『
紫苑』は去年の11月に開店したばかりの中国茶の店です。
西葛西南口を出て、無印良品の少し先。きよ寿司の入っているビルの3階。
路面に看板も何もない。ビルの上を見上げるとテナント表示板に小さく『紫苑』とある。
外階段を上がると公文式教室の向かいに入口。
これじゃ、普通の人は発見できないよ。
店に入ると右手にカウンター。カウンターには姿勢の良い、やや杉良太郎似のマスター。
左手に中国茶が並ぶ。中国茶の前に2人掛けのテーブルが3つ。花梨製の椅子とテーブルが美しい。
奥に4人掛けのテーブル席が二つ。
小さな店だ。
手渡されたメニューには中国茶が30種類ぐらい並んでいる。
緑茶、花茶、発酵茶と種類別に分けられ、それぞれに丁寧な説明書きがある。
さらに後ろには点心のメニュー。蒸し物中心に20種類ぐらいあるだろうか。
とりあえずプーアール茶と蒸し蝦餃子を頼もうとするが、プーアール茶が発酵茶の分類に入っている。半発酵茶の間違いかと聞いたところ、このプーアール茶は発酵が進み癖が取れているものだという。そして癖のあるほうが好みならメニューには載せていない半発酵物があるのでどうかと聞かれた。
当然メニューにないほうを頼んだ。
中国茶の世界は深い。
大別すると、緑茶、黄茶、白茶、青茶、黒茶、紅茶の六種類になる。これらは製造過程で分類される。発酵の度合いと揉むかどうか、火を入れるかどうかの違いだ。
発酵茶の代表は紅茶ですが、発酵の度合いや方法によって中国茶は味も香りも変わる。青茶の代表である烏龍茶も発酵過程を踏んでいる発酵茶の一種。発酵を微妙にコントロールする技術が必要な物です。
さらに花などで香りをつけたもの。ジャスミンティーの種類ですね。他にも菊や金木犀で香り付けしたものがある。
どんなお茶が飲みたいかと聞かれても、馴染みのない人には好みを伝えること自体が難しいだろう。
最初は烏龍茶から始めるのが良いでしょう。癖がなくて飲み易いし、種類があるから複数で頼んで聞き茶をすると楽しい。プロは茶葉の形や色なども比べるのだが、味と香りを比べるだけで十分面白い。
お茶の聞き方もいろいろあって、尋ねればマスターから楽しい話が聞けるだろう。
しかし烏龍茶だけで数種類あるメニューの中から、いかに丁寧な説明書きがあるとはいえ、素人が好みの物を選べるものではない。
当然マスターに『初めてなのだが、最初はどんなお茶が良いか』と聞くべきだ。マスターは説明をしながらあなたの好みを探ってくれる。
私の頼んだプーアール茶は、香港では『ポーレイチャ』と発音し、食事の時には一般的なお茶だ。脂肪を落とす効果があるので、皿洗いの時に客の飲んだ出涸らしの茶葉を使う食堂もある。飲茶の時にはプーアール茶が我が家の定番だ。
お茶は小振りなポットに入って出される。なくなるとお湯を差してくれる。中国茶は、お湯を差せば何煎でも出るのが特徴だ。一度頼むと、4回5回とお湯を注いでもお茶が楽しめる。もちろんお湯のお代わりにお金は掛からない。
喫茶店のコーヒーと比べるとかなりお得だ。
中国のBGMに身をゆだね、本を片手に香りの良いお茶で点心を楽しむ。
蝦餃子を一つ頬張り、お茶を飲む。香りを楽しみ、また本に目を移す。
休日の午後、ゆっくりとした時間を楽しむ。
疲れてきたらマスターにお茶の話を聞くのも良いが、実はこのマスターは只者ではない。
太極拳を極めた武術家である。この店を開く前は某国立大学でスポーツ医学も教えていた。店の奥で太極拳教室と中国語教室も開いている。今のところお客さんのほとんどは、この教室の生徒さんではなかろうか。
だって看板も何もない、ビルの3階にある中国茶の店に、わざわざ階段を上ってやってくる酔狂な人間が、私以外にも沢山いるとは思えない。
しかし、生徒さんたちにこの店を独占させておくのは勿体無い。
マトモな中華料理を楽しめる店はあるが、マトモな中国茶を安く楽しめる店は貴重だ。
点心についてはコメントはありません。
多分、あなたでも何処かで買うことが出来るでしょうから。
ここは中国茶を楽しむ店です。やや入りにくい感じはあるが、勇気をもって入ってください。
たまには中国茶の奥深い世界に浸るのも良いですよ。
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