今のところ、
西葛西ではダントツの蕎麦を出す。
西葛西駅前の通りをプールガーデンに向かって進むと左にカーブしていく。そのまま葛西中央通りを横切ってすぐ。
看板には『てんぷら そば ひら野』とある。住所は
中葛西7−11−7。
店の開店は1年半前だそうだ。
やや明る過ぎる照明とチープな建付けが気になるが、店内はまだ新しく気持ち良い。
まるでスナックのような、蕎麦屋には珍しいドアを開けると、テーブル席の奥の右側が小上がり。左がガラス張りの麺打ち場になっている。伺ったのは夜7時半を回っていたが、昼に行くと蕎麦を打っているところを見せているのかも知れない。
頼んだのは、かまぼこ、やきとり、天せいろ。
やきとりは蕎麦つゆがベースになったタレがあっさりとしている。くどくなくて好きですが、人によっては頼りないと感じるかも知れない。
天せいろのてんぷらは海老が2本、しいたけ、さつまいもなどが出てくるのだが、どれもうまい。
看板にてんぷらと書くだけあって、しいたけは肉厚なものを使っているし、さつまいもはホクホクとして甘い。
ころもは薄く、揚げ方は軽い。
個人的な好みなのだが、蕎麦屋のてんぷらは重くてはいけないと思う。ごま油だけで揚げるコクのある江戸前のてんぷらも良いのだが、蕎麦屋の主役はあくまでも蕎麦。あまりにシッカリとしたてんぷらは蕎麦の繊細な風味を殺してしまう。
蕎麦を引き立てるような軽いてんぷらの方がいい。
出色なのは海老。
海老の芯がほんのりと暖かい。
海老は火を通しすぎるといけない。海老のいい香りと身の甘味は適度に火を通したときに引き出される。
蕎麦は二八。ツユは辛口。
蕎麦の実の芯だけを使った御前蕎麦や一番粉を使った蕎麦は、高級感を出したり変り蕎麦を作る際にはいいが、風味や甘味にかける。ここの蕎麦は二番粉を使っていると思うが、風味も香りも感じられなかなか良い。
切りべらも細かく、エッジの立った細い蕎麦は喉越しがいい。何よりシッカリと腰が立っている。
よく『腰がある蕎麦』と言う表現を目にするが、腰があるというのは噛み切るときにむっちりした食感があるということ。腰があって良いのはうどんで、蕎麦に腰があってはいけない。田舎蕎麦は別だが、江戸前の蕎麦はもぐもぐと噛んで食べるものではない。
蕎麦でうどんの腰に相当するものは、なんというか、口に入れたときに歯茎の裏に当たる食感のようなもの。固いのとは違うのだが、そのキリっとした食感を『腰が立つ』と言う。
ひら野の蕎麦は腰が良く立っている。
ツユは辛口で、蕎麦にほんの少しつけて口にすると、口の中で蕎麦の風味が広がる。薬味には葱と山葵がついてくるが、これはツユに入れない方がいい。蕎麦を食べた後、蕎麦湯を飲むときに使った方が楽しめる。
店としての欠点は酒。
浦霞しかない。しかもお品書きの表示は『お酒』。純米とか、本醸造とか、銘柄なんか何も書いていない。蕎麦屋と酒は付き物だと思うのだが、
これほど酒に頓着のない店も珍しい。
私としては蕎麦を楽しむだけでなく、蕎麦屋そのものを楽しみたい方なので、酒とツマミは非常に重要なアイテムだ。しかし、あの立地では食事目的の客がほとんどであろうから、酒類を充実させてこだわったところで、それを感じて通ってくる客は少ないだろう。あのお品書きは、『店主は酒にこだわりはありません』といっているようなものだし。仕方がないと言うところですね。
お品書きの最後に『二八を超えた蕎麦』と書かれてあるが、どういう意味か聞いてみると、業者が作ったコピーとの事。主人は『そんな二八があるわけないじゃないですか、ねぇ。』と笑っていた。
西葛西でやっと見つけた、蕎麦のうまい蕎麦屋。
まともな天せいろや鴨せいろを食べるのに1200円や1300円は高くない。
鴨せいろの鴨は
蔵王地鴨を使っているとのこと。
冬のうちに食べておかないといけない。
行ってみようと思う方いますか?
いらしたら

へも投票してください。
私は蕎麦難民から脱することができたのかもしれない。

0