このブログを始めてから最もコメントが多かったのは
デリー・ダルバールでした。ダントツにコメントが多い。あの外観を見て、どんな店だろうと思っていた人が多かったと言うことでしょうか。
ちゃりさんのコメントに
クイック・スパイスを試してみたとあったので、私も頼んでみました。
クイック・スパイスはデリー・ダルバールの店主が販売しているミックススパイスです。インド人シェフが休みを取るときに、経験の浅いコックでもレストランの味を維持できるようにと作られる混合スパイス。
インド料理のカレーはフライパンで作ります。
ランチ時は別として、ディナーでオーダーされるカレーは作り置きではありません。炒めタマネギとトマトやスパイスを合わせたものをグレービーと呼びますが、これは予め作っておきます。オーダーが入ってからタマネギを炒めるのでは時間がかかりすぎますから。下拵えのようなものです。
そこに軽い煮込みを加えたり仕上げ作業を入れてフライパンで一食ずつ料理していく。
グレービーを作る段階でも、スパイスを投入する順番やタイミングで味が変わってくる。料理によってターメリックから入れるものもあれば、チリから入れるものもある。仕上げ用のスパイスもガラムマサラだけでなく乾燥ハーブのようなものもある。それらをどのくらいの量をどのタイミングで入れるのが最良なのか判断する必要がある。
経験の少ないコックにはそれが出来ないために、シェフは休み前にその時点で最良の混合比率のミックススパイスを作るわけです。これなら経験が少なくとも手順を覚えれば、シェフの味と同じとはいきませんが、最も近くなるようにできるという訳です。
購入したのはコルマとチキンですが、今回はコルマを作ってみました。
コルマカレーはカシューナッツと乳製品を使ったリッチなカレーです。
デリー・ダルバールのメニューにスペシャルビーフカレーがあります。
この店のビーフカレーはローガンジョシュと言うムガール帝国料理。胡椒の風味が立ったローガンジョシュは、他の店のものとは一線を画しています。スペシャルビーフカレーは、このローガンジョシュを日本人の嗜好に合うように生クリームを使ってマイルドにしたもの。
スペシャルビーフカレーもリッチでマイルドな印象があるカレーですが、店主はクイック・スパイスのコルマのほうがスペシャルビーフカレーより上だと言っていました。
ただし『上』と言う意味は、高級であるとか味が良いとか言う意味ではないようです。
インド人が食べても旨いと唸るようなインド料理を作っていきたいと言う店主にとって『上』と言うことのようです。つまりコルマカレーはイスラム教徒であるムスリムの料理であるが、スペシャルビーフカレーは日本人向けにアレンジしたカレーであると言うこと。
具体的に言うとローガンジョシュに生クリームと茹で卵を加えてしまった時点でローガンジョシュではなくなる。しかしコルマカレーはカシューナッツと生クリームの使い方がムスリム料理の基本から外れることなく活きていて、インド料理として胸を張ってインド人に出せるものに仕上がるようにしてると言うこと。
もともとローガンジョシュをマイルドにしようとしたのは、お客からの要望があったから。それはそれで試行錯誤しながら満足できるものを作り上げたのだから、店主自らが味が落ちるものだなんて言う筈がありません。
マイルドなカレーが好きな人はローガンジョシュのアレンジ版とマイルドなインド料理と両方あるから、好きな方を選んでくださいということなのでしょう。
店のメニューにはコルマカレーはないので、頼むことは出来ませんけどね。
作ってみて驚いたのは、スパイスの量が少ないこと。
4人分のスパイスが大さじ一杯ほどしかありません。
本当にこれで味の乗った料理が出来るのかと思うほど少量です。
日本におけるインドカレーの老舗
新宿中村屋のチキンカレーは、4人分で中村屋特製カレー粉を大さじ5杯ほど使います。
さらに驚くのが、こんな少量なのにスパイスの香りが部屋中に充満することです。これはスパイスの質が違うとしか思えない。新鮮なスパイスの挽きたてでなければこんなことはない。
市販のパウダースパイスとは明らかに違う。
こんなに少量で本当に満足なカレーが出来るのだろうかと半信半疑ながら作ったのに、出来上がりは写真の通りです。
色目が非常に綺麗です。
ターメリックの黄色とトマトの赤、クリームとカシューナッツの白が良い比率で混じっている証拠。
普段私が作る黄土色のカレーとは違います。旨そうでしょ。
一般的なインドカレー本によるとクミン、コリアンダーなどを大量に使うようなレシピになっている。アクセントを加えるためのシナモン、クローブ、オールスパイス、メースなどのパウダースパイスは、クミンやコリアンダーも含めてどれも茶色系です。
なのでどうしても茶色系のカレーになってしまう。スパイスを過剰に使えば使うほど濁った茶色になる。
パウダースパイスの使用量が少なくて済むのなら、素材の色を綺麗に出すことが出来る。そのためには新鮮で良質なスパイスが必要になるわけです。
大さじ一杯で香りが不足することなく美しい色目が出せるのは、クイック・スパイスが良質なスパイスを使用している証拠なんです。
スパイスと一緒についてくるレシピ自体は、いたって普通のインドカレーの作り方です。
それでも何ヶ所かに『おや?!』という所があります。水の量だったりトマトを入れるタイミングだったりと細かい点なんですが、これで味が変わるから不思議ですよね。
極端に言うと、インドカレーはタマネギを炒めて具材をスパイスと水で煮るだけの料理。これだけの単純に見える料理ですから、素材の良し悪しと調理法の違いがストレートに出てしまう。
だからこそ作っていて楽しい。
今回のチキンコルマカレーには
阿波尾鶏を使いました。徳島の地鶏ですが、普通の鶏肉屋でも売ってます。肉にコクがあって、噛み応えがある鶏。
グラム200円を超えますが、家で食べる分だけなのでそれほど負担にならない。
出来上がったカレーは素直な美味しさがありました。
ブイヨンを使わないので旨味が足りないかと思いきや、まったくそんなことはありません。カシューナッツと生クリームでコクと旨味は十分出ます。それとミキサーにかけたトマトをシッカリと水分が飛ぶまで炒めて、トマトの旨味を凝縮させるのがコツですね。
クイック・スパイスはかなり利用価値がある商品だというのが私の印象です。
HPを教えてくれた方に感謝です。
いいものを見つけました。

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