広小路の建築物でもう一つ忘れてはならないものがあった。
納屋橋の東北角の袂にある「加藤商会ビル」である。
この建物は、昭和6年(1931)頃に、貿易商を営む加藤商会の本社ビルとして建てられたものである。加藤商会は、主にタイ米を扱う輸入会社であり、シャム王室からその功績を讃えられた。同社社長加藤勝太郎は、昭和10年(1935)に名古屋駐在シャム国名誉領事に任命された。そのため、当時、ここでパスポート発給などを行うことになった。
堀川に面した建物地階の壁面は、粗い御影石張りで重量感が漂う。二・三階はタイル張り。基礎階と上階の壁の仕上げを変えることで、格式のあるものとなっている。建物は角地に建つため交差点に面した角を丸くし、そこに出入口を設けている。地下1階部分の扉は堀川端に開放できるようになっている。これは、当時堀川が運河として機能していたことを示している。正面玄関の建具や階段のデザイン、3階の装飾レリーフが付いた天井など、昭和初期の建築の特徴をよく表している。
昭和42年(1967)には、中埜産業(株)に売却され、昭和46年(1971)まで関連会社の支店として使用された。その後、平成12年(2000)所有者の中埜産業(株)が、名古屋市に建物を寄付した。翌年、この建物は、国の登録有形文化財に登録され、修理・保存されることとなった。
現在、1階から3階までの地上部分は、タイ料理レストラン「サイアムガーデン」、地下部分は、堀川に関する歴史や資料・研究や調査結果等を展示する「堀川ギャラリー」として活用されている。
○Siam Garden(サイアム ガーデン)
http://www.siamgarden.jp/
○「堀川ギャラリー」 堀川に関する歴史の紹介や資料を展示
http://www.horikawa.city.nagoya.jp/

交差点に面し、東南に向いた入口。

地下部分は、堀川に面し、船着場所であった。

東南面円形の窓枠配置。

階段手すり部分のデザイン。

3階天井部分の装飾レリーフ。

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