鈴木禎次の設計した作品のうち、名古屋の中心街でいつでも見ることができるのが、現在の「三菱東京UFJ銀行貨幣資料館」である。
「三菱東京UFJ銀行貨幣資料館」は、昭和36年(1961)に東海銀行設立20周年を記念して、当時の東海銀行本店ビル内に設けられ、昭和56年(1981)に北隣の御幸ビル1階に移転した。平成14年(2002)に現在地に移転した。館内には、日本のみならず世界各地の貨幣が体系的に展示されている。また、江戸時代の両替商の店先が再現されているほか、東海銀行の歴代貯金箱も展示されている。そのほか、歌川広重の「東海道五十三次」などの美術品も展示されている。
「三菱東京UFJ銀行貨幣資料館」が現在入居しているビルは、東海銀行の前身の一つの名古屋銀行[現在の名古屋銀行(旧・名古屋相互銀行)とは別会社]の本店として昭和元年(1926)に建てられたもので、昭和36年(1961)まで東海銀行本店、その後は2000年まで中央信託銀行名古屋支店として使用されていた。 資料館が位置する名古屋都心部のメインストリートである広小路通には、かつて旧住友銀行名古屋支店[大正14年(1925)竣工 平成10年(1998)解体]、名古屋日本徴兵館[昭和14年(1939)竣工 太平洋戦争後「名古屋大和生命ビル」→「東海銀行本店別館」→「UFJ銀行名古屋ビル別館」に改称 平成16年(2004)解体]など、大正期から昭和初期にかけて建てられたオフィスビルが数多く立ち並んでいた。近年、これらのビルが相次いで取り壊される中、資料館は三井住友銀行名古屋支店[旧・三井銀行名古屋支店 昭和9年(1934)竣工]、明治屋名古屋店(昭和13年(1938)竣工)とともに、名古屋における近代建築の貴重な遺構となっている。平成元年(1989)に名古屋市都市景観重要建築物に指定されている。
旧名古屋銀行は、地元の実業家の出資による私立銀行として、明治15年(1882)に設立された。昭和16年(1941)に、名古屋銀行、愛知銀行、伊藤銀行の3つの銀行が合併し、東海銀行となった。その後、昭和37年(1962)に中央信託銀行名古屋支店が入居し、現在は「三菱東京UFJ銀行貨幣資料館」となった。
建物は、外壁を石張りとし、4階分の巨大な6本のコリント式の列柱が特徴となっている。設計は、曽禰達蔵(1853-1937)を顧問とし、鈴木禎次(1870-1941)が当たった。施工は竹中工務店であった。
所在地 愛知県名古屋市中区錦2-20-25
構造 鉄骨鉄筋コンクリート造5階建て、一部6階、地下1階。
*「三菱東京UFJ銀行貨幣資料館」HP
http://www.bk.mufg.jp/minasama/kakawari/gallery/

代表的な展示貨幣。

復元されている江戸時代の両替商の店先

広重 「宮の渡し」馬の塔(おまんと)の図

広重 「桑名」

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