先日、カミさんと帰りが一緒になった。
たまには2人で飲んで帰るかと、バーに寄った。
家には子供たちが待っているのでそうそう遅くなることも出来るはずはなく、軽く飲んで晩ご飯の用意をしに帰ろうと思っていた。ところが話が弾んでしまい、気が付くと既に9時になろうとしている。
腹を減らしているであろう子供たちには悪いが、この時間から手の込んだものも出来ない。オリジン弁当で唐揚げでも買って、そのほかに簡単なものを家で作ろうとしていた。
怒られちゃうねと話しながら家のインターホンを押すと、次男坊がドアを開けてくれた。
開けてくれたのだが、エプロンをしている。しかも肉を焼いている匂いがする。
カミさんと顔を見合わせながら厨房に入ると、エプロン姿の長女がいた。
『お帰り』と言いながら肉を焼いている。
目の前には料理本が開いてある。
どうやら腹が減りすぎて我慢できずに、自分たちで生姜焼きを作り始めたらしい。
肉はどうしたと聞くと、買ってきたと言う。
冷蔵庫の中のものは私とカミさんがそれぞれに管理しているので、どの肉を使っていいものか分からない。だからマルエツまで出かけて買ってきたのだという。
テーブルの上には大皿にキャベツを刻んだものが広げてある。
焼き上げた生姜焼きをそこに載せて、晩ご飯のおかずにするようだ。
出来上がった生姜焼き。
長女と次男坊で食べるには量が少ないのだが、それを言おうとしたらカミさんに目で諭された。
そりゃ、そうだ。
子供たちが自分で買い物をし、準備をし、調理をして、後片付けから洗い物まで全部した。
初めて肉を買ったから、どのくらいの量を買ったらいいのかも分からない。
とにかく生姜焼き用と書かれたパックを買ってきた。
合わせ調味料は本の通りに作った。
親は一切口も出さなければ、教えてもいない。そもそも家にいなかった。
最初から最後まで全て長女と次男坊。
腹が減ったので、あれが食べたいこれが食べたいと話しながら、いっそのこと自分たちでやってみようかと言うことになったらしい。
出来上がった生姜焼きを自分たちで食べながら、もっとこうした方が好きな味になりそうだとか話している。量が少ないのだが、大喰らいの次男坊は文句を言うことなく美味しそうに食べている。
微笑ましい光景でした。
初めてやることは本を見てもその通りには出来ない。
出来る人からすれば『なんだそんなことか』と言うようなことを迷ったりする。
くっついている肉は広げた方がいいのか、いつ頃ひっくり返せばいいのか。
キャベツの太い葉脈はどうすればいいのか。切り離した方がいいのか。
『まぁ、適当にやってみよう』と出来上がったものを食べてみれば、ああした方が良かったのかと気付く。
それを面白いと感じてくれれば、料理好きになるだろう。
今は中食産業が全盛で、お惣菜は買って帰るものになってしまった。
忙しいときには大変便利だ。時間がないときには助かる。
でも、それに慣れきってしまうのは寂しい。
お母さんの味はそれぞれの家庭で違っていて当たり前なのに。
その日の気分によって味付けを変えたり出来るのに。
料理好きになってくれれば、その楽しさを知ってくれれば、将来作るであろう家庭は楽しくなるよ。
たとえ1人暮らしをしていても、いい趣味になるはずだ。
作りっぱなしは誰にでも出来る。
洗い物までしてこそ料理。
料理の真似事を始めた私にいつもそう言っていたカミさんは、翌日になっても嬉しそうな顔をしていた。
長女と次男の初めての料理。
記念に書きとめておきます。

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