今年は色んな松茸を見ます。
もちろん一番多いのは中国産。これは例年通り。
北朝鮮産は入ってこない。
少し前にはノルウェー産なんてのもあった。ノルウェー産とかスウェーデン産の松茸は品質もよくそれなりの評価を得ていたようだが、季節的に取れる時季が短いとかでもう築地の場外では見かけない。
変わりに出始めたのがカナダ産とアメリカオレゴン産。カナダ産は比較的大振りなものが多いように思う。オレゴン産は小さめで色が白いのが特徴。両方とも香りをかいだことはないからどんな感じなのか分からない。
品質的には韓国産が一番良いという市場の評価なのだとか。その韓国産も出盛りになって価格も安定してきたような気がする。
しかし世界中から松茸を輸入しているのですね。
月が変わって10月。
今年は9月末まで暑い日が続いたのでやっと秋が来た感じがする。
これからが秋本番なのだが、残念ながらすぐに寒くなるらしい。
ということは食欲の秋は短期間しかないということか。
今月は精力的においしい物を食べないと。
去年もこんな写真を載せましたが、今年も自宅で松茸の土瓶蒸し。
前回は大盤振る舞いして鱧を入れましたが今年は活けの車海老。
松茸は中国産ですが型のよいのを選んだので値段の割には大振り。
香りもなかなかです。もちろん料理屋で出てくるような丹波産の良いものとは比べられませんが、自宅で手軽に楽しむには十分です。
たくさんの松茸を放り込んで芳香の映った出汁を飲むのは贅沢なものです。
後は銀杏と活けの車海老でいい。具沢山にした土瓶蒸しを出す店がありますが、私は松茸の他に何か一品が入っているだけでもいいと思う。土瓶蒸しはやはり松茸の香りのする旨い出汁を飲むものだ。
秋を感じさせるものが入るのが一番の贅沢だと思うが、旨い出汁とよく合うものならばそれでよい。季節感が出せれば最高だけど、家で楽しむ本命は松茸ですから。
車海老は色合と言いほんのりとした身の甘みと言い、やはり出汁とよく合う。
松茸の他はこれだけだから良いものを使いたい。
となれば活け物。それでも土瓶に入れなければならないので大きなものを求める必要はない。だから活け車海老と言ってもそれほどの値段にはならない。
車海老は活きたまま頭を外して殻をむく。その時に丁寧に処理しないと折角の縞模様が綺麗に出なくなってしまう。そして65度ぐらいのお湯でサッと霜降りする。どうせ活けを使うのだからこのくらいの手間は惜しまず丁寧に。
海老特有の臭みを抑えるために私は霜降りすることにしています。火を通すのではないので熱湯にくぐらすことはしない。タンパクが固まるギリギリの温度のお湯にサッと浸けるだけ。そして冷水で冷やして水気を拭いておく。
これで準備完了。
後は土瓶にこれでもかというぐらい松茸を放り込んで、やはり丁寧に引いた出汁を張り火にかけるだけ。一煮立ちするころに車海老を入れて出来上がり。
お猪口に移した松茸の香りのする出汁にスダチを一滴。
ほんの一滴の胸の空くようなスダチの香りが全体を引き締めます。
口の中に出汁の旨味が広がる。
出汁が減ってきたら土瓶の中の松茸と海老に箸をつける。
シャクシャクとした松茸。
プリプリの海老。
旨味、歯応え、香り。
もう言うことがないです。
つくづく思うのは出汁の威力。
鰹節と昆布があれば15分で素晴らしい出汁が引ける。
面倒臭いと言ってもたったの15分の手間。
朝の忙しい時間ならその手間も惜しいでしょう。
でも週末なら時間はありますよね。
たまにはゆっくりとした気持ちで出汁を引くのもいいものですよ。
その日の食卓はなんだか贅沢になったような気持ちになります。
今年は例年よりも松茸を食べていますが、価格が安定しているからだけじゃなく、出汁を引くのを面倒だと思わなくなったのが大きな理由のような気がします。

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