
私もカミさんも忙しくて夕食の用意が出来ないときに、たまにオリジン弁当にお世話になる。
以前は一番弁当が多かったのだが、このところ味が濃くて何を食べても同じ味に思えて仕方がない。だから最近はオリジン弁当を利用するときが多い。
でも、どちらが美味しいかなどと言うつもりは全くない。その時々でどちらにするか決めている。子供たちは一番弁当のガツンとしたスタミナ弁当を食べたいときもあるらしい。
メトロの中のオリジン弁当の店頭には、その時々のお勧めを知らせる媒体が壁にかけてある。
マグロとイカの甘酢あんかけ、鶏肉と里芋の生姜煮などが、100g157円。安いよね。
当然、土用の丑の日が近くなれば鰻弁当が大きく宣伝されているなど、季節物もしっかりとアピールしている。
手軽に利用できるというのは忙しい人にはありがたいことだ。
そして時季によってメニューが変るのも、飽きがこなくて良いと感じるだろう。
手を変え品を変え、弁当屋も頑張っているのだな。
そんなことを感じながら何の気なしに見ていた。
・・・・が、あれ? なんだろう??
コシナガマグロ?
何だそれ?
そんなマグロいたっけか?
ビンナガじゃないの?
マグロにはいくつか種類がある。
一般的に美味しいと言われている順番に書いてみる。
筆頭に挙げられるのはクロマグロ。いわゆる本マグロで、マグロの王様。
11月から年明けが最も旨いが、値段もスゴイ。
次にインドマグロ。最近は数が少なく、赤いダイヤなんて呼ばれたりする。南半球で獲れるので、南半球が寒い時期、つまり日本では夏が旨い。
メバチマグロ。クロマグロは高くてそんなに食べられないから、関東で普通にマグロというとメバチマグロのこと。秋口になると、時期ハズレのクロマグロなんかよりよっぽど脂が乗って美味しい。
ビンナガマグロ。ビンチョウとかトンボとか呼ばれる、胸鰭の長いマグロ。脂の乗った時期に獲られたものを冷凍して、ビントロとして回転寿司が利用し始めて爆発的に売れた。
それまではツナ缶の材料だった。
キハダマグロ。関西でマグロというとキハダのことだが、関東ではキハダは『安い、まずい』の代名詞のように言われる。しかし5月頃のキハダは別物。全身にきめ細かい脂がまわった『脂キハダ』は、そのへんのクロマグロなんかより旨い。通常クロマグロしか扱わないような店も高値で扱う。
マグロって言うのはこの5種類かと思っていたら、他にもあったんですね。
タイセイヨウマグロとコシナガマグロ。
調べてみて初めて知った。
クロマグロは大西洋にもいる。ボストンとかジャンボと呼ばれる。
これはボストンに水揚げされたり、ジャンボジェットで築地に運ばれたりすることからついた呼び名。
太平洋のクロマグロと大西洋のクロマグロは亜種か別種か議論があるらしいことは知っていた。
だからタイセイヨウマグロと言う呼び名は聞いたことがあったが、クロマグロの別称なのかと思っていた。
でもタイセイヨウマグロと言うのは、このジャンボのことではないらしい。体長1mぐらいだって言うんだから、明らかに違う種類。
そしてコシナガマグロはインド洋から太平洋で獲れるらしいのだが、ビンナガと一緒にツナ缶にされるとか。体長も1mを切る小型のマグロらしい。
でも不思議なことに、このコシナガマグロについては写真が見つからない。
詳しい解説もほとんどない。
『コシナガの有効利用として荒節に使えないか』なんて言う文献がヒットするぐらいだから、生魚としては一般の食卓とはほとんど無縁のマグロなのだろう。
クロマグロの美味しさは独特の淡い酸味だ。
どこか血の味を思い起こさせるような酸味を持った赤身に醤油をつけて食べると旨い。だから身が柔らかく酸味のないビンナガは長いこと刺身用の『マグロ』として一般に流通しなかった。
でもそれは魚として不味いということとは少し違う。
マグロの刺身として料理屋で出すにはクロマグロと味が随分違うが、別種の刺身として食べればそれはそれで美味しい魚。
そこに目をつけた回転寿司業界はえらい。
みんなが持つマグロのイメージとは少し違うが美味しい魚だ。
そこでビントロと言う名で売り出した。
『マグロの種類が違うんだけど、なかなか美味しいマグロです』
こうして売れば嘘はない。
食べる方もクロマグロのイメージで食べないから、ビンナガの美味しさに素直に気がつく。
しかも価格が安い。
店は儲かり、客も旨いと思い、ビンナガも成仏できる。
コシナガもツナ缶の材料だったと言うことは、やはり身質は柔らかく、色目も淡白なマグロなのだろう。そうでなければ刺身用として流通しているはずだもの。
と言うことは煮たり焼いたりしてしまえばクロマグロの呪縛から解き放たれると言うことか。
有効利用を検証するような文献があるということは、漁獲高もそこそこあるが使い道が限られるために安い魚なのだろう。
それならば調理法や名称の見直しだけでも思わぬ広がりがあるかも知れない。
だって家計に優しいものね。
なにも本マグロばかりを食べる必要なんかない。
それぞれの魚にあった食べ方をすれば、美味しく楽しい食事ができるさ。
コシナガマグロも企業努力によって、ビンナガのように日の目を見るのだろうか。
かく言う私はいまだコシナガマグロを『それと意識して』食べたことはない。
一度食べてみよう。
ツナ缶好きだから、違和感なく楽しめるかも。

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