ロンドン爆破事件:解体途上の大英帝国
−大英帝国の中のイスラム国家と二重基準のブーメラン効果の作用
前田 進 jcfkp201@ybb.ne.jp
05年7月7日のロンドンでの連続爆破事件の突発と、52人以上の死者、700人以上の負傷者という結果は、「欧州アル・カイーダ機構秘密組織」がサイトで実行の名乗りを挙げたように、アル・カイーダ関連の仕業だったようである。
英タイムズ紙、日本のNHKその他のマスコミの多くは、事件のアル・カイーダとの関連に疑いを表明して、事件がイラクでの占領と大量無差別な市民の虐殺に対する彼らの報復や反撃ではないから、イラクからの外国占領軍の撤退は必要ないかのように暗示して、世論を操作しようと試みている。しかしこれは明らかに、04年3月11日のマドリードでの列車爆破事件と同様に、イラクでのこれまで約10万人の大量虐殺やファルージャその他でのイラク市民に対する無差別大量ジェノサイトに対する報復の反撃だった。イラク戦争は続いている。
マスコミの世論操作は失敗した。スペインに次いで今度は、イラクへ3,000人の部隊を送っているイタリアのベルルスコーニ首相が、既定の05年9月からの段階的撤退を7月8日に改めて表明した。ポーランド軍(1,700人)、ウクライナ軍(900人)、ルーマニア軍(740人)も年内に撤退する予定である。
日本でも、民主党その他の野党が要求したように、「自衛」隊もイラクから即時撤退すべきである。さもないとサマワの日本軍も攻撃されて犠牲者を出し、日本の大都市も爆破攻撃の標的にされかねない。サマワで同隊員らが劣化ウラン弾のウラン238に被爆した結果、小泉は検診を拒否しているが、ガンなどを発病する可能性が大だから尚更である。米軍は6,000人以上が被爆で発病して撤退、帰国した。湾岸戦争では30万人の米軍将兵が被爆、大量に発病して補償裁判中である。
英国では1960年代以来、英国の元植民地インド、パキスタン、バングラデシュから大量の移民が流入し、またアラブ、トルコ、ナイジェリア北部のイスラム教徒も流入してきた。彼らはロンドン、マンチェスター、バーミンガムその他の大都市で数々の行政区を占めている。数々のモスクが急速に現れて、イスラム過激派が聖職者になっている。彼らは高い出生率と移民の増大の結果6,000万人の英国人口のうち200万人以上に達して、一種の「大英帝国のなかのイスラム国家」状態ができている、と言われている。ロンドンはロンドニスタンと呼ばれている。
英当局はこれまで、エジプト、シリアその他のイスラム諸国で活動を禁止された「イスラム・ブラザーズ」、「イスラム・ジハード」などの原理主義団体代表らの政治亡命を受け入れてきた。その結果、「世界的ジハードと不信心者一掃!」の呼びかけが英国で急速に広がっている。旧ユーゴ、パレスチナ、アフガン、チェチェン、フィリピン、インドその他のイスラム武装組織への資金カンパも英国では公然と行われている。イスラム団体代表らがテロ非難声明を出したが、リップサービスにすぎないだろう。ブレア政権による事件後の取締り強化は大勢を変えることが出来ないで、かえって対立激化をもたらすだろう。
ブッシュやラムズフェルドら米国キリスト教福音派の原理主義的ネオファシスト一派「ネオコン」は、アフガンでの対ソ戦争以来タリバーンやアル・カイーダを育てて支援し、チェチェン独立武装闘争への支援をネオコンのサイトで公然と驕慢に表明してきた。
英国政府も、ボスニアやコソボの民族紛争でイスラム教徒らの戦いを支持してきて、チェチェン独立の武装勢力指導者、ザカーエフやバサーエフを「自由のための闘士」、「蜂起者」と呼んで支持してきた。
それは一方でテロに反対しながら、他方でテロを支援する二重基準として批判されてきた。またアフガニスタンに次いでイラクでは14万6,500人の無法・残虐な米英占領軍が大規模な国家テロを続けており、世界中で批判・反対されているが、米・英政府の路線は変らなかった。
05年7月13日にロンドンでパキスタン系の英国人青年3人とジャマイカ系青年1人が、同時・連続爆破事件の特攻隊的自爆の容疑者として特定された。共犯容疑者1人が逮捕された。彼らが英国人だったことが、英国の与野党と国民に激しいショックの波を広げた。この事件は、以上で述べたこと全体の結末として発生したことだった。しかしブレアーもマスコミもそんなことは認めないで、米英を中心とする帝国主義的な悪の枢軸は、イラクでの占領と虐殺を続けている。
米ニューヨーク・タイムズ紙(05.7.8)は「約4年間の対テロ戦にもかかわらず、何故アル・カイーダとビンラディンは機能し続けているのか?」という疑惑が起っていると社説で書いた。だがそれは、ブッシュやブレアが二重基準で支援を与えているからである。
こうして9・11事件は、間もなく米本国の石油が枯渇するので、カスピ海の石油をパイプラインでパキスタンの港まで運ぶため、またイラクの石油資源奪取のため、口実作りの目的でカウボーイ流の謀略でブッシュらが自作自演で引き起こした事件だった。イラク戦争はイラクの石油を手に入れることが目的だったと、当時の米国防副長官ウォルフォウィッツは「ヴァニティ・フェア」誌(03年6月5日号)との記者会見で驕慢にも語った。
9・11自作自演は、カリフォルニアのPrisonPlanet TVのキャスターAlex JonesによってHPでも暴露された。
http://www.prisonplanet.com/jones_report_031403_hilton.html
ブッシュ米政権によるアル・カイーダやタリバーンなどの過去のテロリスト支援と同様に、英国政府のそうした二重基準は、上述した歴史的に伝統的な政治的亡命者らの受入や支援と共に、いまやブーメラン効果を発揮して、USAの新植民地−斜陽の大英帝国に解体作用を及ぼしている。英国で大多数を占めるイラク戦争反対世論は、今度のロンドン連続爆破事件に促されて、スペインに見習ってイラクからの英軍撤退要求を強めるだろう。
USAでも、ブッシュがブレアと02年にイラク侵攻を決定していた証拠物件「ダウニング・ストリート・メモ」が暴露されて、89人の連邦議会議員がそれを米国憲法違反としてブッシュ弾劾の展望でブッシュ宛に最近公開状を出した。イラク戦争反対が世論調査で59%に達しているので、ブッシュ弾劾が急速に支持を拡大する可能性がある。
これとの関連でこのBlogの下記記事を参照されたい:
http://gold.ap.teacup.com/tatsmaki/15.html
ブログ市民大賞2005:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/3650803

0