三ツ星醤油に対して誤解を生むといけないのでこの記事を書いています。
昨日飲みに行ったら店のマスターから、『醤油垂らしただけでインスタントラーメンのあの人工的な味が変わるわけない』と言われてしまった。
信じ難いから驚いて書いたわけだが、普通はそう思うよね。
特にインスタントラーメン嫌いのマスターからすれば、到底信じられないと言うもの当たり前か。
でもまぁ、試してみてください。
ところで昨日の更新の直前に三ツ星醤油に問い合わせのメールを入れておいたのです。
文中にも一言書きましたが、旨いのは原材料に入っている本味醂のせいもあるのかなと思ったから。本来の醤油に味醂を使うと言うのは初めて聞いたので、ダメモトで問い合わせてみようと思ったのです。
通常は公開している製法以外のことについて問い合わせても、なかなか明瞭な回答が来ることはない。だから普段は製造元にメールをしたりしないのだが、なぜか昨日は問い合わせてみようかなと思った。
そしたらその日の夕方に店主から返事が来た。
しかも詳細な回答だったので驚いた。
昨日2度目の驚き。
醤油は製品として仕上げる前の段階で『火入れ』をする。
日本酒でもそうなのだが、火入れは酵母や雑菌の活動を止めるために行われる。
醤油では火入れによる香気をつける意味も持つと聞いたことがある。
フランスではワインの防腐のために低温殺菌法を行う。これはパスツールが発見したのだそうだが、日本ではその300年前の室町時代から行われていたわけだ。
店主からのメールに拠れば、三ツ星醤油の火入れは鉄の大きな和釜に醤油を入れ薪で炊くことで行われるのだそうだ。
その際に鍋肌が焦げないようにするためと、防腐の役割として本味醂を少し入れる。
少量なので味わいが何ら変わることのない程度のもの。
しかしながら最近では表示にすべてを明記しなければならないので、原材料に本味醂と載せているのだそうだ。
昨日私が書いた『旨いのは本味醂のせいもあるのかな』というのは明らかな間違いです。
本味醂は防腐の目的で使用するものでした。
店主が言うことを要約すると、
昔ながらの製法で今なお、もろ蓋仕込・木桶熟成・鉄和釜での加熱等の作業をし、一切の科学的な添加物なしで出来る限り体に良い食品作りをしようとすると、醤油にでてくるカビなど防ぐことができない。
しかし、真面目に造られた本味醂が少しの役に立ってくれている。
そういう意味での味醂使いとご理解下さい、
とのことでした。
火入れは保存性を高める目的で行われるが、『保存性を高める』とは『いつまで経っても劣化しない』のとは違う。
添加物を加えて、窓辺に置いておいても腐らないものを作り出すわけではない。
適正な保存をすれば長く持つものを作ると言うこと。
本味醂はそのためのものだったのでした。
いわゆる、旨味を加えた出汁醤油の類ではありません。
誤解を生むような表記をしたことをお詫びします。
それにしても丁寧なメールだった。
ひとりの消費者の問い合わせにあれほど懇切丁寧な説明を、しかも問い合わせから間髪入れずに回答してくれたのには驚いた。
文面からは店主の誠実さが見て取れる。
メールの最後に『店頭でお客様とお話するように充分説明できないのが申し訳ない』と書かれてあった。
それだけで、真面目に醤油を造っているのだと感じさせる。
こういう人の造るものは間違いがない。

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