週末に出かけましたが、桜が満開です。
桜並木を見ると、一気に春が来たという晴やかな気分になりますね。
この日は知人が教えてくれたラーメン屋に行こうと決めてました。
溺れてしまいそうなほどの旨味の濃いラーメンが主流になってから、ほとんどラーメンを食べなくなった。すると知人がこの店ならば私の好みに合うだろうと教えてくれたのが、茅場町の八島という店。
住所は
日本橋茅場町16−1。

東西線茅場町駅を降りてから歩くこと5分。桜の木のある公園には花見の場所取りをしている会社員がいる。何とも長閑な日和です。
小学校を過ぎると桜並木があり、道の両側の桜は満開。
その桜並木の脇に八島はあります。
店に入ったのは昼の営業も終わりそうな2時前。
店内の客はおらず私一人。一人だったのでカウンターに座ろうとすると、もうこの時間からお客さんは来ないので広い席に座ってくれとのこと。
テーブル席に座り、エビ塩ワンタンメンをお願いする。
知人の話からするとエビワンタンメンなのだが、エビ塩とはどう言うものだろうと思いながら待つこと10分。出てきたのはやはりエビワンタンメンでした。
スープの色が美しく、香港や台湾の麺粥屋の蝦雲呑麺を思い出した。
この店の売りは
ひんぎゃの塩を使っているということ。
ひんぎゃの塩とは青ヶ島特産の自然海水塩。塩を作るときに平釜を火で熱して水分を飛ばし結晶を作るのではなくて、火山の地熱を使って作っている。その火山口のことを島の言葉で『ひんぎゃ』と言うらしい。
このエビワンタンメンは、そのひんぎゃの塩を使っているのでエビ塩ワンタンメンなのですね。別にエビ塩というものが存在するのではありませんでした。ひんぎゃの塩は八島の店でも売ってくれます。
出てきたラーメンは盛り上げた様な盛り付けになっていました。何気なく作っているのを見ていた時に、随分と丁寧に湯切りするような仕草が見えたのはこのためなんでしょう。
ちょっと珍しい盛り付けだけど、麺が玉になってしまう部分があるのが難点。
焼豚はシットリした煮豚のようなものではなく、硬めでやや乾燥した感じ。肉の旨味で食わせるのかと思いましたが、食べてみるとそうでもない。ちょっと貧弱かもしれない。
ただスープを飲んでみるとそれまでの印象がガラリと変わります。
鶏ガラとトンコツの旨味が半々という感じではあるのですが、それだけじゃなく何とも言えぬ美味しさがある。
これは塩のせいだけではありません。
確かに自然海水塩はまろやかでほんのりとした甘みを感じることが出来ます。精製塩に比べてミネラルを含んでいるから。よく自然海水塩の宣伝文句に調味料要らずなどと書かれていますが、如何にミネラル分が豊富でも調味料が不要なことはありません。やはり元になる旨味があってこそ。
ミネラル分はその旨味をうまく膨らませることはあっても、旨味そのものにはならない。
エビワンタンが入っているので、エビでとった出汁を効かせているのかと思いましたがそうではない。エビ出汁の場合はどうしてもエビ特有の香りがうつる。エビ出汁のようでそうではない、不思議な旨味があるんです。
その旨味がひんぎゃの塩によって活きている。
この店はラーメン愛好者の間では超有名店だけあって、ネットにたくさんのレポートを見つけることが出来る。帰宅してから調べてみたらわかりました。
旨味のもとはカメノテでした。
エビ出汁のようでエビの香りじゃない。
カメノテならば納得。
たまに寿司屋でフジツボを出してくれるところがあります。よく堤防なんかで見る小さなものではなくて、高さが5センチくらいある富士山の模型のような大きさのフジツボ。もちろん握りじゃなくて酒のツマミなのですが、これに吸い付くと仄かな海の香りと旨味がある。
カメノテもこのフジツボと同じく甲殻類です。貝のようでも貝ではありません。だからエビやカニと似たような味がする。貝柱のような筋肉質を食べる。見た目と違ってなかなか美味しいんです。
そしてカメノテは味噌汁とか吸い物にすると、ものすごく美味しい出汁が出る。関東から北の海沿いの民宿に泊まると良く出してくれたものです。
それほど珍しい食材ではありませんが、ラーメンの出汁に使うというのは珍しい。
鶏ガラとトンコツの出汁で作ったラーメンならば、いかにひんぎゃの塩を使おうが、ただの塩ラーメンでしょう。ところがカメノテの出汁を加えたことによって旨味に違った厚みが出ている。それも磯臭くなるほどは加えていないところがミソ。
美味しいスープです。
エビワンタンも評判がいいのですが、こちらはもう少しプリプリに仕上げても良いと思った。火は通っているのですがレアの状態にとどめてある。
よく出来た蒸エビ餃子は噛んだ途端にプツンとはじけ、エビの香りが口いっぱいに広がるものですが、そんなワンタンに仕上げてくれたら完璧に私好みになるなぁ。
もちろん蒸餃子とワンタンでは食感が違うものですが、プリップリッとしたワンタンを出すところもありますからね。
それでも八島のエビワンタンは、黒胡椒が効いていてなかなかのものです。エビの甘みが感じられます。
麺はモチッとした食感がある。やや柔らかいとの印象を受けるかもしれません。でも私はこれで良いと思う。ラーメンを食べているという気になります。これが極細のプツンと切れる硬めの麺だと、中国の雲呑麺になってしまいます。
中国人の店主は家常豆腐などの中華料理のツマミも出す。しかしこの店は中国の人が麺粥屋として開いたわけじゃない。もともとは日本人が神田で開いたラーメン屋。その方が他界して、従業員だった現在の店主がその遺志を引き継いで同じ店名の店を茅場町に出したと聞きました。
このラーメンは今は亡き先代の味。中国の麺粥屋の雲呑麺じゃなく、あくまでもラーメンとして仕上げているのではないかと感じました。
優しい旨味が体に染みていくようなラーメン。
やや塩辛いと感じる人もいるかもしれませんが、そこが塩ラーメンのいいところ。
コッテリしていないのが私には合っている。
次は醤油ベースも食べてみたい。かなり期待しています。

←ランキングに参加しています。クリックして頂けると励みになります。

0