土曜日は暑かった。
恒例の築地買い物チャリンコツアーに出かけたのですが、とにかく暑い。
出かけるとすぐに飲み物を買うのが常なのですが、土曜日は信号待ちのたびに飲むものだから築地に着く前になくなってしまいました。
汗だくにならないように激走するのは控えたのですが、それでもかなりのもの。
さすがにこの暑さになると保冷バッグが必要です。
場内に行って持ち手つきの銀色の保冷バッグを買う。
最初に雑貨を扱っている店で聞いてみると、そこでは取り扱ってないと言うが、そこは築地の人情。
『おい、かぁちゃん。保冷バッグってカトウさんとこで売ってるよな。』
と店の奥に声をかけて他の店を教えてくれた。しかも行き方まで。
カトウという店で保冷バッグを買うときに、あの店でここを教えてもらったと言うと『そりゃ、築地はお互い様だから』とお母さんが笑っている。
なんかいい感じ。

とにかく暑いから物が傷むのが心配。昼飯を早めに済ませてから買い物をしよう。その前に売り切れないうちに茂助だんごに寄った。
暑いせいか、いつもなら売り切れている時間なのに団子が買えた。醤油と餡子の団子が入ったパックを2つ買う。
店を出てから気がついたのだが、団子の上に冷たい保冷材が乗っていた。たった2つしか買っていないのに。
団子の利益なんて高が知れている。2つしか買わない客にいちいち保冷材をつけていたら大変だろうに。
ここでも、なんか嬉しくなった。

昼飯は茂助だんごのすぐ隣。
中栄のカレーにした。
この店は大正元年の創業。既に4代目となっている。
いろんなメディアに出ているから、知らない人のほうが少ないでしょうね。
この店のカレーって、すごく懐かしい味がする。
子供の頃に食べたカレーの味。
辛口インドカレーと言う名前だが、全然インドカレーじゃないし、今の人達には辛くもなんともない。
でも、この店のインドカレーは1日で1000食以上売れる。
この数字は驚異的だ。
飲食業にバイトでも何でも関わったことのある人は分かるでしょうが、50回転もする飲食店なんて見たことない。普通の飲食店で悩んでいるのは『如何にランチを3回転させるか、何とか夜2回転超えないものか』とかいうレベル。
以前支店を出す話があったらしいが、先代に『今でも1000食作るので苦労してるのに、お前2000食もどうやって作るんだい? ロボット任せにするのかい?』と聞かれて答えられずに話は消えたらしい。
確かどこかのコンビにとの提携はあったと思うが、他に過剰に手を広げない。
それでもさぞかし儲かって蔵が建つだろうと思うと、そこはそうもいかないらしい。
だってカレーが一皿500円だもの。
しかも工場で作っているんじゃなくて、全て手作りなんだもの。
とは言ったって1000食も売れてりゃ、儲かるよな。
頼んだのは合いがけ。インドカレーとハヤシ。
左がインドで右がハヤシ。写真じゃ区別がつきませんね。
千切りキャベツがつくところが中栄流。
ハヤシはどういう訳かソース味がする。
トマトの酸味もするけど、全体としてのソース風味の方が勝っている。
ソースを使って味付けしていると言うんじゃないんです。スパイス配合がソースと似ているのでしょうね。
さすがに築地で、ご飯も結構な量がありますから、はじめて見たときは驚きました。
でもあっさり完食できる。
これといって突出した美味しさがあるわけではないのですが、ついつい足が向いてしまう。
懐かしさを感じる味と言うのもあるのでしょうが、とにかく早い安いに徹している営業姿勢が好き。
それに食べてて気持ち良いんですよ。
水の入ったコップが空になって放置されるなんてことは決してない。
カレー屋だから水を飲むお客は多い。1日1000食も出るのだからただでさえ忙しいのに、食べている途中のお客に対しても目配りを怠ることはない。
食べている途中に顔を上げて4代目と目が合うと、すぐ飛んでくる。
カレー専門店が凌ぎを削る今は、中栄より美味しいカレー屋はたくさんある。
でもここより気持ちよく食べられるところはそんなに多くない。
だからつい足が向く。
食べ終わってから場外に出て買い物を済ます。
鳥藤で大山地鶏のモモを買い、浅田水産で白バイ貝を買った。
白バイ貝は大きくて、煮付けじゃなくて刺身にも出来るかと思うくらい。
それで一山500円だった。
浅田水産に行く途中で見かけたマツタケ。
先週よりも入荷が多い。だから値段も安くなってる。
先週はもう少し小振りのもので、1箱1700円ほどだった。
12時過ぎていたのでそれを投売りで1000円で売ってくれたのだが、今週は通常の値段で1000円だ。
この値段ならマツタケご飯だろうが、焼きマツタケだろうが、なんでも家で作れる。
先週より安いねと聞くと、『中国産がずいぶん来てるからね。沢山ありゃ値も下がるよ。今日はどう?』と切り返された。
中国産は国産よりも出てくるのが早いと言ったって、まだ梅雨明け宣言もない時期だ。こんなに早く出てくるマツタケってのは季節感がなくて、なんか好きじゃない。
でも1000円でいいからと言われて買った先週のマツタケは、食べてみれば今の時期でもそれなりの香りがする。サッと炙って、冷たいうどんに乗せた。
贅沢なぶっ掛けマツタケうどん。
今日はどうかと聞かれたが、他にも買う物もあるし結局止めておいた。
この店も良く利用するのだが、なかなか気風が良くて好き。
いろんな野菜が置いてあるし、店頭になくても聞けば奥から出してきてくれる。
たまに値切っている人を見かけるのだが、築地はアメ横と違う。
実際に料理屋の仕入れでも場外の店を使うから、その日の適正値段で置いてある。昼過ぎになっているとか、余程機嫌がいい時じゃないと、嫌な顔をされる。
ここはまけてくれる時はあっさりとまけてくれる。
そんなときはこちらの迷いを察して向こうから切り出してくる。
その切り出し方が、いい感じなんだよね。
こういうスキッとした人達と話していると元気が出てくる。
普通ならあまりの暑さに気持ちも体もダルダルになりそうなものだが、築地の人情と優しさ、気風の良さに触れていると元気になる。
なんか嬉しい気分にもなれたし、暑かったけど好い日だった。
しかしもうちょっと気の利いたタイトルが思いつかないもんかね・・・・

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