな屋の品書きはひらがなで『かきそば』。
この日のかきそばは、これまで頼んだものと少し違う。ねぎは緑の部分を使っているし、三つ葉とエンドウが入っているせいで、全体の彩りが緑っぽいです。
こういう彩りのかきそばは珍しいですね。
これは今回だけで、以前は白ネギと牡蠣が具材として入っていたので、他の店と見掛けはあまり変わりませんでした。
店主が作るときと女性が作るときとは違うのかな。
大振りの牡蠣が5個入っています。
そしてこの牡蠣がプックプクで、いかにも美味しそう。
牡蠣は炙ってありません。なのでツルンとしています。
牡蠣の蕎麦と言うと、浅く焼き色をつけるぐらいに炙って火を入れる方法を採っている店が多い。どうするかは店主の考え方次第だし、客側にも好き々々があるでしょう。
炙るほうが香ばしさが加わると言う人もいるし、炙らないほうがジューシーさが失われなくて良いと言う人もいる。
私はどちらも好き。
この冬に食べた牡蠣蕎麦のうち銀座明月庵田中屋と上野藪そばは紹介しました。それぞれの美味しさがあるのですが、牡蠣の旨味が一番濃かったのは実はいわな屋。
いわな屋の牡蠣の旨味は濃厚で、磯の香りが残っている。
温められた牡蠣は丸々として、旨味も膨らんでいる。
これで牡蠣フライを作ってくれたらどんなに美味しいだろうなんて考えてしまう。
いわな屋の蕎麦の中では天ざるの次に高いのですが、これだけの牡蠣を使ってくれれば全然高いなんて思いません。そのくらい、牡蠣を食ってると言う満足感があります。
そのぶん蕎麦との釣り合いを取るのは難しい。
甘汁は濃い口醤油を効かせてシッカリとしたタイプのつゆだが、そうでなくては牡蠣に負けてしまうのだろう。もしかしたら青ネギを使ったのも三つ葉を入れたのも、牡蠣とのバランス調整かもしれない。
考え過ぎかな。
蕎麦の風味は繊細なもの。
蕎麦の香りは牡蠣の磯の香りにはどうしたって負けてしまう。
種をぐいぐい押し出して主張させたものが好きか、とにかく蕎麦を中心に据えた方がいいかはそれぞれの好み。
個人的な好みは蕎麦中心の方なのだが、いわな屋の牡蠣の旨さには抗し難く何度も食べた。種物なのだから牡蠣が主役で良いと言う人にとっては、先に挙げた2店よりも十分に牡蠣を堪能できます。
牡蠣好きには堪らない蕎麦ですね。

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