元々夜に外食することは多くない。
最近は家で和食を作るようになったので、特に少なくなった。
それでもカミさんの実家からお義母さんが来ているので、久しぶりの近所で晩飯を食べようということになった。
去年は錦糸町の
紅梅寿司でちゃんこ鍋を食べた。
そのときは食が細いお義母さんがたいそう気に入って歓んでいたので、今年もちゃんこ鍋ではどうだと言う話になった。同じ店でも良かったのだが、帰りが楽な近所にしようと言うことで葛西にある
最上へ。住所は
江戸川区東葛西6−9−12。

この店はいつも混んでいる。
午後11時までやっているので遅い時間に入るのならいいのだが、1回転目に入ろうとすれば予約しないといけない。特にこれからの季節は直前の予約では厳しくなる日が増える。
葛西・西葛西に住んでいれば今更説明の必要もないでしょうが、最上の店主は元高砂部屋の力士。
店内には水戸泉から贈られた化粧回しが飾ってある。
一度この化粧回しに触れさせてもらったことがあるのだが、それはそれは気持ちの好い手触り。
絹の織物の手触りって好いものだ。
頼んだ料理が出てくるまでに番付表が手渡される。
開いた瞬間に目に付くのはカタカナの多いこと。
外国人力士の台頭を改めて教えられる。

この店に来るといつも頼むのは、お造りと最上風力士味噌。
魚は天然物を使っている。その分いい値段になる。
いい値段ではあるが、高いと言うわけではない。
大原で揚がった天然のヒラマサがあるというので早速頂く。
脂は乗っているがしつこくない。
脂が乗っていると言う表現自体が適切じゃないかな。
甘みすら伴ったトロリとした舌触り。
この手の魚は厚めの平造りがいい。
鯛や平目といった白身魚と違って、色物とも呼ばれるヒラマサやブリ等の魚は身を厚く切ってこそ楽しめる。
ところが天然物のカンパチやヒラマサなどの魚は、いまや高級も高級で随分と値が張る。
『旨めぇな〜』と思うほど切ってもらうと、それなりの値段はするものなのです。
だからこれで1380円は決して高くないと思うのですよ。
食べるのに一生懸命で写真を撮り忘れましたが、最上風力士味噌も美味しい。
高砂部屋の味に店主なりの手を加えたとか。
この味噌と炊き立てのご飯があれば十分だと思ってしまいます。
エシャロットとキュウリにつけて食べると止まりませんな。
味噌辛いだけじゃないので、実は酒のアテにもなる。
お義母さんが大変気に入った様子だったので買って帰ろうとしたら、たまたまこの日は残り少なくなって買えなかったのが残念。


左は生桜海老のかき揚げ。
桜海老漁は春と秋の年に2回ある。
ちょうど今が秋の桜海老の出始め。
桜海老の産卵期は夏なので、秋漁の桜海老は新海老になる。
10月下旬から秋の漁が始まるのですが、はじめのうちは親海老が混じっている。
それが11月にはいると新海老だけになるんですね。
レモンを絞るだけで食べるのが美味しいのだが、かき揚げはかき揚げの良さがある。
生のまま食べると磯の風味が味わえるが、火を通すと海老特有の甘みと香りが出てくる。
サクサクに揚げられた生桜海老のかき揚げが美味しいのは、まさに今の季節なんです。
右は海老しんじょ。
こちらは桜海老ではありません。
海老が重なってしまったけれど、趣味で椀物造りにいそしんでいる私としては食べてみたかった。
しんじょは奥が深い。
主となる具材を擂り鉢であたって、白身魚を練ったものや大和芋などを加える。
卵黄を加えるものもあれば卵白を加えるものもある。
粉は浮き粉だったり葛粉だったり。
いろいろと作って感じることは、主となる具材の何を食べさせようとするかが大切だと言うこと。
それによって仕上がりをとろけるぐらいフワフワにするのか弾力を持たせるようにするのか、色を出すのか抑えるのかが決まる。
それが決まれば合わせる物をどうするかが決まるし、茹でるのか蒸すのか揚げるのかも決まる。
私としては海老のしんじょは、火が入ったときの綺麗な色目とプリプリな身の食感を楽しみたい。
だから粗く叩いた海老の身と練りに練ったすり身を組み合わせたものが好きだ。
すり身を出来るだけフワフワに仕上げることで叩いた海老の身のプリプリ感が際立つ。
叩いた身は鮮やかな赤い色で、練った生地はほんのりとした桜色。
食感も楽しいし、見た目も美しい。
でもそれは椀種として好きな海老しんじょ。
食べることを主体にすれば、揚げてしまって全体に弾力を持たせて海老を感じさせるのもひとつの手。ただし生地の作り方と火の通し具合で、場合によってはかまぼこの様なものになってしまう。
しんじょを上手く仕上げると言うのは本当に難しい。


今日頼んだちゃんこは、つみれちゃんこです。
鰯のつみれと鶏肉団子がメインの具材。
他には葉物野菜を中心にキノコと豆腐。
何だ魚介が入ってないじゃないか、何て思ってしまいますか?
これはこれでいいんです。
寄せ鍋じゃないんですから。
あくまでも『つみれ』ちゃんこなんですから。
つみれは酒か出汁をたっぷりと含んでいて、皿から匙ですくうのも一苦労。
出汁を張った鍋が沸いたらつみれを落とすとふんわりと仕上がります。
生臭みなんかなく、美味しいつみれです。
鶏肉団子も鍋に入れると柔らかく仕上がる。
ちょこっと効いた生姜が良いアクセントだ。
これらを入れた後で野菜や豆腐、糸こんにゃくを入れる。
昆布出汁とつみれの相性が良い。
鶏肉団子からも出汁がでて、葉物や豆腐も美味しく食べられる。
これでもかと言うくらい野菜が食べられますね。
うどんもいいけど、締めはやっぱり雑炊です。
卵を割り溶いて色目も良く出来上がると、今までお腹いっぱいだったのに、ついつい手が延びる。
この店に来ると思うのですが、地元で食事をするときはやっぱり人柄ですよね。
店主と奥様のいつもの笑顔、頼んだものがないときの申し訳なさそうな表情、店を出るときの挨拶。
思わず『また来ますね』と言ってしまう。
紅梅寿司のちゃんこも美味しいが、最上のちゃんこも良い。
シッカリとアッサリ。
具沢山とシンプル。
どちらも楽しめるのです。

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