美味しい松花堂弁当が食べたい。こればっかりは西葛西では無理なのだろうか。

好きなのは銀座
中嶋の30食限定の松花堂弁当。この内容のお弁当が3150円と言うのは安いです。
中島は北大路魯山人ゆかりの割烹です。ご存知のように魯山人は大芸術家にして美食家。星ヶ岡茶寮を創るときに料理長に抜擢したのが中嶋の初代。魯山人と中嶋と言えば、
新宿中嶋が有名になっていますが、新宿は分家に当たります。
本家 銀座中嶋が創業70年を記念して、数年前にお昼限定で始めたのがこの松花堂弁当です。取肴、刺身、煮物、ご飯から味噌汁にいたるまで、一切の手抜きがない。中嶋が中嶋たるゆえんはこの弁当を食べれば分かります。
会席は熱いものは熱いうちに、冷たいものは冷たいうちに食べるのが基本。料理を出す側は一番美味しい状態で客に出す。食べる側は一番美味しいうちに食べると言うことです。これは懐石でも同じこと。しかし、弁当は作り置きです。普通に料理したものを弁当にして出しては、この一期一会のお茶の精神から外れてしまいます。
そこで弁当にする場合は、作り置きした状態で一番美味しいように味付けや煮方を変えることになります。ここで料理人の技術が物を言う。
創業150年を超える折り詰め料理の老舗
弁松の弁当の味付けが濃くて食べられないと言う人がいますが、これは弁当として食べるときに一番美味しいと弁松が考える味付けなんです。店先で食べる食事とは違うと言うこと。
あとは好みの問題です。
中嶋の松花堂は弁松ほどではありません。店で出されるものとほとんど変わりがない。それでも味付けや料理法は変えていると聞きました。
四つ割りした弁当箱には日本料理のエッセンスが詰まっている。ご飯とおかずを詰め込んだ、ただの弁当とは違います。
と、ここまで書いて気がついた。
松花堂弁当って、食べ方があるのだろうか?今まで気にしたことなかったけど。
茶懐石には茶道各流派の作法がある。食べ方と言うのは作法のことではない。食べる順番のこと。懐石料理と会席料理の違いのことです。
懐石料理は、まずご飯と味噌汁から始まります。その後にお酒が出てきて、その肴として向付け(刺身)、煮物、焼物、強肴(炊合せなど)と続きます。まずご飯を食べてから、酒とともに主人のもてなしを受けると言う展開。
会席料理は先付(酒の肴)から始まり、吸物、向付、煮物、揚物、焼物と続きます。最後にご飯と味噌汁。酒を飲みながら食事を進め、最後にご飯で〆るパターン。
懐石と会席ではご飯をいつ食べるかと言うのが、食べる順番の大きな違いです。これは成り立ちの違いなんですが、茶席でもないのにご飯から食べていくのもやはり変ですよね。松花堂弁当は由来からして茶道に関係するものなのだが、弁当であることには変わりがない。茶道としての食べ方もあるのでしょうが、やはり食事を楽しむことを優先していいのだろうな。
中嶋の板長に聞いてもそんな答えが返ってくる気がする。
実際に中嶋の品書きには『会席』とあるしね。
話は横道にずれてしまいましたが、素晴らしい中嶋の弁当が3150円で食べられると言うのはやはり安い。昼飯に3000円を使うことはあまりないけれど、たまにでいいからこの贅沢を味わいたいものだ。
刺身は素晴らしいし、必ず出てくる焼物も上手に焼いてある。西京焼きや照焼きの魚の身のほぐれ方から活きの良さだけでなく、焼き手の技量が分かる。どうやったら、魚をこんなに旨く焼けるのだろう。
小芋や生麩を使った何種類もの向付けの味付けも、単調になることを避けながらバラバラにはならない。ただ色々な味に仕上げるだけでなく、一つの枠に収まっていて座りが良い。
焚物は出汁の違いを見せつけられるようだ。その出汁が絶対に野菜類の邪魔をしない。カブの土臭い旨さ、大根の甘味、絹さやの潔い歯ごたえ、それぞれが活きている。
それにゆかりご飯と味噌汁がまた旨いんです。
一度デザートに目を見張ったこともある。牛乳を葛で固めた和風杏仁豆腐のようなものだったのだが、上に3つの赤い木の実のようなものが乗っている。干したクラムベリーを戻して酒に漬けたもの。このクラムベリーの赤い色が小鉢の中で映えるんですよ。滑らかで真っ白い葛の上に赤い点が3つ。この赤い点は2つでも4つでもいけない。思わず見とれてしまった。非常に美しくて、美味しいデザートでした。
こういう弁当をこの辺で食べられたら素晴らしいのになぁ。
葛西の神楽には伺ったことはないが、神楽なら素晴らしい松花堂弁当が食べられるだろうか?
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