西葛西駅近くで困るのが、昼に魚が食べたくなったとき。
居酒屋の昼飯にも刺身定食や焼魚定食はある。
でもたいてい 1種類しかないので選択の余地がない。
サンマにしようかアジにしようか、刺身も良いがフライも美味しい。
そんな風にその日の気分で選んで頼みたいのだが、そんな店は見つからない。
いわゆる定食屋がないんです。
食卓の欧米化が進んで肉を食べる機会が増えたけど、そこはやはり日本人で、たまに魚が食べたくなる。刺身はもちろん、焼魚や煮魚が妙に食べたくて仕方がないときがある。
一人暮らしなのにその日の気分によってそんなものを作っていると、食事代は高くついてしまう。
だいいち一人前だけ作るのはえらく面倒くさい。
だから定食屋は強い味方だったんです。
学生の頃に世話になった定食屋のイメージは、安くてボリュームがある飯屋。
野菜炒めに生姜焼きとかフライ物なんかが色々あって、これで味噌汁が旨いと言うことがない。
安いだけの定食屋は作り置きの味噌汁が多く、時間が経つと何度も火を入れるのでドロドロになっているときがある。でも日本人のソウルフードでもある味噌汁はドロドロじゃ旨くない。
だから自宅通学じゃない者にとっては、この『味噌汁が旨い』というのは魅力だった。
しゅもんなどは頑張ってくれている。
でも、もう少し選択肢が欲しいときがある。
そんなときに良い店があると教えられて、少し遠いが出かけてみました。
場所は三角商店会の
この辺。
もう船堀ですね。
店構えは小奇麗。
大きく『大衆食堂』と書かれた暖簾がいいじゃないですか。
店の中は明るくて、いわゆるドライバー御用達の店にありがちな雑然とした店内じゃない。
壁には定番のおかず。
エビフライ、カツ丼、生姜焼きなどの貼り紙。
ホワイトボードにその日のお勧めが手書きされている。
かぼちゃ煮、しらすおろし、小松菜おひたし、ハムカツ、ハンペンフライ。
さわらの照焼き、めかじきの西京焼、さんま焼。
別のところには今日の刺身が書いてある。
ホヤ、白いか、つぶ貝、まぐろ、さんま、うに。
そのどれもが300〜400円ぐらい。
冷奴なんか210円。
そんなもんスーパーで豆腐を買ってくればもっと安いと思ったりもするが、他のおかず無しと言うわけにも行かない。
なんだかんだと言っても、良心的な価格設定だ。
安かろう不味かろう、と言う店もたくさんある。
でもこの店はそんなことはない。
コストパフォーマンスという言葉は好きじゃないが、この店はそのコスパが非常に良い。
店に入るとまずは生ビールとハムカツ。
弁富のハムカツは、どこにでも売っているような薄切りハムを2枚重ねて揚げただけのありきたりなもの。ハムを喰うと言うより、コロモを喰う。
このコロモを喰うと言うところがビールと合うんですな。
そしてその日のお勧めを眺めながら酒の肴を探す。
さんま刺しがあれば一番に頼む。
なんてことはない、ただのサンマの刺身が旨い。
このサンマの刺身は大振りなサンマをまるごと一尾使っている。
切れ目から見える身の色が綺麗でしょ。
鮮度も良いし、身が旨い。
サンマはまだ出始めだと思っていたら、いつの間にかもう秋になって随分安くなってきた。
だいぶ脂も乗っている。
このへんになると日本酒が好いですね。
このサンマ刺しは早い時間になくなる時が多い。
弁富は仕入れの価格によってお勧め品の値段が変るから、これからが旨いものを安く食べられる季節だ。
この日の定食は鶏の唐揚げ定食。どんぶりご飯と味噌汁付きで600円だった。
定食は日替わりで、肉豆腐定食だったりベーコンオムレツとハムカツの定食だったりする。
これはこれで安くてありがたいのだが、自分の食べたいものとご飯に味噌汁を頼んで勝手に定食にするのも良い。
私はイワシフライが食べたくて自分勝手に定食にした。
ビールと肴でお腹も膨れてきているので、どんぶりご飯は少し多い。
そんなときはご飯を半分で頼む。
すると普通のお茶碗(と言っても大きめ)が出てくる。
これで十分だ。
イワシの季節もそろそろ終わりに近い。
イワシは大きさによって中羽(ちゅうば)、大羽(おおば)と呼び分ける。
15センチぐらいが中羽、20センチほどのものを大羽と呼ぶ。
弁富のイワシは大羽なので食べ甲斐がある。
色濃く揚げてあるが、イワシ特有の癖があるからこのくらいのほうが私は好き。
これになす焼きを頼んで私の定食は完成。
腹いっぱいになっちゃいます。
この自分勝手定食で830円。
予告編のナスの写真はこの店のものでした。

弁富で一番高い単品メニューが右の写真。
エビ丼 900円。
貼り紙を見たときにはどんなものだか分からなかった。
エビフライが3本卵でとじてある。
ご飯もたっぷりで、結構なボリュームです。
エビフライの単品が530円だから、味噌汁付きの丼物にすれば納得の値段か。
キャベツの千切りが雑な切り方だとか、フライ物が多くて煮物が少ないだとか、文句を言おうと思えばいろいろある。
でも許せちゃうんだな。
だって安くて旨いんですから。
もちろん味噌汁はドロドロなんかではない、美味しい味噌汁です。
それに店の人達がすごく良い。
接客をする若女将の笑顔は素晴らしく優しい。
紹介してくれた友人が『
末っ子の女将さん系』と評していたが、まさにその通り。
常連と思しき若者が、店にお土産といって何かを渡してた。
厨房から大きな声で『ありがとね。アジ食べてってよ。このアジ旨いから』とお礼のサービス。
夕方に行くとたまに好い加減に酔ったオッサン連中がいることもあるが、鬱陶しい呑み助連中ではない。迷惑千万な客はいない。
極々まれに、食べてる最中とにかくクチャクチャと音を立てるような人種と隣り合わせることがある。
この店に限ったことではないが、ゆっくり過ごそうと思っているときに出くわすと閉口する。
あまりにも耳障りだと味噌汁椀を投げつけたくなるのだが、ここはレストランではなく定食屋だ。
運が悪けりゃ、そんな人が隣に座ったりもするさ。
そんな時はツキがないと諦めて、サッサと食べてお勘定をして外に出る。
でもまた来ちゃうんです。
ガテン系のお兄さんも、とにかく腹を減らしたような若者も、おじいちゃんもおばあちゃんも来る。
先日の昼には、若い主婦グループ3組に小上がりを占拠されてた。
PTAの会合でもしているのかと、一瞬怯んでしまった。
幅広い客層に支持されていると言うことは、みんな何処かに魅力を感じているんです。
遠いようだけど、葛西橋通りを挟んだジャスコの向かい側にある自転車屋の横を真っ直ぐ行って陣屋橋を渡れば、左に折れて直ぐの場所。
チャリで昼飯を食べに行くのも良いものです。
日曜が休みなのと、昼が1時半までなのが残念。
モタモタしてると間に合わなくなるからね。

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