数ヶ月ぶりに友人会うため、東銀座で待ち合わせ。
歌舞伎座は稽古日のために、公演はなく人気がない。
友人と落合い、南インド料理の
ダルマサーガラに行こうとしたのだが、月曜定休だった・・・・
それならばと同じ南インド料理のダバインディアに向かおうとしたのですが、歩いていてもとにかく暑い。ヒートアイランド現象でしょうか。ものすごい熱気で、とてもじゃないが歩こうと思わない。
かと言ってタクシーに乗る距離じゃない。
近場で思い出したのがナイルレストラン。
ナイルレストランは歌舞伎座の近くに
店を構えて60年弱。
初代はインド独立運動の活動家。独立運動の功績が認められて、20年ほど前に勲三等を授けられている。もともとインド料理人が店を開いたわけではない。
インド独立運動の活動家とインドカレーと言えば新宿中村屋を思い出す。
活動家ビハリ・ボースは新宿中村屋に匿われていて、日本人に本当のインドを知ってもらおうと言う啓蒙の意味と、危険を顧みずに匿ってくれた恩返しの意味も込めてインドの本格カレーを中村屋主人に伝授する。
新宿中村屋のインドカレーは大ヒットし、新宿に出かけて買い物をし、中村屋でカレーを食べるのがステータスになった。
中村屋はもともと飲食業を営んでいた。
でも初代ナイル氏は飲食とは無関係。それが日印平和条約の仕事をしている最中にレストラン開店。どんな経緯と動機があったのかは知らないが、活動家がレストランを開いたのだ。
何が理由だったんですかね。
ただ食うためだけとは思えないんだけど。
開店当初からのメインメニュー、ムルギーランチ。
ムルギーとはチキンのこと。ならばチキンカレーかと言うと少し違う。
骨付きもモモ肉が一本ついてくるのだが、ウェイターがナイフとフォークで鮮やかに骨だけを抜いてくれる。ウェイターの手業と言うよりは、それだけ骨離れがよくなるように長時間煮込んだ料理人の技と言うべきかな。
写真は骨を抜いたところ。
プレートにはモモ肉とキャベツを主とした温野菜、マッシュされたポテト、イエローライス。
イエローライスは鶏がらスープで炊いてある。マッシュポテト、温野菜ともにそれだけをご飯と一緒に食べても、たいして旨いと言うもんではない。
ムルギーランチは混ぜて食べるのだ。
ずべての具をとにかく混ぜる。
グチャグチャになるくらいに混ぜる。
ポテト、モモ肉、キャベツ、ご飯、カレーが全て一体になるくらい混ぜる。
当然、見た目は良くない。これが1400円も出したカレーかと思うくらい。
ベッチャリとしたカレー混ぜご飯、またはかなりウエットなドライカレー(なんじゃ、そりゃ)と言う感じになる。
ところがこれが美味しい。
初代の出身はケララ州。南インドです。
南インド料理はよくご飯と混ぜて食べる。
いろんなカレーを混ぜて食べるのが美味しく食べるコツ。
ムルギーランチはナイルレストラン独特のカレーだけれど、店の人にとにかく混ぜて食べるように勧められるのは南インドの流れを汲むからだろうね。
カレー自体はカレー粉を感じさせる味。そして鶏がらの旨味。
具材とスパイスと水で作るインドカレーからは随分と離れている。
でもそう感じるのは、本場の作り方を持ち込んだインド料理店が増えた今だからこそ。レストランが出来た当初、私が生まれるよりもずっと前の時代に本格インド料理を出しても受け入れられたかどうか。
美味しいインド料理を、一般の日本人も受け入れやすい形にしたのがムルギーランチだったのでしょう。
旨味の文化である日本を理解し、スープストックを丁寧に取ること。
カレー粉から始まった日本カレーを否定せず、独自の調合で作り上げて販売しているインデラカレーと言うカレー粉。
7時間も煮込んだ鶏モモ肉は、旨味が抜けてパサつくことなんかなく、シットリと旨味を含んでいる。当然、味の薄いブロイラーなんかでは出来ないことだ。
しかし食べるときには南インド流にとにかく混ぜる。
何でもかんでも本物じゃなきゃダメだなんていうと堅苦しい。
そもそも何が本物なんだ?
日本で商売するのだから日本人にあわせた調理で良いんですよ。
それはお金に魂を売ってしまった贋物料理とは違う。
3代目はインドの料理学校に行っていたそうだ。
きちっと本場の料理も学んできている。
ムルギーランチが南インド料理なのかどうかは知らないけれど、日本人の味覚を良く考えた上で作り上げた名物料理なのは間違いない。
それはそれで美味しいのです。

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