ちょっと忙しくなると全然更新できません。
サボってたつもりはないのですが、気がつくと随分と日にちが開いてしまっている。
見ていただいている方々、申し訳ございません。
しかも久しぶりの更新なのに、西葛西ネタではございません。
数ヶ月ぶりに六本木に用があったので、外出先のカミさんと待ち合わせ。
晩飯でも食べてから私の用に付き合ってもらった。
何を食べるのか迷ったが、サクッと寿司でも食おうと言うことに。
六本木で寿司と言うと真っ先に思い浮かぶのが『兼定』。
値段は張るが、払った金額以上の満足がある大好きな店。
でも予約しなけりゃ入れない。
思い出したのがベルファーレ前にある『寿し処 くに』。
住所は
港区六本木7−13−6。
私が帰国した頃に出来た店で、比較的新しい。
お決まりで3000〜4000円ぐらい。
お好みでも1万円ぐらいなのだが、なかなか美味しいものを食べさせてくれる。
そしてなんと言ってもご夫婦の人柄が良い。
場所柄、深夜まで開いているのだが、ご主人は日々築地に通い魚を選ぶ。
当たり前のことのようだが、全部の寿司屋がそんなことをしているわけではない。
この店ぐらいの価格帯だと、しっかりと目利きをして仕入れないと良いネタで客を呼ぶことは出来ない。だから日々築地に行き、魚の質と値段の履歴を頭の中に持っておくことは大切なことなのです。

そして手間をかけても美味しいものを出すこと。
そうじゃなければ、いくら六本木と言う人の多い場所でも生き残れない。
カワハギの刺身についてくる肝醤油。
肝醤油というよりは醤油味の肝の裏漉し。
カワハギの肝を丁寧に裏漉しして、出汁醤油を少量加えたもの。
これをたっぷり付けて食べるカワハギの刺身は旨い。
肝を叩いて醤油にあわせても充分美味しいのだが、ペーストのように裏漉しした肝の舌触りはそれとは全くの別物だ。
丁寧な裏漉しと言う一手間が刺身を美味しくする。
一緒に出してもらったヒラメの刺身も旨かった。
こちらはポン酢で食べる。
私はポン酢と言うものがあまり好きではない。
酸味に弱いほうだからだ。
でも合わせる柑橘類によって味は全然変わるもの。
旬の柑橘類を使ってくれると、甘みがふくらみを持たせて酸味を程よく包み込む。
そんなポン酢に出会うと、途端にこの店は良い店だと思ってしまう。
刺身を頼んだ後に目に飛び込んできたのは香箱蟹。
これは食べるっきゃないでしょ。
香箱蟹はズワイガニのメスです。
メスですから卵を持ってます。
子を持っているから子箱蟹だったのが転じてコウバコになったのか、香りが良い箱型だから香箱(コウバコ)なのか定かではない。
セイコガニとかセコガニなんていう言い方もする。
漁は11月6日から翌年1月までと決まっている。
今が出始めなんです。
香箱蟹は身を食べるのが楽しみな蟹じゃない。
ズワイガニなので勿論身も美味しいのですが、それ以上に旨いのが内子と外子。
甲羅の中に蟹味噌と一緒に入っているのが未成熟卵の内子(ウチコ)。
甲羅の腹側のふんどしの中に抱えているのがいわゆる卵である外子(ソトコ)。
これが旨い。
出された香箱蟹の甲羅の中には内子が、甲羅の下にあるのは外子、その脇にほぐし身。
私はこの内子が好き。
仄かな甘み。
良い香り。
ホクホクとした食感。
これが食べられるようになると冬なんですね。
上海蟹のネットリとした蟹味噌の旨味もいいけど、北陸の海の幸である香箱蟹のコックリとした内子も旨い。
堪らんです。
香箱蟹の内子も美味しかったのですが、この日一番旨かったのは小肌の巻物。
これがべらぼうに美味しかった。
海苔を広げて小肌を互い違いに敷き詰める。
炒った白胡麻をたっぷりとかけ、その上に大葉を敷く。
大葉の上にはガリ。
これを巻くだけなんですが、とにかく旨い。
廉価な寿司屋では小肌もガリも出来合いのものを買ってくる場合がある。
魚屋で小肌を開いて酢で締めて売っている所はあるが、生姜の酢漬けは作ってない。
つまり出来合いのものを買ってくると、小肌とガリのメーカーが違うことになる。
そうなると使っている酢も当たり具合も違ってくる。
使う砂糖の具合も違う。
これでは一緒に巻き込んだときに一体感が出ることは稀だ。
『くに』の小肌の巻物が美味しかったのは、もちろん小肌自体が美味しかったせいもあるのだが、巻物としての一体感のためだと思う。
小肌の締め具合。
白胡麻の風味。
大葉の清々しい香り。
ガリの食感と清涼感。
白胡麻や大葉の風味がきつ過ぎても、ガリの個性が強すぎても、小肌の繊細な美味しさは失われてしまう。
断面の色が綺麗でしょう。
小肌の芯から端にかけての色のグラデーション。
良い締め具合でした。
そしてその良い締め具合の小肌の旨さが、他の具によって活かされている。
感心する巻物でした。


もちろん握りも頂きました。
穴子は崩れるか崩れないかギリギリのふんわりとした煮上がり。
香りが良い。
ツメも甘過ぎることなく、美味しい穴子の握りだった。
ナマコなんていうものもあった。
実は寿司屋でナマコを握ってもらったのは初めてだ。
どうやって握るのかと思ったら、細切りにしたナマコを軍艦にした。
磯臭さを感じることなく、ナマコのコリコリした食感が楽しめる。

赤身を握ってもらうと、なんとも良い色をしたマグロが出てきた。
上にはちょこんとワサビが乗っている。
『くに』の握りは小ぶりだ。
銀座三越裏にある『ほかけ』の寿司のようにどっしりした寿司も旨いが、『くに』や『兼定』のような小振りな寿司も小気味良い。
要するにネタとシャリの一体感があれば、どんなタイプでも寿司は旨いのです。
そして店主や女将さんとの相性が良ければ、さらに旨くなるのだ。
いかにも職人然とした『ほかけ』のオヤジは一見怖そうだが、人を怖がらせるだけじゃ老舗にはならない。あのオヤジだって話せば人懐っこい笑顔になる。
『兼定』の物静かな職人店主だって、聞けばいろんな話をしてくれる。
『くに』の店主は誠実だ。
そして女将さんの笑顔は優しい。
この二人が揃っているからこの店は居心地が良い店なのだ。
居心地が良い店で食べるものは美味しいんです。

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